認定NPO法人Silent Voice(大阪府大阪市)は22日、日本マイクロソフト株式会社(東京都港区)が運営する社会貢献プログラム「Code; Without Barriers in Japan for Accessibility」(CWBJ-A)に協働パートナーとして参画したと発表した。両者は、主にろう・難聴者を対象としたAIやクラウド技術などの無償トレーニングを提供し、デジタル時代に適応した就業機会拡大をめざす。オンラインでの実施を通じ、情報格差の小さい学習環境を整備する。
今回の協働では、Silent Voiceが支援対象者の特性に合わせた教育設計を担い、日本マイクロソフトが提供する「Microsoft 365 Copilot」など生成AI関連技術の教育リソースを活用する。全国どこからでも参加できる完全オンラインの講座を設け、多様な働き方を可能にする人材育成を推進する考えだ。Silent Voiceにとっては、主に教育・就労支援分野で培ったノウハウをデジタル領域へ拡張する新たな取り組みとなる。
プログラム構成と学習対象を明確化
社会的な支援を必要とする18歳以上のろう・難聴者を対象に、生成AIを中心とした最新のデジタル技術を学ぶトレーニングを設ける。
受講コースは、AIを活用する立場の「Copilot 人財コース」と、AIを開発する立場の「AI開発人財コース」に分かれる。いずれも無料で参加できる形式で、オンライン授業や実践的な演習を通じ、受講者が自らのスキルを高めることを狙う。
トレーニングを受けた参加者が今後のIT関連企業や教育機関などで活躍することを想定している。
日本マイクロソフト側では、CWBJ-Aをクラウド・AI分野におけるダイバーシティとインクルージョン促進の主要施策として位置づけており、プログラム参加者の成長支援を通じて、すべての人が平等にテクノロジーへアクセスできる環境構築を目指している。
同社は、「Access for all」などの取り組みを通じ、視覚・聴覚・身体それぞれの障がい特性に応じた職場環境整備を国内外で推進してきた経緯がある。
教育支援NPOの取り組みの延長線に
Silent Voiceは2017年設立の認定NPO法人で、「デフと聴者のできるをふやす」をミッションに掲げる。教育や就労支援を通じて、ろう・難聴者と健聴者がともに活躍する社会づくりを進めてきた。
今回の取り組みは、その活動領域をデジタル分野へ広げるものであり、AI技術の浸透によって拡大する情報格差を縮小する動きを加速させる位置づけとなる。
背景には、AIやクラウドなどの新技術分野で専門スキルを持つ人材が求められる一方、障がいを持つ人がそれらを学ぶ機会に制約があるという現状がある。
特に聴覚情報へのアクセスは授業や研修でのバリアにつながりやすい。
Silent Voiceは手話や文字を活用した配信方法を工夫し、アクセシブルな教育体制の確立を目指している。関係者によると、実証的な教育効果の分析や、他分野への応用も検討されているという。
アクセシビリティ支援と社会包摂の流れ
今回の協働の基盤となるCWBJ-Aは、マイクロソフトが世界的に展開する「Code; Without Barriers」計画の日本向けプログラムだ。
障がい者や慢性疾患を抱える人など、学習や就労に困難を感じる多様な人々のスキル習得を支援する。
既にクラウドやAIに関するメンタリングやネットワーク形成の取組みを国外で進めており、日本では特にアクセシビリティ(利用しやすさ)の観点から設計されている。参加費は不要で、診断の有無も問わない形式を採っている。
マイクロソフト製品群では「Microsoft Teams」などへの字幕・トランスクリプト機能、バリアフリーなオフィス環境づくりを推進する「Access for all」シリーズなど、複数のアクセシビリティ強化策が展開されている。こうした製品活用を教育現場に広げることで、離れた地域や家庭環境にかかわらず、学びを平等に提供できる仕組みの構築が進みつつある。
Silent Voiceとの協働はその延長に位置づけられる。
デジタル学習機会拡大への注目点
情報通信分野では、生成AIを含むデジタル技術の急速な普及が進むなかで、障がい者を含む多様な人材の育成が課題となっている。
今回の施策では、参加希望者の登録管理や学習体験の設計など運営面をSilent Voiceが主導し、日本マイクロソフトがプログラムフレームを提供する。これにより、教育NPOとグローバル企業の協働による持続的な人材育成のモデルケースとなる可能性がある。
今後は、CWBJ-A全体として他の障がい分野や多様な特性を持つ人々への展開も見込まれており、アクセシビリティ技術活用の実証やコミュニティ形成の進展が焦点となる。
Silent Voiceの参画は、国内でのインクルーシブ教育の広がりを後押しする動きの一環と位置づけられる。
今後の教育・就労支援分野におけるデジタル技術との融合状況が注目される。