株式会社SBI新生銀行(東京都中央区)は、日本銀行が実施した政策金利の利上げを受け、円普通預金および「SBIハイパー預金」の金利を2026年1月9日に引き上げると発表した。改定は主要行の多くが2月実施を予定する中、同行は一足早く実施する。顧客が利上げの恩恵を早期に享受できるよう配慮した措置だ。
今回の決定は、個人向け預金商品の競争が激化する中で、SBIグループとして「顧客中心主義」を徹底する方針の一環と位置づけられる。同行が提供するSBIハイパー預金はSBI証券との共同開発サービスで、証券口座と銀行口座間の資金移動を自動化できる仕組みを備えている。利上げは政策金利上昇に連動した市場金利の変動を背景にしたもので、流動性を重視する個人投資家層への対応を狙う。
ハイパー預金残高7,000億円超
同行が2025年9月に開始したSBIハイパー預金は、連携先であるSBI証券との資金移動を容易にした新型円預金である。
同行によると、サービス開始から約3か月で預金残高は7,000億円に達し、2025年12月21日時点で突破を確認した。同年12月の純増額は約2,400億円で、12月12日に6,000億円を上回ってから9日間で1,000億円以上積み上げた。これは金利優遇や利用者拡大を目的としたキャンペーン施策の効果が表れているとみられる。
同行は12月10日から「目指せ1兆円」キャンペーンを展開しており、SBI証券口座を併用する個人顧客の獲得を進めている。
1月以降はSBI証券のNISA口座利用者向けの取引連動企画も予定しており、金融仲介業務と預金動向を連携させた取り組みを強化する構えだ。
金利引き上げ対応と市場環境
1月9日の金利改定では、円普通預金とSBIハイパー預金の双方が対象となる。どちらも変動金利で、毎日見直しを行う仕組みを採用している。
同行は「市場動向などにより適用金利を変更する場合がある」としており、機動的な調整を前提とする運用だ。今回の改定によって、政策金利の上昇分を早期に反映する先行対応となる。
背景には、日銀が掲げた金融正常化への移行方針がある。長期金利上昇とともに短期資金市場の金利も上向いた結果、各行が普通預金金利の見直しを迫られていた。
主要行では2月前後の改定が中心となるが、SBI新生銀行は1か月早く動くことで顧客基盤拡大を図る。ネットバンクと証券サービスを組み合わせたハイブリッド運用を訴求し、資産運用・決済の両面での利便性を高める戦略だ。
上場を機にグループ戦略を加速
同銀行は2025年12月17日に東京証券取引所プライム市場に上場した。同行は上場を「新たな出発点」として掲げ、企業価値の向上とデジタル金融サービスの展開を両輪とする方針を明らかにしている。SBIハイパー預金の拡大はその象徴的サービスとされ、グループ内のSBI証券とのシナジー効果を重視している。
SBI証券は長年、個人投資家向けオンライン取引の大手として知られ、金融商品仲介の認定業者でもある。同証券と銀行が連動することで、預金資金を証券運用に活用するフローを一体的に構築できることが特長だ。
親会社であるSBIホールディングスはグループ横断の「総合金融モデル」の強化を掲げており、今回の預金利上げもその一環とみられる。
外部環境と運用上の注目点
24年末以降、個人金融資産の運用先は銀行預金から投資信託・株式などリスク資産に広がりつつある。国内金利水準の上昇が始まり、金融機関間の預金獲得競争が再び活発化している。
同行ではこうした潮流を踏まえ、証券取引と預金を連動させた商品構成を強化している。
一方で、SBI新生銀行は2025年12月に「ことら送金」で受取銀行側の送金人名表示に不具合が発生したことを公表している。同行は同日午後から送金サービスを停止し、修正対応を実施中としている。送金金額には影響がなかったと説明しており、通常の振込メニューは継続利用可能とした。デジタルバンキングへの移行が進む中、安定稼働とシステム信頼性の確保が一層の課題となっている。
金融仲介と顧客対応の両立へ
金融商品仲介業務では、同行がSBI証券およびマネックス証券を委託先として有価証券の売買媒介を担う構造を維持している。同行を通じた取引では、顧客がSBI証券やマネックス証券に開設した証券総合口座で株式や投資信託を取得する形式だ。同行はこれら証券会社から報酬を受け取る場合があり、金融庁登録の下で業務を行う。
同行によると、金融商品仲介サービスを利用することが融資その他の銀行取引に影響することはなく、顧客利便と中立性を確保しているという。金融仲介と預金・送金サービスを並行して拡大する同銀行にとって、システムの安定稼働と商品提供の透明性が今後の注目点となる。
今回の金利引き上げは、金融正常化局面で個人預金に与える影響を早期に示す動きであり、SBIグループが掲げる総合金融戦略の中で位置づけられる展開といえる。