株式会社ソラスト(東京都港区)は2月10日、FY2025第3四半期決算を公表した。売上高は前年同期比2.6%増の1,056億円と過去最高を更新した一方、営業利益は1.9%減の55億円となった。処遇改善を目的とした人材投資と新規IT投資が一時的に利益を圧迫したが、全事業で増収を確保した。セグメント別では医療、介護、こども事業すべてが前年を上回った。
売上の拡大は医療事業での計画以上の価格改定や新規契約受注が主因であり、医療・介護・こどもの各事業における堅調な成長が寄与した。同社はFY2025を中期経営計画の実現に向けた「改革の1年」と位置づけ、人的資本およびIT基盤への積極的な投資を実施している。利益減少は戦略的処遇改善と次世代IT基盤への先行投資に伴う一過性のもので、企業体質の強化を目的としている。
全事業で増収、医療事業が成長を牽引
FY2025第3四半期の売上高は1,056億円で、前年同期比2.6%増を記録した。セグメント別では、医療事業が前年同期比3.4%増の552億円、介護事業が0.9%増の422億円、こども事業が6.2%増の81億円だった。
医療事業では価格改定と新規契約受注が寄与したものの、積極的な価格交渉による一部契約失注も見られた。営業利益率は医療事業で5.6%、介護事業で5.4%、こども事業で1.6%だった。
介護事業ではデイサービスや施設系サービスの利用増加により増収を確保し、営業利益は11.6%増の23億円と改善した。こども事業は東京都の第一子保育料無償化制度などの追い風を受け公定価格改定の効果が表れたが、処遇改善や採用コストの増大により営業利益は3割超減少した。
一方で介護・医療領域を中心にIT投資と業務改革を進め、生産性の底上げを図っている。
人材投資とIT刷新で生産性改革
同社はFY2025を「人とテクノロジーの融合による改革の年」と位置づけ、人的資本とIT基盤の両軸で投資を行っている。
人的資本面では処遇改善強化を通じて社員定着率を過去最高水準に引き上げ、採用・教育コスト削減につなげた。処遇改善強化の投資は年間約28億円に上り、価格改定効果によって経費増を吸収した。社員の継続勤務意向は2ポイント上昇し、エンゲージメント向上が明確に示された。
IT分野ではGoogle基盤への全面移行を完了し、AI活用による事務効率化と現場支援の仕組みを整備した。
医療分野では診療報酬算定支援アプリ「solabell」を外販化し、有償プラン継続率92%を維持。介護分野では記録・請求・勤怠管理を自動連携する介護BPRの構築を進め、業務負荷削減とケア時間確保を両立させた。2026年3月にはGoogle Workspaceを中核とした全社DXが全面稼働予定で、Geminiを用いた事務AI代行の試行も始まっている。
医療・介護・こども各事業の戦略転換
医療事業では診療報酬改定をにらんだ価格適正化を進め、通期で26億円の増益効果を確保した。
得られた原資をIT戦略に再投資する方針で、AI音声解析を活用した接遇品質向上アプリ「solaheart」や社員向けアプリ「solaLink」による働き方改善が進む。これにより現場管理職の負荷軽減と社員満足度の向上を実現し、医療機関への提供価値を高めている。
介護事業では赤字・重複事業所の統廃合を進め、過去2年間で21拠点を整理し1.5億円の収益改善効果を得た。2025年には撤退事業者6社を受け入れ、顧客115名、スタッフ25名を引き継いだ。
今後は撤退情報を早期収集し、事業承継モデルをグループ全体に展開する計画だ。こども事業では保育の質向上と差別化を進めるほか、処遇改善と人材補充により持続的な運営体制を目指す。
財務体質と投資体制の安定維持
財務面では2025年12月末時点で現金及び預金は約124億円。負債総額は451億円で、純資産は236億円となりD/Eレシオは0.8倍と低水準を維持している。
営業キャッシュフローは54億円、フリーキャッシュフローは約46億円で、安定した資金繰りを確保した。有利子負債は前年より3億円減少し、財務構造の健全性を保っている。
ソラストは中期経営計画(FY2025−2029)に基づき、人口減少社会を見据えた「人的資本経営×テクノロジー」の強化戦略を掲げる。
次世代アウトソーシングやソリューションビジネスの展開に加え、BPRによる全社的なコスト削減を進める。FY2026には「ビジネスオペレーション本部」を新設し、AI代行と事務集約で本社業務の抜本的改革を図る予定だ。
中期戦略下での焦点と今後の運営課題
中期経営計画では、FY2026以降に増益基盤を構築し持続的成長を実現する方針を明確にしている。
同社の特徴は、処遇改善とIT投資の双方を原資循環型で運用している点にある。このため短期的な減益局面を通じても、定着改善による採用コスト削減やデータ基盤高度化が進めば長期的な利益回復余地が見込まれる体制だ。
FY2026年3月の全社DX稼働、同年の介護BPR本格運用が近い焦点となる。
人材定着と生産性向上を軸に据えた経営モデルをどう浸透させるかが、今後の持続的成長の前提となるだろう。