昨年11月3日に旭日小綬章を受章した東京カリント取締役顧問で全国油菓工業協同組合理事(前理事長)の西村久氏(84)の叙勲祝賀会が3月5日、上野精養軒(東京都台東区)で開かれた。来賓・社員ら約140人が出席し、西村氏の功績を称えた。食品製造や業界活動での取り組みを共有し、関係者が品質や安全をあらためて確認する場ともなった。
祝賀会では、農林水産省大臣官房新事業・食品産業部食品製造課の野添剛司課長が来賓あいさつに立ち、全国油菓工業協同組合での長年の功績を紹介した。品質管理の推進、アクリルアミド低減への対応、全国菓子大博覧会への参画、「かりんとうの日」(11月10日)の制定、子ども食堂への寄贈活動などを挙げ、日本の伝統菓子を次世代に受け継ぐ取り組みが評価されたと語った。個社の製造現場にとどまらず、業界団体の運営を通じた品質・安全の取り決めづくりや、催事・記念日の制定による認知向上にも貢献した点を強調した。
祝賀会は140人規模
会場では、東京カリントでの取り組みも紹介された。独自の蜂蜜発酵の製法(蜂蜜発酵仕込み)を継承しつつ革新を重ね、危険を伴う揚げ工程の機械化や自動フライヤーの導入により、職人の経験に依存していた製造を安全で安定した品質に導いたと説明した。来賓として出席した商業組合首都圏お菓子ホールセラーズの小黒敏行理事長は、品質の向上、技術の継承、人材の育成といった課題への取り組みに敬意を表した。
式次第では、全国油菓工業協同組合の山脇正隆理事長が乾杯のあいさつを担い、三幸食品の森田裕一郎社長が中締めのあいさつをした。森田社長は、西村氏が掲げてきた安心・安全・良品づくりの理念に触れ、食品業界として守っていかなければならないと呼びかけた。西村氏は受章について「本当に皆さまのお力のもとでいただけたものと考えている」と感謝の意を述べた。
閉会あいさつでは、東京カリントの西村光示社長が、父が長年かりんとうに力を注いできたと述べたうえで、かりんとうを日本の伝統菓子として一層推進させていかなければならないとし、かりんとう業界と菓子業界の進展に力を注ぐ考えを示した。西村氏は西村光示社長に対し「皆さんに喜ばれるおいしいお菓子を作ってほしい。それと、安心安全」とエールを送った。
東京カリントは1946年に西村久次郎氏が個人企業の西村商事として創業し、1951年に東京カリントへ改組した。西村氏は、かりんとうの由来について、遣唐使によって日本に伝わった唐菓子に由来するとの説や、江戸後期に暑さ対策のために作られたと伝えられている説を紹介した。戦後にかりんとう作りを始めた背景として、甘いものが好きだったことや、製造工程が比較的簡便であることを挙げた。企業の沿革と商品文化の説明を通じ、伝統菓子の継承と現代の生産体制整備が並行して進んできた歩みを示した。
野添課長が挙げたアクリルアミド低減への対応は、品質管理と並ぶ食品製造の重要課題と位置づけられる。全国油菓工業協同組合の活動としては、全国菓子大博覧会への参画や「かりんとうの日」(11月10日)の制定、子ども食堂への寄贈活動など、製造・品質分野にとどまらない発信や社会貢献も展開してきた。「旭日小綬章」は顕著な民間功績者に授与され、春・秋の年2回、地域や団体、個人に対して授与される褒章の一つとされる。
機械化で製造を平準化
東京カリントで進めてきた揚げ工程の機械化や自動フライヤーの導入は、危険を伴う工程の安全性向上と生産効率の両立を狙ったものだ。蜂蜜発酵仕込み製法を守りながら設備や工程を見直し、伝統的な製法要素と機械化を組み合わせることで、職人の勘や経験に依存していた製造を、標準化された工程に置き換えた。これにより、現場の安全確保と品質の均一化を図る体制づくりが進んだ。
業界団体では、全国油菓工業協同組合が品質管理の推進やアクリルアミド低減への対応を主導してきた。祝賀会の場には、行政の食品製造部門、業界団体、流通を担う商業組合、食品企業の関係者がそろい、品質向上、技術継承、人材育成といったテーマが共有された。個社の工程改善の話題と、団体活動や業界共通課題が結び付けられた格好だ。
供給体制や事業の継続性の観点では、蜂蜜発酵仕込み製法の継承と揚げ工程の機械化・自動フライヤー導入による安全性と品質の安定化が企業側の柱となる。一方、業界活動では「かりんとうの日」(11月10日)の制定、全国菓子大博覧会への参画、子ども食堂への寄贈活動などを通じ、製造・品質の枠を超えた取り組みが広がっている。行政、業界団体、企業が出席した今回の祝賀会は、西村氏の旭日小綬章受章を契機に、製造現場の改善と業界全体の課題認識を共有する場となった。
