スノーフレイク・コンサルティング合同会社(愛知県名古屋市)は2月、名古屋商工会議所の職員を対象に生成AIの基礎研修を実施した。業務用生成AIツールの全職員導入にあたり、生成AIの仕組みや活用時の留意点を体系的に整理し、実務での活用イメージを持てるよう約90分のプログラムを設計した。
研修では、一般的な生成AIの技術特性に加え、名古屋商工会議所が導入した業務用生成AIツールの操作方法と、会議所業務を想定した具体的な活用ユースケースを取り上げた。職員が導入直後から業務内で活用できる状態をめざし、業務効率化や職員の資質向上、会員企業の満足度向上につなげる狙いがある。
約90分研修を設計
研修プログラムは約90分で構成した。冒頭は参加者が実際にAIを操作し、「2030年の今日に起きそうな出来事を考えて」というプロンプト入力を起点に、生成AIがもっともらしい出力を返す様子を共有した。講師を務めた中島正博氏は、従来型AIと生成AIの違いを説明し、Googleマップの所要時間計算などを例にルールベースのAIを示したうえで、生成AIの動作を確率論と連想学習の組み合わせとして解説した。
プロンプト設計の基本では、指示の粒度によるアウトプットの違いを比較し、「役割を与える」「目的と背景を伝える」「出力形式を指定する」といった考え方を整理した。実務シーンの実演では、翌年度イベント企画書のドラフト生成、イベントのアンケートデータ分析、社内規程を参照する問い合わせボット作成をライブ操作で示し、会議所業務への適用イメージを具体化した。
安全な使い方のパートでは、IDやパスワードなど認証情報の管理、フリーWi-Fi利用のリスク、個人情報・機密情報の取り扱い、著作権への配慮を体系的に扱い、「AIが出したアウトプットの責任は最終的に人間にある」との原則を共有した。組織で安心して利用するための運用ルールとして、ネットワーク利用や情報管理のポイントも整理した。
研修内容は、仕組み理解、プロンプトの基本、実務ユースケースのライブデモ、安全な使い方とセキュリティルールの説明で構成した。実務適用では、企画書作成、データ分析、社内規程参照の問い合わせ対応などを題材に、生成AIを既存の業務プロセスにどう組み込むかを示した。
スノーフレイク・コンサルティングは2020年に独立し、2023年に法人化した。生成AI活用研修のほか、事業創出の思考法として知られるエフェクチュエーションの普及や、哲学とマーケティングを組み合わせたコンテンツ開発などに取り組んできた。名古屋商工会議所関連では、「創業塾」OB・OG向け生成AI実践セミナーにも登壇し、企画業務の効率化などについて説明してきた実績がある。
名古屋商工会議所側は、名古屋中小企業IT化推進コンソーシアムの「Pit-Nagoya」を運営し、ITコーディネータや中小企業診断士がIT導入相談に応じる体制を整えている。ITサービスのマッチングやセミナー情報の一覧化も進めており、企業支援と職員の業務遂行にデジタル活用を組み込む取り組みを拡大している。全職員を対象とした生成AI研修は、こうしたデジタル支援機能を支える人材育成の一環となる。
外部環境では、名古屋市の中小企業デジタル活用支援補助金が、生産性向上や賃上げ、ロボット導入を含むデジタル投資を対象とし、活用に際して名古屋商工会議所などへのデジタル技術相談を必須としている。補助金では、センサーによる生産可視化や勤怠管理システム、在庫管理の二次元バーコード、受発注システムなどの事例が挙げられている。商工会議所が会員企業の相談窓口を担う構造のもと、職員側の生成AI活用を含むデジタル実務の底上げは、補助金制度など支援メニューの運用とも密接に関連している。
全職員導入が焦点
今回の研修は、業務用生成AIツールの全職員導入に合わせ、操作方法とユースケースを含めた内容を約90分に凝縮した点が特徴だ。生成AIの挙動理解から指示の設計、企画書作成やアンケート分析、社内規程参照の問い合わせ対応といった題材のライブ操作までを一連の流れで示し、導入直後からの活用を促す構成とした。安全な使い方では、認証情報やネットワーク利用、個人情報・機密情報、著作権といった論点を整理し、最終責任は人にあるという原則を明確にした。
名古屋商工会議所では、全職員が業務用生成AIツールを利用する前提のもと、操作とユースケースを研修内に組み込むことで、組織としての運用ルールと活用の方向性をそろえた。法人向けの取引実務でも、認証情報の管理や情報・著作権の取り扱いを会議所の業務プロセスに沿って運用することが求められており、今回の研修はその基盤整備と位置づけられる。スノーフレイク・コンサルティングは、全職員導入に合わせた基礎研修を通じて、会議所職員の生成AI活用スキル向上を後押しした。
