株式会社VERIPATH(兵庫県神戸市)は、IT分野の知財戦略を担ってきた佐竹星爾氏を知財顧問に迎えた。同社は『KIDSCALL(キッズコール)』を、保護者の顔認証による解錠と到着通知、入退室記録の自動化を行うクラウドサービスとして提供している。
知財顧問に就いた佐竹氏は、特許網の構築や訴訟対応などIT分野の知財実務に携わってきた経歴を持つ。VERIPATHは事業拡張を見据えた知財ポートフォリオの構築を進める考えで、保護者の顔認証を起点に解錠と通知、記録の自動化を一体で扱うKIDSCALLの運用設計を、知財面からも補強する構えだ。
保育施設で契約締結進む
導入実績では、保育園・幼稚園・認定こども園で契約締結が進む。運用では、顔写真の登録や更新を保護者のスマートフォンで行う仕組みを採用し、施設側の写真撮影や登録作業を不要とする。既存のICTや登降園システムと併用できる点も、施設側の入れ替え負担を抑える設計として示している。
端末面では、KIDSCALLの顔認証端末が屋外設置に対応し、防塵・防水性能の「IP65等級」および耐衝撃性能の「IK06等級」に適合する。動作温度範囲は-20°Cから50°Cまでとしており、保育施設の玄関先など多様な設置環境に対応しうる仕様だ。大規模な工事を要しない後付け設置を前提とし、配線や設備改修を抑えた導入を打ち出している。
知財面では、KIDSCALLの基盤技術に関し、2026年4月に「生体認証トリガーの動的通知制御特許」を取得した。生体認証イベントをトリガーとし、通知先や処理内容を条件に応じて制御する技術とされ、顔認証の結果を起点に解錠や通知、記録を連動させる設計思想と結び付く。VERIPATHにとってサービスの中核技術を権利化しつつ、その周辺をどう厚くカバーするかが、今後の知財戦略上の論点となる。
背景として、VERIPATHは「認証(Verify)」と「解決(Path)」を滑らかに繋ぐことをミッションに掲げ、利用者がデバイス操作を意識しない「完全受動的UX」の実現を目指してきた。代表取締役の山岡源氏は、この『受動的体験』を支える中核技術の一つとしてKIDSCALLを位置づけ、佐竹氏の参画を通じて知財と技術を一体で磨き上げる意向を示している。
山岡氏は2021年に株式会社fixUを創業し、店舗無人化SaaSを提供した後、2025年に同社を上場企業へ売却し、同年にVERIPATHを設立した経歴を持つ。少数精鋭での運営を掲げながら、保育施設向けに安全と省人化を両立させるソリューション展開を進めてきており、その延長線上で知財体制の拡充を進めている。
保育施設では、不審者侵入防止や見守り強化といったセキュリティ向上と、職員の事務負担軽減を同時に求めるニーズが強い。入退室やお迎えの認証をデジタル化し、通知や記録と連動させる取り組みが広がる中で、運用設計と技術の組み合わせが競争軸になりやすい。KIDSCALLはBabyTech(R) Awardsの認定も取得しており、機器の耐久要件や屋外設置を前提とした運用設計と、知財の積み上げを並行して進める姿勢がうかがえる。
知財顧問で体制強化
知財体制では、VERIPATHが多角的な知財ポートフォリオの構築を進める方針を掲げる。佐竹氏は弁理士で、特許事務所での実務に加え、技術移転機関(TLO)で大学発技術の事業化支援に従事した経歴を持つ。京都大学経営管理大学院(MBA)修了後に大手特許事務所や上場IT企業の知財部門を経て、IT分野を軸とした弁理士法人の経営に参画してきた。
VERIPATHは、請求管理や契約管理といった周辺業務の効率化にも踏み込み、2026年3月には株式会社ROBOT PAYMENTの「請求管理ロボ」を導入した。請求書発行から催促連絡までの自動化を図り、少人数体制でも拡大する取引を維持できる運営基盤の整備を進めている。こうしたバックオフィスの自動化と、顔認証を起点とする通知・記録連動のシステム設計を組み合わせることで、サービス提供と知財運用の両面でスケーラビリティを高める狙いがある。
保育施設向けの顔認証・通知連動では、機器単体の性能よりも、現場オペレーションとシステム連携をどう組み合わせるかが差別化要因になりやすい。入退室の「記録」、解錠の「操作」、保護者への「通知」を一体で設計する場合、認証イベントをトリガーとした処理の分岐や通知先の制御が重要になる。VERIPATHが取得した動的通知制御の特許は、こうした連動設計の中核に位置する技術を権利として押さえる狙いと重なる。
競合他社も、保育園・幼稚園で自動お迎え認証システムの導入を進めており、顔認証の採用自体は差別化要素になりにくい。そうした中、屋外設置を想定した耐久要件や後付け設置で大規模工事を不要とする導入設計、保護者のスマートフォンによる顔写真登録・更新の仕組みなど、現場負担を意識した運用設計が競争上の特徴となる。認証を起点とする通知制御を特許で保護することで、通知の対象や条件分岐の設計を自社サービスに取り込みやすくし、個別施設の要件差を吸収しながら標準化を進める余地が広がる。
IT分野の知財戦略では、特許網の構築に加え、権利侵害への対応やライセンス交渉などの実務運用が事業の選択肢を左右する。スタートアップの成長局面では、プロダクト改良のスピードと権利化のタイミングをそろえ、権利の棚卸しや優先順位付けを経営判断に反映させる必要がある。VERIPATHが多角的な知財ポートフォリオ構築を打ち出したことは、KIDSCALLの中核技術の特許取得と並行して、周辺技術の保護領域を広げる方向性を示すものといえる。
保育施設向けサービスは、導入後のシステムが現場オペレーションに組み込まれるため、継続提供の体制設計も重要だ。VERIPATHは請求業務の自動化など運営面の整備を進めつつ、認証と通知、記録の連動を支える技術群を知財の観点から整理し、権利と実務の両面で事業基盤を固めようとしている。業界全体でセキュリティ強化と現場負担軽減の両立が課題となる中、顔認証トリガーを核にした動的通知制御の特許と知財体制の拡充が、KIDSCALLの競争力にどう結び付くかが焦点となる。
