キオクシア株式会社(東京都港区)は2025年12月10日、個人向けSSDの新製品「EXCERIA PRO G2 SSDシリーズ」と「EXCERIA G3 SSDシリーズ」を2026年1月下旬から順次販売すると発表した。PCIe 5.0対応モデルの投入で、AIやゲーミングなど高負荷用途に対応するストレージ製品のラインアップを強化することが分かった。
同社は、高速処理を必要とするパソコン環境や生成AIなど多様な用途に向け、PCIe 5.0世代の性能を最大限に生かす設計を施した。販売は国内で株式会社バッファローが担当する。市場拡大が続く高性能SSD分野で存在感を高める狙いがあるとみられる。
PCIe 5.0世代の個人向けSSDを投入
EXCERIA PRO G2 SSDは、同社の個人向けSSDとして最も高い性能を持つハイエンドモデルとなる。最大容量は4TBで、読み出し速度が14,900 MB/s、書き込み速度が13,700 MB/sに達する。生成AIの学習データ処理や動画編集、最新ゲームの高速ロードなど、高負荷な作業への対応を意識した設計だ。さらに、ヒートスプレッダー付きラベルの採用により冷却性能を高め、安定した動作環境を確保する。
一方、EXCERIA G3 SSDは同社初のエントリー帯PCIe 5.0モデルとなる。読み出しが最大10,000 MB/s、書き込みが9,600 MB/sと高速であり、日常用途から中負荷のゲームやAIアプリケーションまで幅広い利用を想定している。容量は1TBと2TBの2モデルで、2026年中に4TBが追加される予定だ。キオクシアとしては、PRO、PLUS、G3をそろえることで、ユーザーの性能要求に応じた選択肢を整えた格好となる。
第8世代BiCS FLASHを採用し高密度化と省電力化
両シリーズの製品には、キオクシアが開発を進める第8世代「BiCS FLASH」3次元フラッシュメモリが用いられている。このメモリには、同社独自の「CMOS directly Bonded to Array(CBA)」技術が採用されており、メモリセルと周辺回路を垂直に接合する構造をとることで、信号遅延を抑えつつ転送速度を高めている。結果として、従来世代よりも高密度化と低消費電力化を同時に実現した。
高性能SSDでは転送速度の向上に伴う発熱が課題とされるが、同社は素材と構造の改良を進め、信頼性向上と筐体の薄型化を両立させた。データアクセスの最適化により、消費電力の低減と発熱抑制のバランスを取る構成になっている点が特徴だという。
ゲーミング需要とAI処理向け市場が拡大
PCゲームやAIアプリケーションの普及により、個人向けSSD市場は高速化志向が強まっている。オンライン対戦や大規模オープンワールド型ゲームでは、ロード時間の短縮が快適なプレイ体験に直結する。また、AI関連ソフトでは高容量データを繰り返し読み書きするため、ストレージ帯域の性能がボトルネックとなるケースも少なくない。キオクシアの新製品は、こうした市場ニーズに応える格好となる。
市場ではすでにPCIe 4.0対応製品が主流にあるが、PCIe 5.0への移行はゲーミングPCなど上位機種から進みつつある。デバイス比較サイトのランキングでは、同社のEXCERIA PLUS G4など既存モデルも上位に入る状況で、今回の製品追加により、PCIe 4.0世代からの乗り換え需要を取り込む可能性がある。
製品群の拡充で個人市場に再注力
キオクシアは旧東芝メモリから改称後、企業向けストレージと並行して個人向けブランド「KIOXIA」を展開している。これまではPCIe 4.0世代のEXCERIA PLUS G4が主力だったが、今回の投入により、PRO・G3シリーズを加えた3階層構成となる。特にPRO G2は個人用ながらプロフェッショナル用途にも対応可能な性能を持つことから、ゲーミングPCやクリエイター向け市場での採用拡大が期待される。
また、製品の国内販売とサポートを担うのはバッファロー。ストレージ機器分野で流通網を持つ同社との連携により、全国的な販売体制を整える。
今後の展望と課題
SSD市場全体では、PCIe 5.0への移行期にあり、規格対応PCの普及が売れ行きを左右する。高性能化に加え、発熱対策や安定性の確保が各社の技術競争となる。今回のEXCERIA新シリーズが冷却性能も強化している点は、こうした市場動向を踏まえたものといえる。
関係者の間では、キオクシアが個人向けの先端技術の投入を加速させたことで、国産メーカーとしてのプレゼンス維持を図る狙いがあるとの見方が出ている。今後は、PCIe 5.0対応SSDの価格動向や、4TB以上の高容量モデルの普及スピードが焦点となりそうだ。