社会課題やSDGsに特化したショート動画メディア「RICEメディア」を運営するTomoshi Bito株式会社(福岡県福岡市)は、学生が社会課題の現場を取材し約60秒のショート動画で発信するプログラム「RICE MEDIA CAMP」を3月に初開催した。4月5日の閉会式で審査結果を公表し、最優秀賞は衣類の廃棄問題を取材した高校3年生の青柳悠花さんが受賞した。学生発の短尺動画が、社会課題情報の到達範囲を広げる動きにつながる可能性がある。
RICE MEDIA CAMPは、学生が社会課題に取り組む企業や現場を取材し、構成・編集・発信までを実践的に学びながら、1本のショート動画として発信するプログラムだ。Tomoshi Bitoは、社会課題が「難しい」「自分には関係ない」と捉えられやすい状況を踏まえ、「社会課題を“受け取る側”から“伝える側”へ」という関わり方を提示する取り組みとして同プログラムを立ち上げた。
応募300名超の初開催
初開催の2026年春大会には、定員160名に対して全国から300名以上が応募し、高校生・大学生160名が参加した。学生は全国4つの社会課題をテーマに分かれて現場取材を行い、完成した動画をSNS上で配信したうえで、再生回数や内容の質をもとに審査を実施した。審査項目は再生回数やオリジナリティ、情報の正確性など複数の評価軸を設定し、すべて約60秒の短尺フォーマットに統一した。
最優秀賞の青柳悠花さんは、衣類の廃棄問題をテーマに取材・制作した。作品はポップな曲調や小道具を用い、日常的に消費される衣類の裏側にある大量廃棄の実態を視聴者に問いかける構成とし、再生回数は約4万回、「いいね」は1,000を超えたという。閉会式では、取材先を提供した企業からのアワードも授与され、Dole賞は馬庭莉央さん、EPSON賞は最優秀賞が高杉奏心さん・八多祐啓さん(グループ参加)、優秀賞が河内晴輝さん・竹端龍一さん・中尾善翔さん、Syncs賞は後藤優太さん・神崎穂波さん(グループ参加)、FELISSIMO賞は最優秀賞が新井理名さん、優秀賞が石谷羅楽さんとなった。
参加者数の面では、定員160名に対し300名以上の応募を集めた点が、初開催としての規模感を示した。運営では、取材対象となる企業・団体がアワードを設けて学生作品を評価し、再生回数などの到達指標と内容面の審査項目の双方を組み合わせた。発信単位を約60秒にそろえたことで制作工程を共通化しつつ、限られた時間内での情報の正確性を評価に組み込んだ点が、プログラム設計の特徴となった。
プログラムの狙いは、学生が社会課題の現場に入り、取材から編集、発信までを一連の実務として経験する点にある。取材先となる企業や現場を学生が訪ね、社会課題に関する情報を視聴者に届けるまでの流れを、短尺動画の制作プロセスとして体系化した。「社会課題を“受け取る側”から“伝える側”へ」という発想を通じ、座学中心ではない形で社会課題への当事者意識を育むことを目指している。
ショート動画を用いた情報流通は、若年層のSNS利用拡大に伴い、企業・団体が広報や採用、CSRなどの文脈で接点を持ちやすい領域として整備が進む。短尺動画は拡散性や視聴完了率を意識した設計を取りやすい一方、誤解を生まない編集や、取材対象側の説明責任が問われやすい。RICE MEDIA CAMPが審査項目に情報の正確性を含めたことは、再生回数偏重の競争にとどめず、取材・制作を軸とした教育プログラムとしての性格を強める要素となる。
企業負担型で運営
RICE MEDIA CAMPは学生の参加費を無料とし、取材する現場や取り組みを提供する企業・団体からの費用を運営原資とする。取材対象となる現場の提供をプログラムの実施体制に組み込み、企業・団体は自らの社会課題対応の現場を学生に開くと同時に、閉会式でのアワード授与などを通じて評価プロセスにも関与した。
参加学生は4つの社会課題テーマに分かれて現場取材を行い、完成した約60秒の動画をSNS上で公開した。企画から撮影・編集、発信までを学生が担う一方、取材対象の提供や現場調整は企業・団体の協力に依存する構造であり、制作物が即座にSNS配信につながる点がプログラムの実務的な特徴となっている。
継続面では、次回RICE MEDIA CAMPを8月に開催する予定で、各地域の企業や自治体と連携したローカル版の展開も計画する。コース提供企業や、各地域でプログラムを実施するパートナー企業を随時募集し、初開催で得た運営実績を土台に開催頻度と連携範囲の拡大を図る方針だ。学生参加費を無料としつつ企業・団体の費用負担を原資とするモデルの下で、取材現場の提供範囲やパートナー企業の役割分担、取材対象の提供手順や確認フローなどが、今後の実務設計の焦点となる。
短尺×教育の競合軸
短尺動画を軸に社会課題を扱う取り組みは、メディア事業者の編集体制で完結させる方式に加え、教育プログラムや企業連携を組み合わせる形が広がりつつある。RICE MEDIA CAMPは、学生が取材・制作・発信までを担う点を前面に打ち出し、作品評価に再生回数を取り入れると同時に、情報の正確性を審査項目に組み込んだ。拡散指標と編集品質の双方を運用設計に組み入れたことで、視聴数のみを競うコンテスト型や学内完結の授業型とは異なる運営要件を示した。
また、運営原資を企業・団体の費用負担に置き、取材先の現場提供を実施体制に組み込んだことも特徴だ。企業側は現場提供を通じて学生と接点を持ち、閉会式でのアワード付与など評価過程にも参加した。こうした設計は、取材対象の選定や現場調整、公開前後のコミュニケーションを継続的に必要とし、プログラム運営の実務負荷が連携先との協業プロセスに大きく依存する構造を伴う。
ローカル版RICE MEDIA CAMPを各地域の企業や自治体と連携して展開する計画は、取材対象の広がりだけでなく、学生の移動や取材の単位を細分化する方向性を含む。全国一括開催に比べ、地域ごとの受け入れ体制や協力企業の発掘が重要性を増し、参加学生のテーマ設定や取材設計にも影響を及ぼすとみられる。8月に予定される次回開催では、初開催で得た知見を踏まえつつ、取材対象の確保や審査運用をどう磨き込むかが問われる。
社会課題を「難しい」「自分には関係ない」と捉えがちな層に対し、短尺動画という日常的な接点を活用し、学生自身を発信主体に据える枠組みは、情報流通の担い手を広げる試みといえる。学生の表現技法と取材行為が結びつき、企業・団体側の現場提供とSNS上での発信が連動する構造は、社会課題コミュニケーションの新たなモデルとして検証が進む余地がある。Tomoshi Bitoが次回8月開催とローカル版展開の計画を示したことで、単発イベントにとどまらず、継続的なプログラムとしての定着と、企業・自治体との連携拡大が焦点となっている。
