重度身体障害者の在宅就労を進める「スタッフサービス・クラウドワーク」(相模原市)は1日、入社式を開き、4人の新入社員を迎えた。障害で通勤が困難でも完全テレワークで働ける雇用形態を整え、仕事のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展に合わせて、従来は就労を諦めていた層の社会参加を後押しする。
同社は、全ての仕事を通勤なしで完結させる働き方を掲げ、テレワーク就業を推進してきた。グループ会社が受け取った名刺の電子化や求人情報のリスト化などをはじめとする事務・情報処理業務を担い、在宅環境で一連の業務を完結させる体制を構築している。スタッフサービス・クラウドワークはスタッフサービスグループの傘下で、障害者雇用に特化した特例子会社の一部署としてスタートした経緯があり、当初は通勤やバリアフリー環境の整備状況が採用可否に影響する場面が多かった。
40都道府県で659人在宅
完全テレワークによる雇用は2016年に始まり、2020年に分社化した。今年4月時点で40都道府県で659人の重度障害者が在宅で働いている。スタッフサービスグループは障害者雇用促進を目的に2013年に特例子会社「スタッフサービス・バリアフリーソリューションズ」を設立し、その一部署として始めた完全テレワーク雇用の仕組みを、分社後も引き継いできた。
面接時に意欲が評価された求職者でも、通勤や職場のバリアフリー環境のハードルから採用を見送らざるを得ない事例が相次いだことが、転換のきっかけとなった。資質や能力とは別の要因で選考せざるを得ない状況への問題意識が高まり、テレワーク前提の就業モデルへの移行を進めた。現在は、名刺や求人情報などのデータ処理を在宅で担う仕組みを広げ、障害の有無にかかわらず能力本位で評価しやすい雇用モデルを磨いている。
取り組みは、スタッフサービスグループ内で発生する事務・情報処理業務を通勤不要の形に再設計し、スタッフサービス・クラウドワークが集中的に受け持つ役割分担に基づいている。雇用の受け皿を自社内の特定拠点の通勤圏に限らず、在宅で完結する業務を束ねて提供することで、通勤困難という制約に左右されにくい就業機会を用意する狙いだ。グループの業務運営と人材活用を結びつける仕組みとして位置づけられる。
今回の入社式は、その延長線上で4人を迎えた節目となった。曽根徹哉社長は「ここからがスタートです。誰もがより良い『働く』に出会える社会にしていきましょう」とあいさつし、先輩社員はオンラインで「困ったときは頼って大丈夫。安心して一歩ずつ進んでいってください」とエールを送った。オンラインを介したコミュニケーションを入社時点から組み込み、在宅就労の働き方に合わせた受け入れ態勢を示した。
一方、市場環境では障害者雇用を巡る制度と企業の実務対応が、テレワーク活用を軸に変化している。厚生労働省の2025年の障害者雇用状況調査では、法定雇用率2.5%を達成した企業が3,000社を超え、重度身体障害者の就労率は15.2%(前年比2.1ポイント増)となった。総務省の2026年の調査でも、障害者雇用企業の在宅勤務比率は45%と全企業平均の28%を上回る。障害者雇用促進法の改正(2024年施行)でテレワークが雇用措置として明記され、企業側は法定雇用率対応と業務設計の両面でテレワーク活用を組み込む局面に入っている。制度と統計の動きは、通勤困難層の就労機会拡大に向け、業務のデジタル化と就業場所の柔軟化を組み合わせる手法が企業の有力な選択肢になりつつあることを映す。
通勤不要の業務設計
スタッフサービス・クラウドワークの雇用は完全テレワークを軸に、通勤を伴わない業務設計をとる。グループ会社が受け取った名刺の電子化や求人情報のリスト化など、社内で発生した情報を在宅で処理できる形に変換し、成果物としてオンラインで戻す流れを組み込むことで、就業場所に縛られない運用を実現している。
