東北電力は11日、定期検査中だった女川原発(宮城県石巻市、女川町)2号機の原子炉を起動した。14日に発電を再開し、6月9日に営業運転を始める予定だ。昨年10月に一時的とみられる不具合が起きた設備の交換を検査で終えたうえで、運転を進める。一方で、テロ対策設備の工事が設置期限までに完了しない見通しのため、工事完了を見込む2028年8月まで、今年12月から再び運転を停止する方針も示している。稼働と停止が併存する計画が、電源運用や工事対応の実務に影響を与えそうだ。
今回の女川2号機再稼働は、定期検査を経て原子炉を起動し、発電再開から営業運転までの具体的な工程を示した点が特徴となる。東日本大震災の津波被害を受け、女川2号機は2011年以降、長期停止が続いてきた。東北電力は再稼働に向けて耐震補強や安全対策を進め、規制当局の審査を経ながら設備更新を重ねてきた。
定検後は段階運転
東北電力は1月から定期検査に入っていた女川原発2号機の原子炉を11日に起動した。検査工程の区切りごとに運転モードへ段階的に移行し、14日に発電を再開した後、6月9日に営業運転へ移る計画だ。昨年10月に一時的とみられる不具合が起きた設備は、検査の中で予備品への交換を終えたうえで再稼働の手順に入る。
今回の定期検査では、原子炉圧力容器底部の「制御棒駆動機構」を予備品に交換した。原子炉の出力制御に関わる重要設備に対し、運転再開に先立って具体的な措置を講じた形となる。耐震性の向上や安全設備の追加といった一連の改修とあわせ、女川2号機の設備は新規制基準に沿った形へと更新が進んでいる。
国内では再稼働する原発が段階的に増え、2026年5月時点で12基が稼働している。ただ、定期検査や安全対策工事のため停止が繰り返されやすく、国内の原発稼働率は2025年度に25.4%と見込まれる。東北電力管内の需給見通しでは予備率8%超が見込まれる一方、女川2号機の停止局面では火力依存率が5%分上振れするとの整理もある。運転できる期間と停止する期間を事前に区切る計画は、電源運用と工事工程を同時に管理する局面を明確にする。
女川2号機では、テロ対策の「特定重大事故等対処施設(特重)」などの工事が、設置期限の今年12月までに終わらない見通しとなっている。このため東北電力は、12月から工事完了を見込む2028年8月まで再び運転を停止するとしている。稼働入りと停止入りが同じ年の工程に並ぶ点は、発電計画と工事計画を一体で運用する必要性を際立たせる。特重は2013年の新規制基準で義務化された設備で、工事の遅れは女川に限らず他の原発でも期限超過と停止計画が組み込まれる事例が出ている。
特重遅れで再停止
停止を織り込んだ運用計画は、女川2号機の再稼働手順に特有の制約を与える。東北電力は6月の営業運転開始後も、特重工事の設置期限と完了見込みの時間差を踏まえ、年内に停止へ移る方針だ。電力の供給力は、稼働・停止の切り替えに合わせた電源配分が求められ、工事側は期限を意識した施工計画が並走する。工程の切れ目が増えることで、運転側と工事側の調整局面が長期化しやすい。
特重に必要な非常用電源などの資機材は重電各社への依存度が高く、工事が全国で集中する局面では納期が遅れやすいとの指摘がある。業界団体の整理では、2024〜2026年に工事が重なる中で、資機材の納期遅れが10〜20%報告された例もある。女川2号機の特重工事は2023年に着工し、完了は2028年8月を見込む。運転の再開と停止をまたぐ工程管理では、施工の進捗と電源計画を同じ時間軸で扱う必要が高まる。
今回の定期検査で制御棒駆動機構を予備品に交換し、発電再開から営業運転までの段取りを示した一方、12月以降の停止をあらかじめ組み込む工程となる。運転できる期間が限定されるため、電源運用は稼働期間の確定と停止期間の代替調達を同時に扱うことになる。卸電力市場や相対取引の実務では、女川2号機の運転・停止の切り替え時期を前提に、調達電源や工事発注の工程が組まれる構図が強まる。
CRD不具合の共通性
女川2号機で交換した制御棒駆動機構は、原子炉の出力制御に関わる重要設備の一つだ。業界では同種設備を巡る点検・交換の事例が複数確認されている。関西電力の高浜3・4号機では制御棒駆動機構の不具合が生じ、定期検査で予備品交換を経て再稼働に移った経緯がある。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽6号機でも2019年に振動に関する事象が公表され、交換と監視強化が組み合わされた。こうした経緯を踏まえ、規制当局は2020年に制御棒駆動機構の定期点検に関するガイドラインを策定し、振動低減の考え方を整理してきた。
女川2号機の今回の工程は、設備交換を伴う定期検査を経た再稼働に加え、特重の工事遅れを織り込んだ停止計画が同時に示された点に特徴がある。特重工事の遅延は、九州電力の玄海3号機や日本原子力発電の東海第二などでも期限超過と停止・再開の工程が組まれる例があり、個別審査の範囲内で延長が扱われてきた。原子力規制委員会は女川2号機の制御棒駆動機構の不具合を「一時的」と整理し、交換を条件に承認した経緯がある。特重は福島第一原発事故の教訓を踏まえた義務設備であり、延長手続きと停止判断が運転継続の可否を左右する分岐点になりやすい。
コスト面では、新規制基準下の再稼働対応は1基あたり約5000億円とされ、特重を含む追加投資が電力事業者の資本支出を押し上げてきた。東北電力は女川2号機に関し、2023〜2028年の累計で2000億円超の投資を見込む。工事遅延率は業界平均で15%との整理もあり、資機材の調達環境や施工体制が工程の振れ幅を大きくする要因となっている。原発停止が地域雇用に与える影響を500人規模と見積もる推計もあり、停止・再開の工程は発電事業のみならず立地周辺の取引や雇用にも連動しやすい。
当面は、14日の発電再開と6月9日の営業運転開始に続き、12月からの停止入りと2028年8月の工事完了見込みまでの扱いが、電源計画と工事進捗の両面で焦点となる。法人の調達・営業実務では、稼働と停止を織り込んだ需給計画に沿って、電力契約の期間設計や工事関連の納期条件を合わせる運用が想定される。東北電力は女川2号機で、定期検査後の再稼働と年内停止を同一工程内で進める方針を示している。
