ソフトバンクの宮川潤一社長は5月11日の決算説明会で、オンライン専用ブランド「LINEMO」の値上げは「今のところ考えていない」と述べた。ソフトバンクとワイモバイルでは6月2日から料金改定を実施する一方、LINEMOは対象外とし、当面は現行料金を維持する方針だ。主力ブランドの値上げとオンライン専用の据え置きを分ける判断は、競合状況と投資負担の見え方に影響しうる。
料金改定はソフトバンクとワイモバイルが実施主体となり、6月2日から適用する。狙いは、物価上昇が続く環境下で収益構造の維持を図りつつ、設備投資の増加局面に備える点にある。一方でLINEMOはオンライン契約専用の位置づけを保ち、競合する他社オンライン専用ブランドを意識して価格を据え置く枠組みとした。宮川社長はLINEMOを「隙間のブランド」と表現し、今後の扱いは議論が必要だとの認識も示した。
2ブランドは6月2日改定
ソフトバンクとワイモバイルの料金改定は4月に公表しており、6月2日から実施する。ソフトバンクは大容量プランを550円、小容量プランを330円それぞれ引き上げ、ワイモバイルはシンプル2を330円、シンプル3を220円引き上げる。
主力2ブランドを同日に改定する一方、オンライン専用のLINEMOは対象に含めず、当面は現行料金を維持する。
改定の収益影響について、同社の秋山CFOは決算質疑で、料金改定による増収効果が来年度に年1000億円規模に達するとの見通しを示した。今年度は期中からの実施となるため、効果は数百億円規模にとどまる見通しだ。
料金改定のタイミングを年度途中に設定したことで、短期の増収は限定的になる一方、来年度にかけて効果が通年化する構図となる。
LINEMOは値上げ見送り
宮川社長はLINEMOの値上げについて「今のところ考えていない」と述べ、現時点で決定事項はなく「そのつもりもない」と説明した。
LINEMOは2021年に「ahamo」「povo」と同時期にスタートしたオンライン契約専用ブランドで、契約者は伸びているものの、同社の中では「主力であるワイモバイルとソフトバンクブランドの2大ブランドが大半」と位置づけた。
年1000億円増収見込む
料金改定の目的について宮川社長は、値上げを「ぎりぎりまで」避ける方針で検討してきたとしたうえで、物価が上がり続けるなかで値上げをしないと「会社の構造が壊れる」と説明した。コスト上昇が継続する前提のもと、主力ブランドの料金改定で収益基盤を維持し、事業運営の安定性を確保する狙いをにじませた。
一方、オンライン専用のLINEMOは据え置きとし、主力2ブランドとは異なる設計を採った。
主力側で増収を見込みつつ、競合が激しいオンライン専用では価格を動かさない判断は、同社内でのブランド役割分担を明確にする動きでもある。結果として、主力ブランドの改定で収益面の下支えを図り、LINEMOは競合環境を踏まえた「隙間」の受け皿として運用する構図が浮かぶ。
設備投資は4100億円規模
値上げの背景には設備投資の増加もある。ソフトバンクの2026年度の設備投資は4100億円規模で、従来キープしてきた3300億円から大きく増える。
宮川社長は内訳の一つとして海底ケーブルを挙げ、「毎年400億円近くを見ている」と説明した。海底ケーブルへの先行投資に加え、基地局の分散や補強といった既存ネットワークの強化を進める方針も示した。
次世代基地局技術のAI-RANは「展開はもう少し先で、今は初期準備の段階」とし、中期経営計画には大規模な投資を織り込んでいないという。
投資計画が増勢となる一方、技術投資の山谷をどの時点で収益構造に織り込むかは、運用面の注目点となる。料金改定が6月2日から実施されるなか、主力2ブランドの改定効果と、LINEMOの据え置き方針の継続性が、同社の投資負担の吸収策とどう整合するかが意識される局面に入る。