入社式はオンラインでの交流を取り入れ、新入社員が入社日に「今の気持ち」を紙に書いて共有するなど、遠隔環境でもコミュニケーションのきっかけを作る場とした。採用から就業開始、日々のコミュニケーションに至るまで、対面前提の工程をオンラインに置き換える必要が生じるなか、入社式運営もオンラインで完結させ、社長や先輩社員のメッセージを同じ場で届ける形をとった。
同社が担う業務は、名刺の電子化や求人情報のリスト化といった定型度の高いデータ処理が中心だ。完全テレワークの運用では、作業の切り出しや品質管理の方法を含め、業務を発注する側のグループ会社と在宅で担う側との間で役割が分かれる構造になりやすい。このため、グループ内でどの業務を在宅完結の工程に載せるかの判断が、就業機会の受け皿の広がりと直結する。
同社は特例子会社の一部署として始まり、2016年から完全テレワーク雇用を本格化させ、2020年4月に分社独立した。雇用単位を切り出して運営することで、採用・教育・業務配分をテレワーク前提で設計する方向性を打ち出してきた。通勤やバリアフリー環境の制約が採用の意思決定に影響していた採用現場の課題に対し、在宅就労を前提に据えることで、選考時に重視する制約条件の位置づけを変えた格好だ。
今回迎えた4人は、完全テレワークで働く前提で入社した。曽根社長のあいさつや先輩社員のオンラインでのエールは、在宅就労の環境下でも組織とのつながりを感じられる導線を用意する意図がにじむ。業務を委託する側にとっては、名刺の電子化や求人情報のリスト化などの作業指示と成果物の受け渡しをオンラインで完結させることになり、業務の切り出し単位とコミュニケーション手順の整合が運用上の焦点となる。
競合も在宅雇用拡大
人材サービス各社でも、障害者雇用のテレワーク活用を業務設計と一体で進める動きが広がっている。リクルートスタッフィングは2024年から完全在宅派遣を開始し、名刺OCR化業務でスタッフサービス・クラウドワークと類似領域を手がける。パーソルテンプスタッフも2025年に障害者テレワーク部署を新設し、200人規模でデータ入力業務を在宅委託する計画だ。業務のデジタル化が進むほど、定型的な情報処理やデータ整備を在宅に切り出しやすくなり、人材サービス企業のオペレーション設計が障害者雇用施策と直結しやすくなっている。
制度面では、障害者雇用促進法改正でテレワークが雇用措置に明記された。法定雇用率の達成に向けた実務では、採用人数の確保だけでなく、就業継続を左右する就業環境の設計が論点となる。総務省の調査で障害者雇用企業の在宅勤務比率が45%とされる状況は、在宅勤務を雇用施策に組み込む企業が一定数に達していることを示す。厚生労働省の調査で重度身体障害者の就労率が15.2%まで上昇したことも、通勤困難層の就業が従来の通勤前提の枠組みだけでは支えきれなくなっている実態を映す。
この文脈で、スタッフサービス・クラウドワークの40都道府県・659人という就業実績は、雇用を特定拠点の通勤圏に依存させない運用が、採用可能な母集団の拡大と結びつき得ることを示す。同社のように、グループ内の間接業務を束ねる機能と障害者雇用の受け皿を同時に運用する場合、業務量の見立てと人員配置の整合が事業の継続性を左右しやすい。競合各社もデータ入力や名刺関連の情報処理などDXと親和性の高い業務に寄せており、在宅就労の拡大に伴い、採用・労務・教育の工程をオンライン前提に再設計する動きが人材サービス業界全体に広がっている。
スタッフサービス・クラウドワークが入社式にオンライン交流を組み込み、先輩社員が遠隔でフォローの言葉を届ける運営をとったことは、採用段階から就業後までのコミュニケーション設計を通勤不要の業務設計とセットで整える試みの一例だ。企業が障害者雇用とDXの両面で実務の更新を迫られるなか、通勤を前提としない就業モデルをどこまで組織内に組み込めるかが、各社の取り組みの差を生みやすい論点となっている。
