株式会社ジェイエイシーリクルートメントは、オランダの首都アムステルダムに「JAC Recruitment Netherlands BV」を開設した。JAC Groupとしてオランダ初進出となる。欧州大陸のビジネス拠点としてのオランダの位置づけを踏まえ、欧州事業の拡大を図る。拠点開設により、在オランダ企業の採用支援を現地で進める体制となり、人材獲得の動きにも影響を与えそうだ。
新拠点は、これまで英国拠点から在オランダ企業への人材紹介支援を続けてきた経緯を踏まえ、現地での市場理解を深める方針を掲げる。Managing Director(MD)は、現JAC Recruitment UKのMDである渥美賢吾が兼任し、企業と人材をより迅速かつ効率的につなぐことを目指す。
世界12ヵ国展開を継続
JACは海外で英国、ドイツ、アメリカおよびアジアを含む世界12ヵ国で事業を展開している。今回のオランダ拠点開設は、既存の欧州拠点である英国・ドイツに加わる動きとなる。オランダは欧州域内の企業活動と人材移動が交わる地点の一つとされ、欧州大陸側で採用支援を常設拠点から行うことで、案件開拓から候補者接点、選考調整までの時間軸を短縮できる可能性がある。
田崎ひろみ代表取締役会長兼社長は、英国発祥の同社が英国とドイツにオフィスを構え、欧州に進出する日系企業や現地企業の採用を支援してきたと説明する。企業の人材ニーズに機動的に応えるには現地拠点が必要との認識を示した。JAC Recruitmentは1975年に英国で設立し、日本では株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントとして1988年に設立。JACグループとして50周年を迎えた。スペシャリストや管理職人材の紹介に特化し、国際ビジネス経験をもつ人材紹介を強みに、国内では外資系企業や日系企業の海外事業などグローバル領域の求人を取り扱う。渥美は英国拠点から在オランダ企業への支援を行ってきた実績も持つ。
オランダ拠点開設は、英国拠点を起点にした在オランダ企業向け支援を、現地常設の枠組みに広げる動きとなる。従来の欧州体制は英国・ドイツを軸に組み立てられてきたが、アムステルダムに拠点を置くことで、企業側の採用担当部門や現地で転職活動を進める人材との接点を、より短い距離で形成する狙いがある。とりわけ管理職・専門人材は選考プロセスが長期化しやすく、候補者の意思決定や入社時期の調整では、時差や移動制約が運用負荷になりやすいとされる。
背景には、欧州での人材獲得競争が複数国にまたがって進む構図がある。国境を越えた採用活動では、各国の労働市場の慣行や採用手続きの違いを踏まえた調整が必要になり、現地での市場理解の深さが、企業側の採用計画と紹介プロセスの整合に直結しやすい。オランダを欧州大陸のビジネス拠点と捉え拠点を設けたことは、JACの欧州事業のカバレッジを広げる施策として位置づけられる。
MD渥美賢吾が兼任
運用面では、JAC Recruitment Netherlandsの責任者を渥美賢吾が担い、現JAC Recruitment UKのMDを兼任する。これにより、既存の英国拠点での支援実績と、新拠点で得る市場理解を接続する体制となる。英国から在オランダ企業を支援してきた枠組みを土台にしながら、現地常駐の運営へ移行する色彩が強い。
同社はグループのグローバルネットワークを生かし、各地域拠点のマーケット知識を基盤に、専門性の高い人材紹介サービスを各国で展開する方針だ。オランダ拠点では、在オランダ企業の採用支援を現地で進める一方、兼任体制の下でどの業務をアムステルダム側に寄せ、どの業務を英国側に残すかといった役割分担の設計が、実務上の焦点となる。
兼任は意思決定ラインを単純化しやすい半面、日々のオペレーションでは案件の優先順位付けや候補者対応の分担が生じやすい。今回の体制は、英国拠点からの支援実績を土台としつつ、現地での市場理解を深める方針と結びついており、英国とオランダの両拠点が扱う求人や候補者プールの整理が、企業側の採用活動の進め方にも影響しそうだ。
欧州内での採用は、国ごとの採用慣行や候補者の流動性、採用部門の意思決定プロセスが絡み合う。このため拠点設置は単なる所在地の追加にとどまらず、企業と人材の接続方法そのものを再構築する取り組みとなる。
欧州採用の再配分進む
欧州の人材紹介市場では、複数国にまたがる採用需要を拠点配置と専門チームでどう受け止めるかが競争軸の一つになっている。JACが英国・ドイツに続きオランダに拠点を設けたことは、欧州域内での採用支援を「英国からの越境支援」だけに依存しない方向性を示す。特にアムステルダムは多国籍企業が集積し、英語を業務言語とする企業も多いとされるため、国際ビジネス経験を持つ人材紹介を強みとするJACの既存戦略と親和性が高い。
一方で、欧州での拠点網は地理的な近さだけでなく、採用案件の発生源に合わせた組織設計が問われる。JACはスペシャリストや管理職人材の紹介に特化してきた経緯があり、企業側の採用要件が高度化するほど、産業別・職種別の知見や候補者ネットワークの厚みが運用の成否を左右しやすい。英国拠点で積み上げた在オランダ企業向け支援を、現地での市場理解の深化につなげる方針は、案件獲得からマッチングまでの業務プロセスを欧州大陸側へ一部移す可能性を含む。
また、欧州域内では、企業の投資・研究開発・物流機能の配置に合わせて、人材獲得の重点も変化しやすい。日系企業も欧州での事業運営を複線化させる動きがみられ、単一国で完結しない採用が増える局面では、拠点間連携の設計が実務上の焦点となる。JACが掲げる「企業と人材を、より迅速かつ効率的につなぐ」方針は、拠点追加による物理的距離の短縮に加え、英国とオランダの役割をどう切り分けるかに左右される面がある。
人材紹介業界では、顧客企業側の採用部門が複数国にまたがっている場合、紹介会社に対しても「採用窓口の一本化」と「現地対応」の両立が求められやすい。渥美賢吾が英国拠点のMDを兼任しつつオランダ拠点の責任者を担う枠組みは、顧客との交渉窓口を維持しながら現地対応力を補う設計ともいえる。欧州内の拠点網の拡充は固定費負担と案件量の見合いが問われるが、今回の動きは、既存支援の延長線上でアムステルダムに拠点を置き、市場理解を深める段階的な拡張の一例となる。
