株式会社シェアリング・ビューティー(東京都渋谷区)は、美容室の実購買データを活用した美容メーカー向けマーケティング支援サービスを開始した。大阪府内のグループサロンで取得した売上実績や購買傾向などのデータを用い、従来の感覚的な販促から実証に基づく「データドリブン型マーケティング」への転換を支援する。
同社はヘアスタイル特化メディア「HAIR」やインフルエンサー施策を手がけてきたが、今回の取り組みはコンサルティング事業部が中心となって展開する。実店舗における顧客行動を可視化し、美容メーカーの販促活動を効率化する目的だ。オンライン中心だったデータ活用をオフラインでも進め、OMO(Online Merges with Offline)による最適化を図る位置づけとなる。
大阪府内7店舗の購買データを基盤に分析
グループが運営する大阪府内7店舗(豊中市・池田市・吹田市・大阪市北区・阿倍野区・都島区)で蓄積した購買実績を解析に活用する。対象データには「誰が」「いつ」「何を」「どの頻度で」購入したかといった詳細が含まれ、季節別・属性別の傾向分析が可能となる。
これにより、メーカーの販売施策や商品投入タイミングを検証できる環境を整えた。
活用支援の具体的なメニューは、購買率や客単価、競合比較のレポート提供のほか、総務省の市町村別所得統計と自社データを組み合わせた市場把握、さらに新商品のテスト販売機能などがある。
これにより施策のPDCAを実購買データで検証でき、テストマーケティングの期間短縮を見込む。
オンラインと実店舗を結ぶ新モデル
背景には美容メーカーが抱えてきた「実店舗での販売状況が把握しづらい」という構造的課題がある。業界全体でEC販売のデータ活用は進んできた一方、サロン現場の購買は依然として「ブラックボックス」だった。
同社は自社でサロンを運営しているため、購買データを自前で収集できる点が優位とされる。これにオンライン広告やメディアデータを掛け合わせ、オフラインの購買行動を可視化する。
同社は、メディア・広告・サロンの三事業を垂直統合的に展開しており、この一気通貫の構造がマーケティング支援の基盤となる。ECの施策分析手法をサロン領域に適用し、OMO化を実運用レベルで支える体制を整えた。実店舗での消費者行動を裏付けるデータが揃うことで、広告から購買までの一連の消費行動を検証する新モデルとして注目される。
美容業界のデータ活用と安全管理意識の高まり
美容業界ではECを除くオフライン領域でのデータ活用が遅れていたが、店舗リスクや顧客トラブルへの対応を含め、経営の透明化を進める動きが広がっている。
業界関係者によると、美容室は水回り設備や薬剤を扱う特性から、漏水事故や施術上の労災リスクなども存在し、経営上のリスクマネジメントとデータ分析の両立が求められている。
一方、近年では美容室向けの法人保険や賠償制度の整備が進み、店舗運営の数値化・分析習慣が広まりつつある。
データを定量的に扱う企業が増え、購買や安全管理に関する実績データの共有がマーケティングのみならず事業管理にも波及している。リスク対策視点のデータ運用が一般化すれば、サロン経営の信頼性向上につながるとみられる。
シェアリング・ビューティーの坂本幸蔵社長は「自社サロンの購買データを活用することで、これまで見えなかった消費者の行動を企業に提供できる。オンラインとサロン実売をつなぐことで、美容業界全体のマーケティング精度を高めていきたい」と述べている。
当面は自社グループでのデータ提供から始め、対象店舗や提携メーカーを段階的に拡大する方針だ。
様々な地域特性との突き合わせ分析を進め、OMO型マーケティングの定着を図る動きが続く見通しである。