国立大学法人東京大学とイオン株式会社、ウエルシア薬局株式会社は3月9日、フレイルの予防・対策に関する共同研究契約を結んだ。薬局を起点にチェックや簡易測定を組み込み、支援が必要な層への到達を図る実証を始める。従来の測定会で届きにくかった層に、日常の来局機会を通じて接点をつくる。
3者は、自治体などが実施してきたフレイル測定会が、会場へ来られる意欲の高い人が中心になりやすい一方で、フレイル傾向のある人や多剤服用(ポリファーマシー)の人など支援の必要性が高い層に届きにくい課題を挙げる。今回の実証は、日常的に来局機会のある薬局を起点とし、フレイル・オーラルフレイル領域の第一人者とされる東京大学高齢社会総合研究機構(東大IOG)の飯島勝矢教授・機構長の知見を生かす形で、フレイルおよびオーラルフレイルのチェック・簡易測定を行い、薬剤師が日常業務の中で介入するモデルの有効性を検証する。3者は本取り組みを、フレイル・オーラルフレイル・ポリファーマシー対策を包含した「次世代型かかりつけ薬局モデル」として位置づける。
全国2,500店規模の展開
取り組みは実証と人材育成を並行させる設計とし、4月から今後6カ月で、約750店舗の薬剤師に対してフレイル予防・対策に関する教育を実施する計画を掲げる。実証は千葉県の20店舗で4月に開始する。薬局には慢性疾患で治療中の人や多剤服用の人など、要介護リスクに近い層も来局する点を踏まえ、店舗での取り組みを業務の中に組み込む狙いだ。
ウエルシア薬局は2026年時点で全国約2,500店舗を展開する。今回の計画で示した約750店舗の薬剤師教育は、店舗網の一定の範囲を対象にした取り組みとなる。実証では測定結果を数値として可視化し、根拠に基づく介入を可能にするとともに、多職種連携(医科・歯科への情報提供など)を促進する構えだ。
薬局現場では、フレイルへの取り組みがイベント単発にとどまり、継続的に運用可能な業務モデルの確立が課題となっていた。3者は、実証と教育を組み合わせ、薬剤師が日常業務の中で介入する形を検証対象に据えることで、継続運用の設計に踏み込む。
取り組みの中核は、薬局を「測定・相談拠点」として機能させる点にある。3者は、フレイルの予防・対策が社会に浸透しつつある一方で、口の衰えに早期から気づき対処するオーラルフレイルは十分に認知が広がっていない点を問題意識に挙げる。薬局でのチェックや簡易測定を通じ、住民の気づきと相談導線を整える方針だ。
背景には、イオンが食・生活・医療・介護を横断するサービス提供を推進してきた経緯がある。イオンとウエルシアは2021年以降、資本業務提携を深化させ、2024年にウエルシアの完全子会社化を完了した。グループ内の店舗や薬局機能を軸に、生活接点を生かした健康支援の取り組みを積み上げてきた流れの中で、大学の研究知見を組み合わせる形となる。
外部環境では、高齢化の進展が医療・介護の提供体制と予防の実装に影響を与えている。2025年の高齢化率は29.1%(65歳以上)とされ、フレイル有病率は高齢者の約10〜15%、オーラルフレイルは約30%と推定される。ポリファーマシーについては、2024年時点で5剤以上服用する高齢者が約20%とされ、要介護リスクが2倍超とする整理もある。薬局は処方薬の受け取りや服薬相談の接点を持ちやすく、こうした層と接触しやすい場になり得る。
調剤薬局を取り巻く市場面では、2025年の調剤薬局市場規模が約14兆円とされ、かかりつけ薬局登録率は27%(前年差+3pt)とする推計がある。チェーン各社では、フレイルチェックの一部導入や、ポリファーマシー対策を含む「かかりつけ薬局モデル」の取り組みが報じられており、薬局を拠点にした測定・相談・連携の運用設計がテーマになっている。
750店研修と実証を並行
今回の枠組みでは、東大IOGが学際的なアクションリサーチを進め、地域実装や政策提言を主眼に産官学連携を推進してきた点が、実証設計の基盤になる。フレイル・オーラルフレイル領域の知見を、薬局業務に組み込む形で適用し、チェック・簡易測定と薬剤師の介入を連動させる。加えて、測定結果を数値として可視化し、医科・歯科への情報提供など多職種連携を促進する流れを想定する。
運用面では、4月から千葉県の20店舗で実証を開始し、同じ時期に約750店舗の薬剤師教育を今後6カ月で進める計画を掲げる。薬局での取り組みを日常業務の中に組み込むことで、イベント単発にとどまりやすかった既存の取り組みから、継続的に運用可能な業務モデルの確立へ論点を移す構成となる。
また、自治体にとってフレイル・オーラルフレイル・ポリファーマシーを含む支援が必要な層へのアプローチは、介護費・医療費の適正化にも資する重要なテーマだ。薬局を起点にすることで、啓発活動の負担軽減や支援の継続性向上にも貢献するとみられる。
今後の焦点は、実証と薬剤師教育を並行させる体制のもとで、チェック・簡易測定の運用と多職種連携の情報提供が、薬剤師の日常業務にどのように組み込まれていくかに移る。取引管理や法人営業の観点では、対象となる店舗範囲が千葉県20店舗の実証と約750店舗の教育計画に分かれるため、提供先・連携先ごとの運用単位と情報連携の取り扱いが論点となり得る。3者は本取り組みを「次世代型かかりつけ薬局モデル」として示している。
