シスメックス株式会社(兵庫県神戸市)は2月12日、2026年3月期の通期連結業績予想を下方修正した。売上高予想を5000億円、営業利益を620億円、税引前利益を590億円、親会社株主に帰属する当期利益を410億円とし、いずれも前回の予想を下回った。中国市場での売上が当初想定より落ち込んでいることが主因だという。
同社は、血液などの検体検査分野で世界190カ国以上に製品とサービスを提供する医療機器メーカー。主要市場の一つである中国で需要が軟調に推移しており、業績への影響を考慮して今回の修正を行った。中期的な経営計画の一環として、収益性の改善や販管費の抑制を進めているが、現地景気の減速や医療機関の設備投資動向の鈍化が想定よりも強く響いている。通期業績見通しは、グローバル市場の変動を慎重に踏まえた対応の一環と位置づけられる。
営業利益を18%下方修正
今回の修正発表によると、営業利益は前回予想の760億円から140億円減の620億円となり、減少率は約18%。税引前利益は590億円(前回比−120億円)、当期純利益は410億円(前回比−40億円)に引き下げられた。売上高も当初見通しを2%下回る5000億円に修正された。
なお、前期(2025年3月期)の実績は、売上高5086億円、営業利益875億円、当期純利益536億円であり、いずれの利益項目も前年を割り込む見込みだ。
為替前提も見直しており、通期平均レートを対米ドル150円、対ユーロ174.6円、対中国元21.1円と設定した。
第4四半期の想定はドル154円、ユーロ183円、人民元22円としており、円安基調による収益押上げ効果は一定程度見込まれるものの、中国元安による現地販売の採算悪化が上回ると判断した。
創業以来の検体検査技術を核に展開
シスメックスは1968年に設立された臨床検査機器・試薬メーカーで、血液や尿を対象とした検体検査に強みを持つ。ヘマトロジー(血液学検査)機器では世界トップシェアを持ち、医療機関や研究機関向けの装置・ソフトウェアを一貫して開発・製造・販売している。検査分析装置に加え、専用試薬やシステム運用支援を含む「ソリューション型提供」により収益基盤を築いてきた。
グループは、アジア、欧州、米州など4地域に統轄拠点を置く。中国では上海を中心に製造・販売体制を展開しており、現地行政の感染症対応政策の転換や病院購買規制の厳格化が、検査関連需要に遅れを生じさせている模様だ。インドや東南アジアの市場では堅調さを保つ一方、中国市場の鈍化が全体収益に影響している。
中国景気の減速と為替変動が要因
今回の業績予想下方修正の背景には、中国経済の減速に伴う医療機関の設備投資抑制がある。関係者によれば、同国での検体検査機器更新需要が当初見込みより低調に推移し、装置販売や試薬供給のペースが鈍化しているという。
加えて、人民元安とドル高の進行により輸入コストが上昇し、利益率を圧迫した。現地通貨換算での売上目減りと為替差損が重なった影響が大きい。
医療機器業界全体でも、中国市場の調整局面が続いている。検査機器は設備投資の裾野が広く、景気動向に左右されやすい特性を持つ。現行の為替環境下では、同社だけでなく競合他社においても販売計画修正や価格戦略の見直しが相次いでいる。
こうした状況を受け、シスメックスは地域別販売網の再構築や調達体制の効率化を急ぐ方針とみられる。
研究開発と国際展開を維持
同社は、血液凝固や尿沈渣(沈殿物)などの検査分野でも高いシェアを持ち、AIや自動化技術を取り入れた製品開発を強化している。近年では「タッチフリー」型の血液検査システムや難治性疾患の早期診断に資する新試薬などを投入し、世界各国の医療現場での省人化・効率化に貢献している。
研究開発拠点は日本を中心に欧州・北米・アジアで展開し、グローバルで1万人を超える従業員を擁する。
また、検査需要の拡大が見込まれる新興国やデジタル医療領域への参入も進む。
長期ビジョンとして掲げる「ヘルスケアジャーニー」構想のもと、個別化医療や在宅検査分野に向けた新規プロジェクトを推進しており、売上構成の地域分散を図る。財務基盤が強固なため、設備投資と研究開発投資は予定通り継続する見通しだ。
為替・需要双方の揺らぎに対応
業界関係者の間では、今回の通期業績予想下方修正を「中国依存度の高さを背景にした一時的調整」とみる声がある。為替環境が依然不安定であるなか、同社が通期予想に織り込んだ為替前提の見直しは、為替リスク管理の強化を意味する。
調達と販売が異通貨で行われる国際事業では、ヘッジ体制の整備が企業収益に直結するため、今後の注目点といえる。
シスメックスは引き続き販管費や一般管理費の削減を進めつつ、技術革新と地域間の需要バランスを踏まえた事業運営を行う方針だ。
医療機器需要の平準化と為替変動対応が、今後の収益安定化の焦点となるだろう。
