東亞合成(東京都港区)は新中期経営計画を公表し、2028年12月期に営業利益180億円、PBR1倍以上、ROE6.5%の達成を目標に掲げた。株主還元では配当性向の引き上げと自己株式取得を組み合わせ、総還元性向の水準を数値で示した。
新計画では、モビリティ、半導体、メディカルの3分野を重点領域に位置づける。同社は、瞬間接着剤「アロンアルフア」などの消費者向け製品から、半導体製造プロセスで使用される高純度ガスまでを手掛ける高機能化学メーカーで、基幹化学品を収益の中核としながら、ポリマー・オリゴマーや高機能材料など成長分野への投資を循環的に拡大している。研究開発は神奈川県川崎市の「川崎フロンティエンスR&Dセンター」を中核拠点とし、DXの推進と人材育成を通じた新製品の創出を目指す。
売上1623億円、海外比率18%強
2025年12月期の連結業績は、売上高162,312百万円(前年同期比3.2%減)、営業利益14,180百万円(同0.4%減)だった。2026年12月期は売上高167,000百万円(同2.9%増)、営業利益14,500百万円(同2.3%増)と、増収増益を見込む。海外売上比率は18.1%で、中国、インド、東南アジアなど成長市場に拠点を展開している。
事業は、基幹化学品(2025年12月期営業利益構成比61.7%)、ポリマー・オリゴマー(同21.3%)、樹脂加工製品(同19.4%)、高機能材料(同8.3%)、接着材料(同2.3%)の5セグメントで構成する。基幹化学品では無機化学品、アクリルモノマー・化成品、工業用ガスを扱い、カセイソーダなどを供給する。樹脂加工製品ではインフラ老朽化対策製品が収益に寄与した局面があり、基幹化学品からの収益を原資に成長分野へ再投資する構図が鮮明だ。
高機能材料では、半導体・電子材料向けに高純度液化塩化水素や高純度水酸化カリウム水溶液(高純度カリ)を展開する。接着材料では「アロンアルフア」など家庭用・工業用接着剤を手掛け、国内売上高シェアは約80%(100円ショップ向け安価品を除く)とされる。半導体向けでも高純度ガスなどで高いシェアを確保しており、コンシューマー向けと産業向けの双方で厚みのある既存事業を前提に新計画を構成している。
株主還元では、新中期経営計画期間(2026〜28年)に連結配当性向を期間平均70%程度とし、自己株式取得を含めた連結総還元性向を90%程度とする方針を示した。配当は2009年以降減配がなく、2026年12月期の年間配当予想は1株当たり70円とした。化学業界では資本効率の目標設定や総還元性向の目安を中期計画に組み込む動きが広がっており、同社も成長投資と株主還元の両立を打ち出した形だ。
新計画で掲げた注力分野のうち、半導体関連では高純度ガスなど素材・プロセス材が柱となる。AI需要を背景にした半導体製造設備投資の拡大を受け、高純度ガスの需要増が見込まれる中、同社は半導体製造プロセス向け高純度ガス事業の基盤を強調し、研究開発体制の強化と組み合わせて新製品の開発を進める。
海外展開では、中国、インド、東南アジアに拠点を置き、成長市場での化学品需要の取り込みを図る。為替変動やインフレ局面での価格転嫁、コスト削減など収益面の課題を意識しつつ、18.1%の海外売上比率を一段と引き上げる方針で、供給能力の増強や投資配分の最適化を進める。
海外拠点と供給拡充
海外戦略では、インドでの新会社設立やベトナムでの拠点開設を通じ、海外売上比率の向上を狙う。国内外の工場・拠点を結ぶサプライチェーンを強化し、グローバルな供給体制を拡充する考えだ。半導体向けではクリーニングガスの国内シェアがほぼ100%に達しているとし、さらなる高純度化や供給安定化に向けた投資を進める。
モビリティ分野では車載電池向けの接着剤やバインダー、メディカル分野では医療関連用途向けの高機能材料など、用途別に細分化された市場への対応力が問われる。これら高機能材料ビジネスでは、研究開発と製造・供給体制の連動が収益力の鍵となる。同社は「川崎フロンティエンスR&Dセンター」を中心にDXと人材育成を進め、グローバルな供給網と接続させることで、重点分野における新製品・新用途の開拓を加速させる構えだ。
株主還元の運用では、連結配当性向70%程度、自己株式取得を含む連結総還元性向90%程度という目安を置き、配当と自己株式取得を組み合わせることで資本政策の柔軟性を確保する。2009年以降減配を行っておらず、2026年12月期は年間配当1株当たり70円を見込む。
新中期経営計画の実行を通じて、東亞合成は半導体など成長市場向けの高機能材料と基幹化学品の両輪で稼ぐ収益構造を固めつつ、高水準の株主還元を継続し、PBR1倍超とROE6.5%の達成を目指す。
