東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の6号機が16日に営業運転を開始した。首都圏で冷房需要が高まる夏場に、電力を安定的に供給できる見通しが立った。中東情勢の悪化で燃料調達への懸念が強まるなか、火力発電を代替する原子力の役割が増す。電力需給の安定は、節電要請の回避や燃料コストの抑制に波及する。
今回の柏崎刈羽6号機再稼働は、東京電力ホールディングス(HD)にとって火力依存の調達構造を補う運用面の手当てとなる。経済産業省は再稼働を織り込み、東京電力管内の予備率が9月に4%になる見通しを示していた。全国で最低水準ながら、節電要請を回避できる水準と位置づける。目的は、夏季ピーク期の供給余力を確保し、燃料制約局面での電力安定供給につなげる点にある。
予備率4%確保へ
経産省は、柏崎刈羽原発の再稼働を前提に東京電力管内の予備率が9月に4%になるとの見通しを示していた。
全国最低の水準とされる一方、需給逼迫時に行われる節電要請は回避される水準となる。首都圏では夏場に冷房需要が上振れしやすく、供給余力の小ささが需給運用上の論点になりやすい。
LNG年110万トン削減
原発再稼働は火力発電に使う化石燃料の節約につながる。
今回の稼働により、日本が2025年に輸入した液化天然ガス(LNG)の2%弱にあたる年間約110万トンを削減できる。ホルムズ海峡経由でのLNG輸入分は約400万トンで、削減規模はその約3割に相当する。中東情勢の悪化を受けて燃料調達への懸念が強まる局面で、燃料輸入量の減少は調達リスクの低減に直結する。
東電、収益改善1000億円
福島第一原発事故の廃炉に向けた費用捻出が課題となっている東京電力HDの経営への影響も大きい。
電力需要の約8割を火力発電で賄う東京電力は、原発再稼働により1基当たり年間1000億円の収益改善を見込む。小早川智明社長は、柏崎刈羽原発の安定稼働で年間に管内で消費する電力の4〜5%を賄えると説明している。
一方で、東京電力は柏崎刈羽原発の再稼働を前提に現在の電気料金を設定しており、今回の営業運転が値下げに直結するわけではない。管内の電力需給が安定することで、将来的に料金抑制につながる可能性があるという位置づけにとどまる。
政府方針、原発最大限活用
赤沢経済産業相は6月14日の閣議後記者会見で「原子力はエネルギー安全保障に寄与する脱炭素効果の高い電源だ」と述べ、原発活用の意義を強調した。
政府は昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発を「最大限活用する」と明記した。可能な限り依存度を低減するとしていた政策から転換し、安定供給と脱炭素を両立する電源として位置づけ直した。
背景には、中東情勢の悪化で、資源の乏しい日本が火力発電に依存するリスクが顕在化した事情がある。
経産省幹部は、電力の安定供給の観点から原発活用に理解を求めていくと話す。燃料調達制約が電力需給に波及しうる局面では、運転可能な電源の選択肢を増やす政策運用が焦点となる。
東日本の再稼働、2基に
全国の原発33基のうち15基が東日本大震災後に再稼働したが、東日本では2基にとどまる。
複数の原発が稼働する関西電力や九州電力の電気料金は東京電力より1割以上安い。電源構成の違いがコスト構造に反映されている構図だ。今回の営業運転は、首都圏の需給運用を補強するだけでなく、東日本における再稼働の偏りという構造的な論点も改めて浮かび上がらせる。
取引管理の観点では、9月予備率4%見通しの前提に柏崎刈羽の運転が織り込まれている点や、燃料費の変動が収益や需給運用に与える影響単位が「コスト」と「供給余力」にまたがる点は、電力調達計画や需給リスクの整理で注目点となる。
