株式会社石川ツエーゲン(石川県金沢市)は、組織改編を実施した。「ホームタウン推進室」を「サステナビリティ推進室」に改称し、代表取締役直下の組織として再編した。同社は、地域社会や環境課題への対応を強化する方針で、今後は環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点を経営全体に取り入れる。
今回の改編は、気候変動や地域課題への対応を経営の中心に位置付ける狙いがある。プロサッカークラブ「ツエーゲン金沢」の運営主体である同社は、従来のホームタウン活動を再定義し、環境配慮や社会的価値創出を横断的に推進する体制を整備した。これにより、クラブ運営の持続可能性を高め、地域とともに成長する仕組みづくりを進める。
代表直轄の体制でESG方針を統合運用
新設したサステナビリティ推進室は、従来の地域連携や教育普及に加え、環境啓発や資源循環などを主な担当領域とする。
クラブとして蓄積してきた地域貢献活動を土台にしつつ、ESG全体の指針を統合的に運用するのが特徴だ。これまでホームタウン活動で行っていた学校訪問や地域イベントなどを、環境・社会テーマと連動させて体系化する。
同社は、地域との関係強化に向けた活動を「スポーツの力を通じた社会への貢献」と定義しており、今回の改編をその深化と位置づけている。
国際的なSDGs(持続可能な開発目標)の浸透を踏まえ、クラブ経営における社会的責任を明確化する狙いもある。同室が代表直下に置かれたことで、意思決定の迅速化と責任の明確化が進むとみられる。
石川を軸に活動、持続型クラブ運営を推進
株式会社石川ツエーゲンは、Jリーグに加盟するプロサッカークラブ「ツエーゲン金沢」を運営する企業で、本社は石川県金沢市示野町西2にある。
代表取締役米沢寛氏のもと、地域に根ざしたクラブ運営を続けてきた。今回の組織改編は、ホームタウン活動の枠を超えて社会的課題の解決に踏み込むステップといえる。
クラブは金沢市を中心に石川県全域をホームタウンとし、地域の教育、文化、産業との関わりを深めている。スタジアムでの地元企業との協働や、地域行事との連携も積極的に進めており、地域密着型クラブとしての基盤を強化している。
サステナビリティ推進室設置後は、これらの取り組みを戦略的に体系化し、地域との協働価値を可視化する体制を整える。
国内外の潮流、サッカークラブにも脱炭素の波
背景には、スポーツ界全体で進む脱炭素化と社会貢献の潮流がある。
世界では欧州サッカーリーグが「スポーツポジティブリーグ(SPL)」などを通じ、クラブの環境対策を可視化する動きが広がっている。英国プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーなどは再生可能エネルギー使用を100%とし、ファン教育を重視する体制を整えている。これらの国際的枠組みにより、クラブ経営と環境責任を統合する考え方が主流となりつつある。
日本でも、2025年にJリーグがSPL参画を発表し、アジアで初めて体系的にクラブのサステナビリティ活動を評価・報告する仕組みを導入する。
これに伴い、各クラブが「環境」「社会」「ガバナンス」の3領域を経営方針に取り込む動きが加速しており、地域との関係性を高めることが持続的な経営基盤の一要素となりつつある。石川ツエーゲンの対応は、こうした業界全体の動向とも軸を一にしている。
地域共創へ
同社が従来行ってきたホームタウン事業では、地域の小中学校との連携や、地元企業とのコラボレーションイベントが中心だった。
これを一段階発展させ、地域環境の保全や廃棄物削減などの実践を通じ、サッカーを基点とした社会教育の場を広げていく方向性だ。
また、行政や企業との連携を通じた「地域共創」も行う。
スタジアム周辺の清掃活動や地元産業との食文化連携など、既存の活動資産をサステナビリティ推進室の下で統合し、その成果を可視化する仕組みを整備する。クラブに関わる人材の行動を環境型マネジメントサイクルに位置付ける構想だ。
関係者の取り組みと社会的広がり
石川県内では、丸井織物やアップティーなど、ツエーゲン金沢のスポンサー企業が地域貢献やサステナビリティ活動を進めている。
繊維や食品など地場産業の各社が能登復興支援や環境対応型製品開発を実践しており、クラブのパートナーとして共通の理念を持つ。こうした周辺企業との連携強化は、クラブのサステナビリティ戦略にも相乗効果をもたらす見通しだ。
国際的には、欧州各国のクラブが「教育」「環境」「地域貢献」を三位一体で進めており、国内プロスポーツクラブがこれらの観点を吸収する潮流も強まっている。
ブラックラムズ東京がスペイン・ビジャレアルCFと育成・環境分野で協働するなど、スポーツを通じた社会貢献に対するモデル事例も増加傾向だ。石川ツエーゲンの新体制構築も、こうした国際潮流への日本的対応として位置付けられる。
サステナビリティ経営の定着へ今後の注目点
クラブによるESG体制構築は国内ではまだ初期段階にあるが、Jリーグによる制度化の進展により各クラブの体制整備が急速に進む見込みだ。
石川ツエーゲンの取り組みは、地域密着型モデルを基盤にサステナビリティを経営方針へ明確に組み込んだ初期の事例といえる。
サステナビリティ推進室設置を契機に、クラブ経営の新たな柱として社会・環境・経済を統合する試みが、地域スポーツ運営のモデルケースとなる可能性がある。
