株式会社TOSYS(長野県長野市)は、長野県が実施する「ICT産業立地助成金事業」で事業認定を取得した。長野県庁で交付式が開かれ、阿部守一知事から事業認定通知書が授与された。事業所を新設し、データセンターを統合的に管理できるシステムの開発・提供を進める。県内でのICT関連事業の取り組みが具体化し、事業者側の運用体制整備に影響しそうだ。
認定事業は、データセンター内のIT機器(サーバー、ネットワーク)と設備(電力、空調)を統合・可視化し、効率的に管理するシステムの開発・提供を軸に据える。TOSYSは電気通信設備の設計・施工・保守や情報システム関連を手がけており、今回の認定はデータセンター運用に関わる領域を広げる動きとなる。内容は事業所の新設で、長野県の助成制度を活用しながらデータセンター関連のサービス拡充を図る。
設備3億360万円を計画
認定に伴い、TOSYSは生産設備取得額を3億360万円(予定)とし、新規常勤雇用者数を3名(予定)とした。助成予定額は1億3,020万円以内で、上限額であり、この金額の交付を保証するものではないとしている。交付式は3月18日に長野県庁3階の特別応接室で実施した。
投資と雇用の計画が数値で示された一方、認定事業の中心は「開発・提供」となる統合管理システムである。データセンター内のIT機器と電力・空調といった設備を一体で扱い、稼働状況を見える形にそろえたうえで管理効率を高める設計を想定している。TOSYSは情報システムの企画・設計・施工・保守やクラウドサービス導入支援・運用管理も事業として掲げており、県の制度を使った事業所新設と組み合わせることで、提供領域を具体的なサービスに落とし込む。
同社は2026年2月5日、従来の「空冷」に加え、「水冷」「液浸」の最新冷却技術を導入した次世代コンテナ型データセンターサービスの提供を開始している。最新冷却方式を組み合わせることで高発熱サーバーへの対応力を高めつつ、設置場所の自由度を高めたのが特徴だ。今回の認定では、こうしたデータセンターを統合的に管理できるシステムの開発・提供を掲げ、物理インフラに加えて運用局面の仕組みづくりに踏み込む方向性を示した。
さらにTOSYSは2026年3月4日に株式会社ヤマウラと業務提携契約を締結し、「次世代型データセンター・地方分散NAGANO」に関する取り組みを発表している。コンテナ型データセンターの地方分散設置を強化する内容で、災害分散や電力供給の面からも拠点分散の重要性が増すなか、分散配置されたデータセンター群を統合的に把握・制御する仕組みの必要性が高まりつつある。
統合管理の提供範囲
認定事業の業務内容は、データセンターが統合的に管理できるシステムの開発・提供となる。データセンター内のIT機器(サーバー、ネットワーク)と設備(電力、空調)を統合・可視化し、効率的に管理するシステムを整備し、監視や運転制御、エネルギー最適化などを一体で行えるようにする。コンテナ型データセンターサービスでは、計画立案から設計、構築、運用保守までをTOSYSグループが担うとしており、今回の統合管理システムはその上位レイヤーとして機能する位置づけだ。
運用面では、事業所新設と設備取得、新規常勤雇用という体制整備を伴いながら、統合・可視化の対象をIT機器と設備の双方にまたがる形で扱う。開発と提供を同時に掲げるため、システム構築だけでなく、運用局面での監視・保守業務や障害対応の手順設計まで含めた役割分担が発生する。交付式では阿部守一知事が事業認定通知書を授与し、TOSYSは今回の事業認定を機に長野県内におけるICT関連事業の強化とサービス拡充を進めるとした。
制度面では、長野県はDX推進課がDXアクションプランや先端技術活用推進協議会、庁内デジタル人材の確保・育成、地域社会DXを担当し、長野県内自治体などのDX取組事例集「現場から始まる ながのDXストーリー」を2025年12月9日更新分として公開している。県が示すDXの定義は、デジタル技術とデータを活用し、業務プロセスを改変して新たな価値創出と社会の仕組み変革を行うという整理で、企業側の運用・管理の設計を含む取り組みと接続しやすい政策領域といえる。
長野県内の産学連携や人材育成の動きも進んでいる。たとえばシナノケンシ株式会社との包括連携では、モーターの騒音・振動課題の解決からデジタル人材育成講座へ展開し、企業向けDX教育と学生の実務知見の還元を双方向で実施した事例がある。半導体分野でも「信州半導体高度専門人材育成コンソーシアム」を設立し、実践授業や研究型インターン、技術者講座、共同研究を進める枠組みを整えている。背景には、市町村が課題を提示し企業が参画する「チャレンジ白馬」のように、5年間で46自治体が53課題を提示し310社が参画した仕組みがあり、県内での企業参画型の実装プロセスが積み上がってきた経緯がある。
助成制度をめぐっては、長野県のICT産業立地助成金事業が設備投資やIT導入に活用可能とされ、近隣県でも類似の補助金制度が存在する。自治体による支援策が複数並行する環境下で、事業者側は投資計画と運用体制を結びつけた設計が求められる局面が増えている。データセンター分野では、TOSYSが次世代コンテナ型サービスで計画立案から運用保守までの一連を担う枠組みを示してきた経緯があり、今回の統合管理システム開発は、その運用を横断的に束ねる領域へ踏み込む動きとして位置づけられる。
今後は、事業所新設の進捗と統合管理システムの開発・提供の範囲が注目点となる。取引管理の観点では、助成予定額が上限額で交付を保証しない点と、生産設備取得額・雇用者数が(予定)である点を踏まえた確認が必要となる可能性がある。TOSYSは長野県ICT産業立地助成事業認定を受け、データセンター運用に関わる開発・提供の枠組みを新設事業所と一体で進める方針だ。
