シミックホールディングスのグループ会社でSMO(治験施設支援機関)事業を手がけるシミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(東京都港区)は、PPI(患者・市民参画)活動の一環として、小児治験に対する理解促進を目的としたオリジナルの小児治験啓発絵本「ちけんのえほん」を制作し、医療機関などでの活用を始めた。親子で治験や薬の開発を正しく理解できる機会の提供につなげる。
絵本は特定の治験広告や参加を促すものではなく、家族が子どもに治験について説明する際の補助資材としての活用を想定する。小児治験では、被験者となる子ども本人の理解(アセント)に加え、保護者の十分な理解と判断が不可欠とされることから、親子で自然に読み進められる構成で薬剤開発の意義や治験の役割を扱う。シミックヘルスケアは、SMOとしての治験支援で培ったノウハウやネットワーク、専門人材を基盤に、被験者募集や治験文書管理、治験啓発活動などを含めた臨床試験全体の支援を掲げており、絵本制作をその取り組みの一環とした。
全国支援網で活用拡大
すでに小児科や産婦人科などで複数の治験において活用が始まっている。医療現場からは「イラストと言葉で治験が分かりやすく説明されている」「同意説明前の理解補助として有用」との声が寄せられており、これまでの実績と評価を踏まえて、取り組みの周知を進める。
シミックグループは医薬品開発支援の領域で事業基盤を広げてきた経緯があり、1992年に日本で初めてCRO事業を開始した。現在は開発から製造、営業・マーケティングまでを支援する体制を整え、グループ会社は28社、従業員は7,700人超を擁する。シミックヘルスケアはこのグループの一社としてSMO業務に加えヘルスケア情報サービスも提供し、医療関連施設の支援を進めている。
絵本の制作では、治験を実施する医師に加え、治験アンバサダーや患者団体に所属する患者家族、治験参加経験のある子どもが内容を確認し、意見や助言を反映した。治験アンバサダーは、一般社団法人YORIAILabが主催する「治験アンバサダープロジェクト」修了者が含まれる。イラストとキャラクターデザインは、絵本作家・イラストレーターの林ユミ氏が担当した。
シミックヘルスケアは、全国の医療機関で多くの小児治験を支援してきたほか、患者・医療従事者・企業の声を届けるメッドコンシェルジュサービスを通じ、患者・家族の座談会やインタビューを実施するなど、PPI関連の活動も継続してきた。こうした活動の延長線上に、医療現場での説明と家族側の理解を補助する資材の整備を位置づけ、絵本という形式で具体化した。
PPI反映で制作運用
制作体制はPPI活動の一環として構築し、制作段階で医師、治験アンバサダー、患者団体に所属する患者家族、治験参加経験のある子どもが内容確認に関与し、意見や助言を反映した。シミックヘルスケアはYORIAILabなど外部組織とも連携して啓発資材の企画・制作やPPI活動支援を進め、治験参加者や家族の視点を取り込んだコンテンツづくりを図る。
絵本の活用先は医療機関などで、小児科や産婦人科を中心に展開する。提供形態は治験参加を促す広告ではなく、同意説明に入る前段の理解補助としての利用を想定する。医療者が治験の説明を行う場面に加え、家族が子どもに治験を説明する際の補助資材として用いることを念頭に、親子で自然に読み進められる構成とした。
背景には、小児を対象とした治験が増加傾向にある一方で、情報があふれる社会環境のなかで治験への不安や誤解が生じるケースがあるとの認識がある。小児治験では、子ども本人のアセントと保護者の理解・判断が手続き上の要素となり、説明の分かりやすさや受け止めの整理が医療現場の実務にも関わる。シミックヘルスケアは、治験支援の現場で蓄積した知見を踏まえ、治験の役割や薬剤開発の意義を扱う啓発資材として絵本を企画した。
今後の展開として、中高生や成人向けなど世代に応じた治験啓発コンテンツの制作も計画する。医療機関での運用では、同意説明前の理解補助という性格から、どの診療科や治験でどの段階に組み込むかが検討課題となる。小児治験啓発絵本の制作は、臨床試験全体の支援を掲げるシミックヘルスケアが、治験に対する正しい理解を社会に広げることを狙う取り組みだ。
