株式会社ボーンデジタル(東京都千代田区)は2025年12月15日、無料のオンラインセミナー「【Unity Industry活用事例】目に見えない気流・空気質を可視化したデジタルサイネージ」を開催すると明らかにした。セミナーでは、クリエイティブスタジオのWOW inc.が手がけたリアルタイム空気可視化システムを題材に、制作工程や開発ノウハウを紹介する。同社によると、Unityの産業応用に関心を持つ開発者や設計者を主な対象とするという。
同社は、Unityを用いた産業向けシステム開発やデジタルサイネージ制作の裾野拡大を目的として企画した。WOW inc.が設計した可視化サイネージは、空気の流れや質をリアルタイムで表現し、工場やオフィス環境の改善検証などでの応用を想定する。今回のセミナーでは、表現と技術の融合をテーマに、制作過程を技術者自らの視点で解説する。
WOW連携でUnity活用ノウハウ共有
講師を務めるのはWOW inc.のプログラマー梅田優弥氏。梅田氏は、ゲームエンジンを核にしたインタラクティブ系システム開発を数多く手がけており、セミナーでは「フロントエンドからバックエンドまでUnityで完結する設計」「プラットフォーム間を結合するプロセス」「Houdiniを使ったビジュアル制作」など、具体的な開発手法を紹介する。ボーンデジタルは、こうした実践事例の共有により、産業分野でのUnity利用に必要なノウハウを広く開発者層に伝える狙いを持つと説明している。
エンタメから産業へ Unity活用拡大の潮流
Unityはもともとゲーム開発用のエンジンとして普及してきたが、近年は製造業・建築・医療など非エンターテインメント分野での導入が進んでいる。リアルタイム3D描画によるシミュレーションや可視化技術は、プロトタイピングや空間デザインの効率化に直結するためだ。特に、製造・設計現場ではデジタルツイン技術との融合が進みつつあり、視覚表現に強みを持つUnityを活用した可視化モジュールの需要が急増している。今回のセミナーには、そうした業界横断的な応用の最新事例を共有する意図も込められている。
ボーンデジタルの教育事業と技術支援の拡大
ボーンデジタルは、アニメ・ゲーム・映画などエンタメ制作のほか、製造や建築、ファッションといった実産業分野のクリエイターを支援している企業だ。デジタル制作向けのソフトウェアやハードウェアを扱う専門ストアを運営するほか、CG専門誌「CGWORLD」の発行や人材育成のための各種セミナーを提供している。これにより、制作者が分野を超えて最新ツールや技術を学ぶ環境を整えてきた。今回のオンラインセミナーもその一環と位置づけられる。
市場拡大が進むリアルタイム映像技術
近年、設計や広告、医療シミュレーションなどの現場ではリアルタイム映像処理技術の応用が広がっている。WOW inc.が制作した空気可視化サイネージは、環境モニタリングデータと連動して動作するインタラクティブ型システムで、視覚効果を通じて空調や換気状況を理解しやすくする。セミナーを主催するボーンデジタルは、こうした実装事例の普及によって、デジタルツイン関連の開発需要にも寄与するとの見方を示している。業界関係者の間では、Unity Industryの実践事例が可視化分野の裾野拡大に拍車をかけるとの声もある。
産業DXの加速へ 今後の課題と展望
産業領域へのリアルタイム3D技術の浸透はさらに加速する見通しだ。ボーンデジタルは、セミナーを通じて得られたフィードバックを教材化し、継続的な教育プログラムの整備も検討している。 一方で、企業が自社プロジェクトにUnityを導入する際は、人材の育成やツール連携の最適化が課題となる。開発者同士の技術共有が円滑に進むかが、今後の産業DXの成果を左右するとみられる。今回の取り組みは、その試金石となる可能性がある。