日本郵船は、22~24日に東京ビッグサイトで開催される国際海事展「Sea Japan 2026」に出展する。「未来の港湾の絵姿」を中心に、海事産業全体における脱炭素化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、宇宙開発など海上技術の応用展開に関する取り組みを紹介する。海上輸送にとどまらず、港湾・海事の事業構想や投資判断の材料を広げる論点を提示する。
出展内容は、既存のモノ輸送にとどまらず、エネルギーや人、さまざまな価値が行き交う活気ある未来の社会の実現を目指す港湾像を軸に据える。日本郵船は、脱炭素化やDX、宇宙開発といった海上技術の応用展開を前面に出し、海運に限定しない海事産業全体での議論を促す構えだ。
会期3日間で発信
会期は22~24日の3日間で、会場は東京ビッグサイトとなる。展示と並行し、会期中に開催される各種セミナーに日本郵船グループ関係者が登壇する予定で、ブース展示と議論の場を組み合わせて発信する。
セミナー登壇では、23日のSEA JAPANフォーラム2026「未来を探せ」で、曽我貴也社長が特別講演を行う。22日は海事産業における「女性活躍推進討論会」で、サステナビリティ戦略本部長の筒井裕子常務執行役員が講演し、LNGグループの令官史子LNG船計画チーム長がパネルディスカッションに参加する。
同じく22日には、マースクゼロカーボンシッピング研究所(Mærsk Mc-Kinney Møller Center for Zero Carbon Shipping)のセミナーで、「船会社における考え方 持続可能な脱炭素戦略とは」をテーマとしたパネルディスカッションに、首藤健一郎常務執行役員(技術本部長)が登壇する。展示とセミナーを組み合わせ、脱炭素や技術応用の論点を多方面に投げかける。
今回の出展は、港湾をモノ輸送の場に限定せず、エネルギーや人の移動、価値の交換が重なる場として描く点に重点を置く。海事産業における脱炭素化やDXの論点を、港湾像の提示と接続させる構成とする。
Sea Japanは、造船、海運、舶用機器、海洋開発などの関係者が集まる商談・情報発信の場として開催されてきた。過去の開催では来場者が1万5000人超、出展が200社規模とされ、会場内にデジタル関連の新ゾーンを設けるなど、海事分野でもデジタルソリューションを軸にした展示が拡大している。日本郵船が未来の港湾像を中心に据える構成は、船舶単体の技術紹介にとどまらず、港湾を含むサプライチェーン全体の設計論に踏み込む狙いがうかがえる。
日本郵船は過去のSea Japan出展でも脱炭素関連の展示を実施しており、今回も環境対応とDXを軸に据える。首藤技術本部長が登壇するマースクゼロカーボンシッピング研究所のセミナーは、同研究所が設定した枠組みに日本郵船がパネル参加する形式で、企業間の技術・戦略対話を会場内で可視化する。海事産業の脱炭素は燃料転換や運航の高度化など論点が広く、展示と討議を並走させる設計は、港湾関係者や荷主、機器メーカーなど多様なプレーヤーの関与を前提とした情報整理の場にもなり得る。
登壇者と論点の構成
展示会場での紹介に加え、22日と23日にセミナー登壇枠が設定されている。登壇者は日本郵船グループ関係者で、社長の曽我貴也氏、サステナビリティ戦略本部長の筒井裕子常務執行役員、技術本部長の首藤健一郎常務執行役員、LNGグループの令官史子LNG船計画チーム長が含まれる。会期中の発信は、展示のテーマ提示と、脱炭素戦略や女性活躍など複数のセミナー枠への登壇で構成される。
この構成は、来場者の関心を個別技術から港湾を含む実装像へ接続させる意図を持つ。脱炭素の議論は、燃料の選択だけでなく、燃料供給や港湾設備、運航計画、荷主の調達方針まで連動しやすい。日本郵船が港湾像の提示に重点を置くことで、船社の脱炭素戦略と港湾・エネルギー側の整備計画を同じ枠組みの中で論じる導線を整える。
また、22日の「女性活躍推進討論会」における講演・パネル参加は、サステナビリティ領域の発信と人材・組織論の論点を同時に扱う。海事産業の女性比率が15%とされるなか、討論会形式のイベントが増えており、産業横断の人材確保や就労環境の議論が展示会のプログラムに組み込まれる流れとも重なる。
海事脱炭素の論点
海事産業の脱炭素では、国際海事機関(IMO)が2023年に温室効果ガス(GHG)戦略を改定し、2050年ネットゼロを目指す方向性を示したことが外部環境となっている。燃料転換ではアンモニアや水素などが候補に挙がり、船体・機関の技術開発だけでなく、港湾側の受け入れ体制や燃料供給インフラの整備も同時に問われる。日本郵船が展示の中心に据える未来の港湾像は、こうした技術開発と社会実装をつなぐ議論の器として機能する可能性がある。
会場内の競合・周辺展示では、ジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)がアンモニア・水素燃料エンジンを紹介し、会期中に複数回のセミナー枠を設ける。NMDグループは船舶設計や3Dエンジニアリング、防錆塗料、運航支援システムなどを掲げ、技術領域の幅を示す構成とする。機器・設計・運航支援といった分野横断の展示が増えるほど、船社が提示する港湾を含む将来像は、個別技術を束ねて投資判断や事業構想につなげるフレームとして扱われやすくなる。
また、商船三井が過去のSea Japanでウインドチャレンジャー(風力推進船)の模型を展示してきた経緯があり、技術の見せ方としては個別技術の可視化を重ねるアプローチが続いてきた。これに対し日本郵船は、脱炭素化やDX、宇宙開発といった論点を海上技術の応用展開として束ね、港湾像と接続させる。各社が会場で示す切り口が、燃料・機関、設計・運航支援、風力推進などに分岐するなかで、港湾を起点にした統合的な描写は、荷主や港湾事業者、エネルギー関連企業の対話を誘発しやすい構図となる。
経済産業省が2024年に海事産業DX推進指針を策定し、人手不足や効率化の課題に対し海上技術の応用を促している点も、展示会の論点と重なる。港湾オペレーションの最適化は、船社の運航計画と港湾側の入出港・荷役の同期、関連データの共有といったテーマに結びつき、DXの議論を港湾像に落とし込む導線となる。宇宙開発との接点も、海上技術の応用展開という枠組みで提示され、測位・観測データの利活用など、産業横断での技術接続の議題を会場に持ち込む。
市場規模では、国内の海事産業が2025年推定で1兆5000億円超とされ、脱炭素関連の展示ゾーン拡大とともにDXやAIが主要テーマとなりつつある。一定の来場者・出展規模を背景に、日本郵船が示す未来の港湾像は、船社の脱炭素戦略を「港湾・エネルギー・人材・デジタル」の複合テーマとして再編集し、関係企業の検討軸を増やす役割を担うとみられる。
