スズキのインド子会社マルチ・スズキ・インディアの竹内寿志社長は19日までに、ニューデリーの本社で産経新聞などのインタビューに応じた。インド市場で需要が急拡大するスポーツタイプ多目的車(SUV)に新型車を積極投入し、シェア拡大を図る方針を示した。インド生産車の輸出は2024年度に過去最高を更新し、日本向けも2025年度に伸びた。車種投入と生産・輸出拡大の動きが、グローバルな供給構成の変化につながる可能性がある。
竹内氏は、インドの乗用車市場全体では小型車を中心に約4割を占めてシェア首位となっている一方、SUVのシェアが2割程度にとどまっていると説明した。「十分な車種がなかった」とし、SUVを積極的に投入してシェアを取っていく考えを述べた。既に2025年に新型SUV「ビクトリス」を投入し、2026年2月には同社初の電気自動車(EV)となる小型SUV「eビターラ」をインドで発売しており、これに続く新型SUVも投入しててこ入れを図る。SUVとEVの投入は、インドでの需要構造の変化に合わせた商品構成の組み替えと、生産拡大を前提とした輸出の積み上げを同時に進める動きとなる。
SUV比率54.7%へ
スズキによると、インドの乗用車市場におけるSUV比率は2019年度の26.5%から2024年度には54.7%まで拡大した。一方で、マルチ・スズキのSUV市場シェアは19.6%にとどまる。スズキにとって国内外のグループ販売でインド市場の影響が大きく、SUVの拡販は課題となっていた。スズキの投資家向け資料では、マルチ・スズキのインド乗用車市場シェアは2024年度(4〜3月)で176万台販売、全体市場434万台に対し40.6%を占めた。2025年4〜12月期は132万台で39.1%、10〜12月期は53万台で40.7%となり、市場全体が拡大する局面でもシェア40%前後の水準が続いている。
輸出面では、インドでの生産拡大に伴い、インドで作った乗用車の海外向け輸出が2024年度に過去最高の33万3千台を記録した。2025年度は日本向けの輸出(逆輸入車)が4万4千台となるなど、輸出の内訳でも変化が出ている。スズキの四輪車世界販売台数324万台のうちインドが55%を占め、インドからの輸出は約33万台規模で115カ国に及ぶとされる。生産拡大と輸出の積み上げが並行するなかで、SUV・EVの新車投入は供給構成の組み替えと結びつきやすい。
メーカー別の競争環境をみると、日本貿易振興機構の集計では2024年度のインド国内販売でマルチ・スズキが176万台(シェア40.9%)となり、2位のヒョンデが59.8万台(13.9%)、タタ・モーターズが56.9万台(13.2%)、マヒンドラ&マヒンドラが55.1万台(12.8%)と続く。トヨタ・キルロスカは30.9万台(7.2%)、キアは25.5万台(5.9%)、ホンダは6.5万台(1.5%)となっており、マルチ・スズキが台数とシェアで上位を大きく引き離している。
一方で、インド市場の伸びを牽引してきたSUV領域では、竹内氏が「十分な車種がなかった」と述べたように、同社の車種構成が需要構造に追随するかどうかが焦点となる。スズキの資料では、マルチ・スズキのSUV市場シェアは前期16.8%から19.6%へ増加したとされ、2026年2月発売の「eビターラ」が寄与したとの説明がある。新型SUVの追加投入方針は、SUV比率が上がった市場での車種拡充と、EV投入を含む商品計画の連続線上にある。
竹内氏はまた、中国の自動車メーカーがタイやインドネシアでEVを軸に日本メーカーに攻勢をかけている状況に言及し、本格的なインド進出については「(国境問題を抱える)地政学上の関係」などを挙げ、当面は進出が難しい状況が続くとの認識を示した。米国のトランプ政権の高関税政策や、ロシア産原油の輸入を巡る問題で米印関係が悪化する半面、相対的に中印関係の改善が進んでいるとも述べ、「インド政府の対応はしっかり注視したい」と語った。インドを軸にした生産・輸出の体制構築は、近隣国のEV展開や通商・外交環境の変化と並行して検討される局面にある。
背景には、インドの自動車市場規模そのものの拡大がある。スズキの資料では、2025年の暦年でインドの自動車市場(乗用+商用)が過去最高の514万台となり、国別で中国、米国に次ぐ3位とされる。市場の内訳でもSUV比率が2019年度の26.5%から2024年度に54.7%へ上昇しており、セグメント構成の変化が進んだ。マルチ・スズキは小型車を中心に高いシェアを維持してきた一方、伸びるセグメントであるSUVへの車種投入を厚くすることが、販売構成の見直しと輸出車種の組み替えに直結するとみられる。
輸出33万3千台
輸出の増加は、インドでの生産拡大を前提に進んでいる。竹内氏は生産増に伴い、輸出が日本や欧州を中心に今後拡大するとの見通しも示した。ハンサルプール工場には完成車を国内外に輸送するための鉄道引き込み線が敷設されている。スズキの資料では、マルチ・スズキの生産累計が2024年3月時点で3,000万台に到達し、販売では2024年度に過去最高の210万台(前年比106%)を記録した。生産の積み上げと輸出の拡大が進むなかで、鉄道引き込み線などの物流インフラは完成車輸送の効率化に一定の役割を果たす。
SUV比率が高まる市場構造の中で、マルチ・スズキ・インディアは新型SUVの投入とEVの発売を進めつつ、インド生産車の輸出を積み上げている。日本向け逆輸入車が2025年度に増える見通しとなっており、輸出先別の車種構成と出荷計画の行方が焦点となる。インドを軸とした生産拠点の強化とSUV・EVの拡充は、スズキの世界販売と収益構造に一段と影響力を増しそうだ。
