株式会社小学館(東京都)が3月19日、第三者委員会の設置を決議した。漫画アプリ『マンガワン』で連載していた『常人仮面』の原作者起用判断と確認体制に問題があったとされ、配信停止と単行本出荷停止に至った事案が対象だ。外部への情報流出の有無は示していない。調査に協力し、結果はプライバシー権などに配慮しつつ公表する方針で、編集体制の運用にも影響が及ぶ可能性がある。
小学館は臨時取締役会で、客観性と公正性を確保した調査が必要と判断し、第三者委員会の設置を決めた。対象は、マンガワン編集部が『堕天作戦』の作者として連載を中止した人物を、別のペンネームで『常人仮面』の原作者として起用していたとする事案で、同社はこれを「本事案」と位置づけた。今回の設置は、編集部門の判断と社内の確認体制が適切だったかを外部の目で検証する枠組みとなる。
小学館が委員会設置決議
小学館は、2026年2月28日付で公表した内容として、マンガワン編集部において『堕天作戦』の作者が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で逮捕され、略式起訴されて罰金刑を受けたことを踏まえて連載を中止した経緯があるとした。
一方で、その後に別のペンネームへ変更し、新連載『常人仮面』の原作者として起用していたことが判明しているという。
同社は、本事案を重く受け止め、客観性・公正性を確保した調査が必要と判断した。これを受け、第三者委員会を設置し、事実関係の解明に加え、原因分析と再発防止に向けた提言までを委ねる。
調査対象は起用判断と類似事案
第三者委員会への調査委嘱事項は4点とした。
第1に本事案に関する事実関係の解明、第2に本事案に類似する小学館の役員・従業員が関与する問題事象の有無の確認、第3に本事案が発生した原因の分析と再発防止に向けた提言、第4に第三者委員会が必要と認めた事項の調査である。
類似事案の確認には、同社が同年3月11日付で知らせた「2018年に小学館従業員が取引先の従業員に対して行った問題行為」を含むとしており、編集部門に限らず、役員・従業員の関与する問題事象を視野に入れる。
調査範囲を広く設定したことで、個別事案の検証にとどまらず、組織的な再発防止策の検討につなげる構図となる。
マンガワンで配信停止と出荷停止
小学館をめぐっては、2月27日に漫画アプリ『マンガワン』が、連載作品『常人仮面』(原作:一路一、イラスト:鶴吉繪理)の原作者起用問題について声明を出していた。
声明では、原作者の起用判断および確認体制に問題があったため配信を停止し、単行本の出荷を停止したと説明した。
マンガワン側は、原作者の一路一氏が『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物だと報告した。経緯として、2020年に山本氏が逮捕され、略式起訴されて罰金刑を受けたことを踏まえ『堕天作戦』の連載を中止した一方で、2022年にマンガワン編集部が一路一名義の原作で『常人仮面』の新連載を開始したとした。「本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした」とし、被害に遭った人や読者、作品関係者、寄稿作家、関係者に謝罪した。
弁護士3人で委員会構成
第三者委員会は弁護士3人で構成する。
委員長は伊丹俊彦氏(WIN法律事務所、元大阪高等検察庁検事長)で、委員は福原あゆみ氏と辺誠祐氏(いずれも長島・大野・常松法律事務所)が務める。
今後の対応について小学館は、第三者委員会の調査に全面的に協力するとした。
調査の結果、明らかになった事実関係などは、関係者のプライバシー権等の侵害にならない範囲で公表し、必要な対策を講じる予定だ。取引先や制作関係者にとっては、調査範囲と公表の範囲、ならびに公表後に示される対策の内容が、運用上の注目点となる。
