株式会社セガ(東京都品川区)は、Charoen Pokphand Group Company Limited(タイ・バンコク)と、タイおよび周辺地域におけるエンタテインメント分野での協業機会の検討と、段階的な事業化の可能性を追求する枠組みを定める基本合意書(MOU)を締結した。初期フェーズでは、ソニックなどグローバルIPを活用した事業開発を検討する。両社は協業を通じ、タイおよび周辺地域でのエンタテインメント提供の選択肢拡大を狙う。
MOUは、協業検討を複数のフェーズに分け、段階的に推進する想定だ。初期フェーズでは、グローバルIPを核にした事業開発に加え、持続的な成長を見据えた協業体制の構築に向けた検討を進める。セガが長年培ってきたIPおよびコンテンツ創出力と、C.P.グループが有する幅広い事業エコシステムを組み合わせ、地域に根差した新たなエンタテインメントの提供を目指す。
C.P.グループ23国展開
C.P.グループはタイ最大級のコングロマリットで、食品、農業、小売、消費財、通信、マルチメディアネットワークなど幅広い分野で事業を展開し、23の国と地域で事業基盤を持つ。セガは家庭用ゲーム機、PC、スマートフォン向けゲームの企画・開発・販売・運営を軸に、デジタルサービスやプライズをはじめとしたキャラクター商品の企画・開発・販売も手がける。両社の協業は、エンタテインメント分野におけるIP活用を軸に据えたものとなる。
C.P.グループは1979年の改革開放政策以降に中国へ投資を行った最初の外国企業の一つとして、中国市場で継続的なプレゼンスを築いてきた。中国はIPの消費および開発における最大級の市場の一つと位置づけられ、コンテンツの開発に加え、ライセンス、商品化、流通、小売、体験機会の設計を一体で組み合わせる動きが広がっている。同グループの多角的な事業基盤は、こうした統合的なIP展開の受け皿となる領域を含む。
セガは日本国内および海外のスタジオで開発したゲームコンテンツを、日本をはじめ世界各地の拠点を通じて提供している。ゲームに加え、プライズやキャラクター商品など周辺領域にも事業を広げる構造は、IPを起点に複数の接点を設計する手法と相性が良い。IPの活用先をゲームの枠内に限らず、商品化や体験型企画へ広げる設計は、海外での接触機会を増やす手段になり得る。
セガのIP展開は、長期にわたるコンテンツ創出の蓄積と結びついてきた。1951年設立で、ジュークボックス「セガ1000」を1960年に国内で先駆けて発売した経緯がある。「ソニック」や「UFOキャッチャー」など複数のIP・サービスを展開してきたほか、2004年にはサミー工業と経営統合しセガサミーホールディングスを設立した。サミーの「パチスロ北斗の拳」は累計販売台数が約62万台とされ、グループ全体としてIPを梃子にした商品展開の実績を持つ。
今回のMOUが焦点を当てるタイは、ASEANの中心市場の一つとして位置づけられる。ASEANの近接市場を含め、アジアでIP体験型施設の取り組みが拡大するとの見方もある。セガは韓国ソウルの「MARIO OUTLET」で2026年5月1日より開催される「MGM IP UNIVERSE 2026」に参画し、POP-UP SHOPとミニミュージアム「SEGA: THE HISTORY OF FUN」を出展する予定で、アジアのIP体験型施設への進出を進めている。遊ぶ場や体験する場としてIPを実装する事業設計は、ゲーム以外の接点づくりと結びつく潮流になりつつある。
段階推進の協業枠組み
協業は複数フェーズでの推進を想定し、初期フェーズでグローバルIPを活用した事業開発や協業体制の構築検討を進める。将来的には、ASEAN地域向けのIP共同開発、商品ライセンス・流通網を活用した事業展開、タイ国外への展開も視野に入れる構成だ。IP開発から商品化、流通、施設運営といった展開面までが検討対象となる。
エンタテインメント分野での機会探索を起点とした枠組みは、両社の役割分担とも関係する。セガはIPとコンテンツ創出力を担い、C.P.グループは多分野にまたがる事業エコシステムを持つことから、商品化、流通、拠点運営、メディア連携などの実装工程で、同グループ側の資産をどう組み込むかが焦点となる。商品ライセンスや流通網の活用、施設への集客といった各局面での役割配置が、実務面での論点となる。
アジアIP体験の拡張
セガの海外展開では、ゲーム開発・運営と並行して、IPの周辺ビジネスを組み合わせる動きが続いてきた。FILAとのコラボレーションで90年代フットボールゲームIPを活用した商品展開を実施した事例など、IPを異業種のブランドや流通に接続する取り組みが見られる。こうした手法は、消費者接点の設計と結びつく一方、パートナー側のチャネルや運営資産を取り込むスキームの構築が前提となる。今回の枠組みも、IPを軸に複数の事業領域へ展開する構図を含む。
業界全体では、IPをゲームタイトルにとどめず、商品化や施設、イベントなどへ広げる設計がアジア各地で進んでいる。セガが韓国ソウルで参画する「MGM IP UNIVERSE 2026」は、他社IPとの共存の形で体験機会を編成する取り組みであり、複数IPを束ねた場づくりが来訪動機や回遊設計に影響し得ることを示す。タイを起点とする協業検討が、こうした体験型モデルとどのように連動するかが、ASEANでの提供形態を考えるうえでの一つの論点となる。
また、C.P.グループが多国で事業を行う点は、IP展開の地理的な拡張と関係する。MOUはタイおよび周辺地域を主眼としつつ、タイ国外への展開も視野に入れる。多国で事業基盤を持つ企業との協業は、国ごとに異なる流通や小売、メディア環境に接続する際の選択肢を増やす可能性がある一方、どの国・領域を優先するかの判断や、IP共同開発、商品ライセンス、流通網活用といった複数テーマの中での優先順位付けが求められる。権利処理や運営主体の切り分けなど、実装段階でのガバナンス設計も課題になる。
今後は、初期フェーズで掲げたグローバルIP活用の事業開発と協業体制の構築検討がどの程度具体化するかが焦点となる。商品ライセンスや流通網を活用した事業展開、タイ国外を見据えたスキームであることを踏まえ、対象範囲と役割分担の確定時期を見極めることが重要になる。セガとC.P.グループの協業は、ASEANを含むアジア市場でのIPビジネス拡大を巡る動きの一端を映すものといえる。
