株式会社セイコー・エステート&ディベロップメント(福岡市中央区)は、一級建築施工管理技士や一級建築設計士などの有資格者がオフィスに常駐し、複数の現場を統括する「完全オフィス型施工管理」のモデルを導入した。現場監督の現場常駐を廃止し、建設DXと分業制を組み合わせる。移動時間を抑え、週休2日制を徹底することで、建設業界の離職問題や「2024年問題」への対応につなげる狙いがある。
新モデルは、ネットワークカメラとアプリ、クラウド型管理システムを使い、施工状況をオフィス側へ届ける運用を軸にする。現場の付帯業務はサポートスタッフが担い、有資格者は工程管理、図面精査、原価管理などのマネジメントに専念する。ベテラン技士の知見を移動や雑務に充てず、複数案件の管理に振り向ける体制とし、即戦力人材の採用強化にもつなげる。あわせて同社は、福岡での建築施工管理・現場監督、建築設計士の採用を強化し、建設DXや研究開発にも取り組む方針だ。
離職率14.0%が重荷
建設分野では人材確保が継続的な課題となっている。国土交通省の2023年のデータによると、建設業界の離職率は14.0%で、全産業平均の1.8倍に当たる。有効求人倍率も3.14倍と高水準で、採用難と現場負荷が同時に進む構図が続く。一級建築施工管理技士の平均年齢が45歳を超える統計もあり、技術者の高齢化が進む状況が浮き彫りになっている。
セイコー・エステート&ディベロップメントが掲げたのは、現場監督が現場に常駐する慣行を改め、オフィスから複数現場を束ねる運用だ。従来の負担要因として、現場と自宅・オフィス間の往復、資材受け取り、業者管理、写真整理、現場事務所での深夜の書類作成などを挙げる。そこで現場の付帯業務を専門のサポートスタッフに委ね、有資格者が工程管理、図面精査、原価管理などに軸足を置く分業の形をとる。
運用の中核は、現場側の施工状況をオフィスに届ける仕組みだ。現場に設置したネットワークカメラで状況を把握し、現場監督はタブレットやPCを通じてアプリでリアルタイムに確認する。職人への指示はクラウド型管理システムを介して行い、現場からの移動を伴わないマネジメントを志向する。
同社は2024年11月8日に社名を株式会社セイコー住建から変更した。建築設計・施工に加え、不動産投資支援や法人向け建築、海外建設プロジェクト、土地活用・不動産コンサルティングなどを手がける。完全オフィス型施工管理は、こうした建築領域の運用を組み替える施策として打ち出した。
代表取締役の高木政利氏は、自ら現場監督を経験しており、待機時間や手書き書類を非効率と捉え、ITで排除する運用に改めた経緯を示す。現場での判断や調整に関わる知見を、移動や雑務に費やさずマネジメント業務に集中させる狙いがある。採用面では、建築施工管理の中途採用を本格的に強化するため、dodaと連携した採用施策も進めている。
外部環境では、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が建設分野にも適用され、「2024年問題」として現場体制の見直しが迫られている。内閣府の「経済財政白書2024」によると、2024年の建設投資額は71兆円の見込みで、一方で人材不足が担い手確保の課題として指摘される。国土交通省はi-Constructionの推進を掲げ、ドローンやカメラを活用した遠隔施工管理の標準化を進めている。
福岡県内でも人手不足が顕在化している。福岡県の資料では、2024年上期の建設業有効求人倍率は4.5倍で、施工管理職不足が顕著とされる。福岡市内の建築許可件数が前年比15%増とされる一方、担い手確保が課題となっており、現場運用の組み替えが採用や就労条件の改善と結びつきやすい環境にある。
カメラと分業で統括
この運用では、現場監督の現場常駐を廃止する点が核となる。現場往復や深夜の書類作成など、従来の負担要因をサポートスタッフとデジタルの仕組みに振り分ける設計とし、施工状況の確認や指示のやり取りをカメラ映像とアプリ、クラウド型管理システムに集約することで、オフィス側での統括を可能にする。
同社は福岡での建築施工管理・現場監督、建築設計士の採用を強化し、建設DXや研究開発にも取り組む方針だ。採用強化と運用モデルの導入を同時に進めることで、必要な人材像を有資格者のマネジメント重視に再定義し、現場側の付帯業務を別機能として組み直す。オフィス側で担う工程管理や原価管理と、現場側で担う付帯業務の分担範囲を明確化することで、協力会社との連絡系統や日々の指示系統にも変化が生じるとみられる。
