株式会社ヤマサキ(広島市)は8日から10日にかけて開催された「第3回化粧品技術者会学術大会」で、毛髪内部のシスチン結合を再架橋する成分の効果を実証したと発表した。ダメージを受けた髪が健康毛と同程度の毛髪強度を示すことを確認したもので、パーマや紫外線によって切断された結合の修復を可能にする研究成果として注目される。
同社は海藻コスメブランド「ラサーナ」を展開しており、今回の発表はクローダジャパン株式会社と共同で行った。ヤマサキが主体となり、ヘアケア研究の新領域を切り拓く取り組みの一環だ。長年課題とされてきた「ダメージ修復の限界」に挑戦するもので、毛髪補修技術の可能性を広げることを目的としている。
シスチン再架橋で毛髪強度回復
ヤマサキが示したのは、毛髪内部の架橋構造に作用する「ジマレイン酸プロピレンジアンモニウム」の再架橋効果だ。実験ではパーマ処理や紫外線照射、還元処理などによって低下した毛髪破断強度が、この成分の塗布により健常毛レベルに回復することを確認した。従来は修復困難とされてきた内部損傷に対し、明確な補修効果が検証されたのは業界でも希少な事例となる。
この成分は毛髪内部に浸透し、ラウリル硫酸ナトリウム溶液で洗浄しても構造内に留まる特性を持つ。ヤマサキとクローダジャパンは、1.0%溶液を用いて実験を行い、貫通性と保持性の両立を確認した。毛髪強度の再構築という形で物理的な改善をもたらすことを、定量的な評価によって裏付けている。
研究蓄積と共同実証の背景
ラサーナブランドは1979年に誕生し、以降「自然の恵み」と「科学の力」を融合する研究を続けてきた。1998年に発売された「ラサーナ 海藻 ヘア エッセンス」は洗い流さないトリートメントの先駆けとされ、2024年11月末時点で累計販売本数は2,500万本に達している。長年にわたり、毛髪強度、櫛通り、キューティクル状態といった多角的評価を重ね、科学的裏付けに基づく補修技術を積み上げてきた経緯がある。
今回の研究には、化粧品原料メーカーのクローダジャパン株式会社が協力した。同社はグローバルに機能性成分を開発・供給しており、材料科学の知見をもとにヤマサキの技術検証を支援した。背景には、化学的な補修力に加えて、安全性や継続的な強度維持を求める需要の高まりがある。今後は共同研究体制のもと、毛髪構造回復のメカニズム解明を深める構えだ。
市場動向と企業の課題意識
ヘアケア分野では、紫外線やカラーリングによるダメージが増加し、髪内部からの補修をうたう製品が広がっている。富士経済の調査によると、ヤマサキのラサーナは「ヘアトリートメント カウンセリング」カテゴリーで国内売上首位に位置付けられ、消費者の支持が定着している。研究開発を通じて自社ブランドの競争力を維持する狙いがある。
他方で、修復メカニズムを実装した製品化には、安定性・持続性の確保という課題が残る。毛髪の状態やダメージレベルに応じた処方技術の精度が問われる局面でもあり、開発データの信頼性が取引先企業の評価基準となるケースが増えている。業界関係者は、化粧品分野における科学的エビデンスの重要性が一層高まっていると指摘する。
ヘアケア技術の深化と今後の注目点
ヤマサキは今後も「自然と科学の融合」を掲げ、毛髪補修技術の応用領域を拡大する方針だ。今回の実証で得られたデータは、製品開発や処方設計の基盤として位置づけられている。社内外の連携を強化しながら、髪や肌、心の健康まで含めた研究テーマへ発展させる構想を持つ。
今回の動きは、科学的根拠に基づくヘアケア技術の方向性を示す事例の一つであり、研究成果の実装が今後の業界標準形成の一端を担う可能性がある。