JR東日本グループは、2026年5月から気仙沼線BRTの柳津駅~水尻川AP間のBRT専用道で、運転士の監視や介入を必要としないレベル4の自動運転走行を実施する。運行は5月29日から7月4日までの毎週金曜・土曜に行い、特定条件下でシステムがすべての運転操作と緊急停止を担う形態とする。
レベル4は特定条件下でシステムが運転操作と緊急対応の全てを担う段階で、気仙沼線BRTでは専用道内に約2メートルごとに磁気マーカ(約10メートルごとにRFID付)を埋設し、車両側の磁気センサと組み合わせて自車位置を高精度に認識する。GNSS位置情報を受信しにくいトンネル内でも位置認識を可能とし、最高速度約60キロメートルでの自動運転を目指す。JR東日本グループは、グループ経営ビジョン「勇翔2034」で掲げる「技術力の深化と進化」の一環として、最先端技術を活用した商品・サービスの展開を加速している。
国内最速・最長級
最高速度は約60キロメートル、走行距離は片道約15.5キロメートルとし、バスによるレベル4自動運転として「国内最速」「国内最長」クラスと位置付ける。運転実施日は2026年5月29日、30日、6月の各金曜・土曜、7月3日、4日で、時間帯は柳津駅9:40集合~11:20解散と13:00集合~14:40解散の2便を設定した。
今回の実証は通常の営業運転とは切り離し、気仙沼線BRT柳津駅~志津川駅間の迂回運転は7月12日まで継続する。7月13日の初便から通常運転に戻す計画だ。専用道区間での自動運転と折り返し区間の手動運転を組み合わせ、期間と曜日を限定したダイヤを設定することで走行条件を固定し、検証対象を明確にした。
運行は気仙沼線BRT専用道の柳津駅~水尻川AP間で乗務員乗車型の自動運転を行い、水尻川AP~志津川駅間は手動運転とする。往復乗車のみで途中下車はできない。利用者の動線を往復に限定し、停留所での乗降を絞り込む構成とすることで、専用道区間の走行検証に重点を置く。
2018年度からBRT専用道区間で自動運転バスの各種試験を重ね、安全性の確認を進めてきた。2025年度には柳津駅~水尻川AP間について、「走行環境条件の付与」(東北運輸局)と「特定自動運行許可」(宮城県公安委員会)などの認可を取得し、レベル4での走行が可能となった。自車位置認識には、車両側のLiDARや単眼カメラ、磁気センサと、路面側に約2メートル間隔で埋設した磁気マーカ(約10メートルごとにRFID付)を組み合わせ、トンネル内などGNSS位置情報が受信しにくい環境でも走行に必要な位置情報を確保する。
BRTは専用道などを走行し、速達性や定時性の確保が可能なバスベースの交通システムだ。気仙沼線BRTは運行開始から13年間、公共施設付近への駅新設や地域イベントとの連携、地域連携ICカード「odeca(オデカ)」の導入などを通じて、地域の移動を支えるモビリティとして運用されてきた。専用道というインフラを持つBRTで、運転操作と緊急停止をシステム側が担うレベル4に踏み込むことは、鉄道事業者グループが保有する運行・保守の知見と道路側設備を組み合わせた新たな運行モデルの具体化といえる。
運行は金土の限定枠
運転終了後は、2028年度までに水尻川AP~志津川駅間の一般道でレベル4の自動運転走行を実現することを目標に掲げる。今回の運行はバスの運用状況などにより急遽休止する場合があるほか、申込多数の場合は乗車できない可能性もある。運行日を金曜・土曜に固定し、時間帯を2便に整理することで、車両運用や要員配置と整合させながら検証機会を確保する狙いだ。
許認可面では、2025年度に取得した「走行環境条件の付与」(東北運輸局)と「特定自動運行許可」(宮城県公安委員会)がレベル4走行を支える制度基盤となる。国土交通省の自動運転レベル定義では、レベル4は特定条件下でシステムがすべての運転操作と緊急停止を担い、運転士の監視が不要となる段階とされる。JR東日本グループは専用道という条件を生かし、この制度設計に沿った運行形態を採用した。
専用道×磁気マーカ
今回の実証は、専用道を持つBRTであってもレベル4の実装が車両側の自動運転機能だけでは完結せず、道路側設備と運行設計を一体で構築している点が特徴だ。気仙沼線BRTでは約2メートル間隔の磁気マーカ埋設と車両の磁気センサ、約10メートルごとのRFIDにより、トンネル区間でも安定した自車位置認識を図る。地方部の路線条件を踏まえた実装手法の一例となり、専用道の設計自由度を生かしつつ、制度上の「特定条件」の組み立て方が実装速度を左右する構図が浮かぶ。
JR東日本グループは「勇翔2034」に基づき、最先端技術を活用した商品・サービスを拡充し、「技術サービス企業グループ」を志向している。気仙沼線BRTのレベル4実証は、鉄道事業者が運行系のデジタル技術を公共交通の現場に適用する取り組みであり、線路領域での技術開発とも方向性を同じくする。2024年4月には線路内を自律走行するロボットの開発着手を公表し、2026年10月末の実用化に向けた機体製作や、11月以降の線路走行試験の予定も示した。カメラやセンサーで線路周辺の映像・データを自動取得し、二次被害リスクの低減や熊出没への対応にもつなげる構想で、現場作業の省力化と安全性向上を両立させるテーマ設定が共通する。
業界では、JR西日本が2023年に山陽新幹線で線路内点検ロボットの試験を行い、カメラやLiDARでレール損傷を検知しながら有人監視下で走行させるなど、保守・点検領域でのロボティクス活用が広がっている。JR東日本グループはBRT専用道で自動運転レベル4の許認可を取得し、走行速度や距離の水準を具体的に示すことで、地方の公共交通維持に向けたBRT活用の一つのモデルを打ち出した。運行主体が自社グループ内の運行技術と道路側設備への投資をどう組み合わせるかは、専用道を持つBRTの設計思想を他地域へ展開するうえでの焦点となる。
国の制度整備もこうした動きと歩調を合わせる。国土交通省は自動運転社会実装に向けレベル4許可制度を整え、バス分野では専用道から一般道への移行を含む取り組みを後押ししてきた。気仙沼線BRTでの「走行環境条件の付与」と「特定自動運行許可」の取得は、この枠組みを地方部の公共交通に適用した事例と位置づけられる。JR東日本グループが2028年度までに一般道区間でのレベル4実現を掲げたことで、専用道で固定した条件から一般道へ対象を広げる工程が具体的な姿を帯びてきた。
事業運営の面では、今回の運行が通常の営業運転とは異なる形態で、金曜・土曜に限定した日程、2便設定、往復乗車、途中下車不可という条件で組まれている点が特徴だ。運行日程が週末に限られ、専用道区間と折り返し区間で運転方式が分かれる運用を前提とするため、関係各社は役割分担と当日の運行取り扱いをこれらの条件に合わせて調整することが求められる。
