セーフィーは4月28日、映像AI解析技術を開発・提供するシンガポール発スタートアップのAilytics Pte Ltd.と戦略的業務提携の合意に達したと発表した。建設・製造現場の安全管理向上を目的に、クラウド録画プラットフォームと映像AI解析技術を融合させた「現場AX(AI Transformation)」の推進を正式に開始した。
両社は「SusHi Tech Tokyo 2026」(東京ビッグサイト)のシンガポールパビリオン内で調印式を実施した。セーフィーのクラウド録画プラットフォーム「Safie」とAilyticsの不安全行動検知AIを組み合わせ、リアルタイムの検知・アラートと事後振り返りを連動させるワークフローの構築を狙う。
労災死傷4年増と2040年
世界全体で年間の労働災害による死亡者数は約293万人、負傷者は3億9,500万人を超えるとされる。日本国内でも死傷者数が4年連続で増加している。セーフィーは、深刻な人手不足の中で建設・製造現場に設置された膨大なカメラ映像を人が常時確認し続けることは限界に達しつつあるとの認識を示す。国内の労働人口は2040年に現在の8割水準に落ち込むとの見方があり、現場の見守りや安全管理の運用を人手だけに依存しない形へ組み替える必要性が高まっている。
Ailyticsは、不安全行動の検知にとどまらず、現場の安全レベルを統計的に可視化・数値化できる統合型AIを強みとする。シンガポール政府の補助金支援とパートナー網を背景に、アジア全域での導入が拡大している。
今回の協業は、セーフィーが展開するクラウド録画型映像プラットフォーム「Safie」に外部の映像AI解析を組み合わせる設計を一段と鮮明にするものだ。セーフィーは「映像から未来をつくる」を掲げ、遠隔での状況確認や業務効率化に加え、映像解析による異常検知・予測ソリューションの提供を進めてきた。建設・製造現場は、作業者の動線や重機の稼働、危険箇所への接近など映像化できる管理対象が多い一方、確認作業の負荷が大きくなりやすい。両社連携は、こうした現場の映像運用を記録中心から、検知と振り返りまで含むワークフローへと広げる方向性を示している。
外部環境では、労働災害の死傷者数の増勢と人手不足の進行が同時に進む。世界規模での死傷者数は、産業安全の改善が単一企業の取り組みにとどまりにくい社会的課題であることを物語る。国内でも死傷者数の増加と労働人口の減少見通しが重なり、目視確認を前提とする安全管理の維持は難度が上がっている。映像AIの導入には、監視の自動化に加え、検知結果を振り返りに接続し、改善活動を継続できる運用設計が問われている。
Safie×不安全検知AI
今回の取り組みは、セーフィーのクラウド録画プラットフォームとAilyticsの映像AI解析技術の融合を軸とする。建設・製造現場の安全管理向上を目的に、リアルタイムの検知・アラートと事後振り返りのワークフローを組み合わせる運用設計を掲げる。Ailyticsは現場の安全レベルを統計的に可視化・数値化できる統合型AIを強みとし、検知単体ではなく数値化まで含めた運用に接続しやすい点が連携の焦点となる。
協業の役割分担は、セーフィーが「Safie」を基盤に映像のクラウド録画プラットフォームを担い、Ailyticsが不安全行動検知AIを提供する組み合わせとなる。リアルタイム検知・アラートに加え、事後振り返りのワークフローを構築し、現場での一次対応と再発防止に向けた改善活動を同じ映像データの流れに組み込む構造を取る。セーフィーは、東南アジアで急成長するAilyticsの顧客基盤を足がかりに自社のグローバル展開を加速させる構想も示した。
映像AI連携が示す潮流
映像AIの業務提携は、単独ベンダーが一社で完結させるモデルよりも、プラットフォームと解析AIを組み合わせ、現場実装まで含めた運用に落とし込む動きと重なる。建設・製造の安全領域では、カメラ設置の広がりに対し、監視・確認の人員確保が制約になりやすい。セーフィーが示した「膨大なカメラ映像を人が常時確認し続けることが限界を迎えている」との認識は、映像の蓄積量が増えるほど監視コストが上昇する構造を映し出す。録画や遠隔確認に加え、検知や振り返りまで含む一連の流れをAI前提で再設計する動きが強まっている。
映像の保管・共有を担う基盤と、特定用途の解析AIを組み合わせる構成は、提携やAPI連携の形で広がる公算が大きい。Ailyticsが掲げる不安全行動検知に加え、現場安全レベルの統計的な可視化・数値化は、単発のアラートにとどまらず、現場の改善サイクルに接続するための指標を得る発想に近い。安全管理は現場責任者の経験に依存しやすく、同じ企業内でも拠点や工程でばらつきが出やすい。数値化が運用に組み込まれれば、拠点間比較や改善の優先順位づけなど、マネジメントの論点に結びつきやすくなる。
また、人手不足の長期見通しは、単なる省人化にとどまらず、監視・点検・教育といった周辺業務の再配置を迫る。2040年に労働人口が現在の8割水準に落ち込むとされる中、現場の安全管理を「常時目視」に近い形で維持するのは難しくなる。リアルタイム検知と事後振り返りのワークフローを組み合わせる設計は、事故の未然防止とヒヤリハットの学習を同じデータ基盤で回す発想を含む。セーフィーがクラウド録画プラットフォームを中核に据えたことは、現場から上がる映像データを保存・共有だけでなく、解析や改善活動へ接続する「データ循環」を意識した動きといえる。
海外展開では、Ailyticsがシンガポール政府の補助金支援とパートナー網を背景にアジア全域で導入を拡大している。セーフィーが東南アジアの顧客基盤を足がかりにグローバル展開を加速させる考えを示したことは、現場向けSaaS・プラットフォームが国内の労働市場制約への対応と並行して、成長余地を海外に求める動きを映す。イベント会場での調印は、技術連携にとどまらず、エコシステムやパートナー政策の文脈で対外的な接点を広げる狙いもにじむ。
セーフィーは同日に「Product Management Summit」への協賛も公表し、「AI時代のMoatとは。AI×独自データ×共創圏による拡張戦略」をテーマに講演した。映像データは現場で発生し続け、蓄積が進むほど解析の対象が増える。Safieのようなクラウド録画プラットフォームにAIを重ねる設計は、アルゴリズム導入だけでなく、データの集まり方や業務フローの組み替えと一体で進む。Ailyticsとの連携は、セーフィーが掲げるAI×映像×IoTとオペレーションの結節点を、建設・製造の安全管理という用途で具体化する動きとなる。
加えて、セーフィー子会社のセーフィーフィールドワークスが株式会社Laskaを完全子会社化し、Laskaの「業務用・産業AI」事業譲受を進める動きも同日に表面化した。クラウド録画プラットフォームの外側に業務用・産業AIの機能を取り込む動きと、外部スタートアップの映像AI解析を組み合わせる動きが並行することで、セーフィーの現場向けAIの体制は複線的に広がる。企業向けの導入では、現場実装を支える運用設計、データの取り扱い、改善サイクルの定着が重要となり、提携とM&Aの両面で周辺機能をそろえる戦略が前面に出ている。
労働災害の統計が示す規模感と2040年の労働人口減少見通しは、現場の安全管理を「人が見る」運用から「AIが拾い、人が判断する」運用へ移行させる圧力として働く。セーフィーとAilyticsが提示したリアルタイム検知・アラートと事後振り返りのワークフローは、現場の安全管理をデータ起点で再設計する方向性を含み、映像プラットフォーム企業が外部AIと結びつく連携モデルの一例となりうる。
