日本ゼオンは、全社共通のIoT基盤を構築し、高岡工場で運用を開始すると発表した。工場のスマート化に向け、製造設備のデータ利活用を進める狙いがある。情報通信網には閉域ネットワークを採用し、セキュリティを保ちながら各工場へ展開しやすい形にした。
共通基盤の特徴は、工場の「生産に関わるシステム」を社内システムから独立させてきた従来方針を踏まえつつ、周辺の測定・監視システム(IoT機器)を対象にデータ収集と共有を進める点にある。日本ゼオンは、IoT機器から取得した情報を社内共通システムや研究所システムに共有する際の情報通信網を閉域化し、外部からアクセス不能な形をとることで、データ保護と横展開の両立を目的に掲げる。プロジェクトではSORACOMがIoT基盤構築・運用サポートサービスを提供し、本番運用に向けたネットワーク設計・展開までを支援した。
PoC経て5月本番運用
高岡工場ではPoC(概念実証)を実施した。設備の動作監視システムを構築したうえでPoCを進めた。
同基盤の導入後は、巡回点検で設備に設置した管理端末を都度確認しに行く作業を減らし、遠隔管理を可能にした。常時監視が必要な一部工程でも、現場従業員の作業負担軽減が確認されたという。高岡工場ではPoCを経て2025年5月に本番運用を開始した。
他の工場への展開は、各工場でPoCを進め、全ての工場への導入が完了する予定(取材当時2025年12月)としている。
従来の運用では、各工場の設備情報を全社共通システムに展開する際に、USBメモリなどの記憶装置に情報を取り込み、管理端末で読み取り転送する手順が必要だった。日本ゼオンは、この方法では情報共有に時間と手間を要し、工場のスマート化が進みにくい点が課題だったと説明した。
スマート工場化では、IoT機器を導入して製造設備のデータを利活用し、品質の向上や設備管理の効率化、故障予知保全につなげる考え方が示されている。一方で、社内システム連携にインターネットのようなネットワークを介する場合、情報漏洩やデータ消失、不正アクセスなどのリスクが高まるとされ、生産に関わる情報がリスクに晒されれば稼働停止を迫られる可能性があるとも言及されている。
セルラー閉域網で横展開
今回の共通基盤は、プラント制御システムなどの「操業に直接かかわるデータ」に触れずに、周辺の測定・監視システム(IoT機器)からデータを収集・活用する形をとる。工場ごとに独立させてきた生産関連システムのセキュリティを維持しつつ、操業情報の利活用を進める狙いだ。
情報通信網には、インターネットから切り離された独自網である閉域ネットワークを採用した。日本ゼオンは、閉域ネットワークの中でもセルラー通信の閉域ネットワーク(大手通信事業者の提供する閉域ネットワーク)を選定した。原則として有線LANの敷設工事なしでゲートウェイを設置できる点を挙げ、現場主導での設置・導入を可能にし、各工場への横展開がしやすい仕様にしたとしている。
プロジェクトの運営面では、デジタル統括推進部門デジタルシステム管理部の小林弘明氏が、進行方法の決定、セキュリティ分野の外部専門人材の選定、各工場へのヒアリング、PoC実施に際する工場への協力要請まで、トータルコーディネートを担った。小林氏は、従来は各工場で取り組んできたDXを全社横断で推進する試みで、2022年からスタートした経緯に触れた。
