福島県南相馬市原町区本陣前で青果店「南国屋」を営む布川善幸さん(53)、美翠さん(52)夫婦が、店の隣に果物をふんだんに使ったかき氷店「四季と果実 よしとみや」をオープンさせる。発災前にまちにあった活気を取り戻したいとの思いが後押しする。地元の旬の果物を使い、かき氷という飲食メニューで提供する取り組みは、果物の利用機会を広げる動きにもつながりそうだ。オープンは2025年4月25日の予定だ。
新店舗は、自らの青果店で扱う果物を中心に、素材の甘味や香りを楽しめるよう仕上げた自家製ソースを特徴とする。果物を身近に感じてもらいたいとの思いから、かき氷を通じて元気や笑顔を提供する店づくりを掲げる。青果店が持つ調達力と、店頭に並ぶ果実を加工して提供する機能を一体で運用し、青果の価値を「そのまま食べる」以外の形で伝える狙いだ。
4種類で季節運用
メニューは季節ごとに変え、市内や県内各地で採れた旬の果物を採用する。オープンから5月中旬ごろまでは、南相馬市のブランドイチゴ「夕やけベリー」のほか、キウイ、不知火(柑橘類)、宇治さえみどり(抹茶)の4種類を用意する。営業時間は午前11時から午後4時30分で、定休日は月~水曜日とする。
開店準備は約1年前から進め、埼玉、新潟両県の専門店などに何度も足を運んで氷の扱い方や削りの技術を学んだ。ソース作りでも試行錯誤を重ね、果物の甘味や香りを損なわないレシピを練り上げた。仕入れから提供までの距離が短い青果店隣接型の強みを生かし、季節ごとの果物の切り替えそのものを商品体験として感じてもらう構想だ。
布川さん夫婦は、発災前のにぎわいを思い起こしながら、地元の果物を使ったかき氷で新たな人の流れを生み出したい考えだ。観光客や帰省客など短期滞在者だけでなく、地域住民が日常的に利用できるテイクアウト形態とし、地元産果物を選択する機会を増やすことを目指す。
かき氷関連の需要は、果物を使った高付加価値商品へのシフトが進んでいる。2024年のかき氷市場規模は約500億円で前年比5.2%増とされ、1000円超のプレミアム価格帯が15%超を占めた。果物トッピング需要の拡大が指摘される中、原材料となる果実側でも、福島県の2024年の果実生産量はイチゴが約1.2万トン(全国6位)、不知火など柑橘類が約8000トンと一定規模がある。南相馬の特産ブランドである夕やけベリーは2024年の出荷量が前年比10%増とされ、地元産果実を軸にしたメニュー設計との親和性が高い。かき氷利用者の62%が「地元果実使用」を重視し、テイクアウト比率も45%とされる調査結果もあり、産地表示や提供形態が商品選択の条件となりつつある。
テイクアウト固定
営業形態はテイクアウトのみとし、月~水曜日を定休日に固定して提供の枠組みを明確にする。店内飲食スペースを設けず持ち帰りに特化することで、受け渡しの動線や回転の設計を単純化する一方、受け取り後の移動時間を踏まえた商品設計が欠かせない。かき氷の溶け具合や食感の変化を見据え、カップや容量、提供タイミングなどの工夫が求められる。
当面は、初期の4種類の提供とテイクアウト限定という運用の組み合わせが注目される。青果店で扱う果物を中心に仕入れ、加工用と店頭販売用を同時に運用することで、在庫負担を抑えつつロス削減につなげる構えだ。週後半から週末にかけて需要が集中しやすい営業時間と定休日の設定により、来店のピークに人員と仕込みを合わせる体制をとる。
運用面では、テイクアウト限定と季節ごとのメニュー変更が同時に走るため、発注・仕込み・提供量の調整は果物の切り替えと連動する。市内や県内各地の生産者から旬の果物を調達する方針に沿い、メニュー更新のタイミングに合わせて供給条件を擦り合わせることで、産地との関係強化も図る。青果販売と飲食提供の両輪で果物の価値を訴求する。
青果店併設が増加
同様の取り組みは、県内外で「青果の調達力」と「加工提供」を結びつける形で広がっている。福島県内では、会津若松市の「フルーツパラダイス」系列店が地元の桃やイチゴを使ったかき氷を夏季限定で展開し、2024年は観光需要を取り込んで売上が前年比120%増とされた。相馬市でも2018年に「復興かき氷屋」が地元ベリーを使って開業し、地域活性化イベントと連動して年間来客が2万人超とされる。全国でも埼玉県の青果関連店舗が果物かき氷の専門店を隣接出店し、季節果実のローテーションによってリピート率65%を記録した例がある。果物の旬を繰り返し訴求できる点が、単発の限定商品より継続運用に向くことを示す事例だ。
南相馬の「四季と果実 よしとみや」は、発災前の活気を取り戻すという動機と、地元の旬果実を用いるメニュー構成を組み合わせることで、観光やイベント偏重になりがちな季節商材を日常の購買行動に近づける試みとなる。かき氷市場では果物トッピング需要が拡大し、プレミアム帯の比率も上昇している。果実の原産地や品種を明確にしたメニューづくりは、価格以外の選択軸として機能しやすい。福島県内のイチゴや柑橘類の生産規模に加え、夕やけベリーの出荷増もあり、地元産果実の利用機会を加工需要へと広げる余地は大きい。テイクアウト比率が高まり、提供形態そのものが競争力の源泉となる中で、青果店併設型のかき氷店が地域の果物流通と街のにぎわいづくりを両立できるかが問われる。
