サワイグループホールディングス株式会社(大阪市淀川区)は2月13日、2026年3月期第3四半期の連結決算を公表した。売上収益は前年同期比8.1%増の1,548億円となり、コア営業利益も1.1%増の231億円だった。一方、営業利益は訴訟和解費用の発生などで前年同期比25.7%減の159億円にとどまった。医療用医薬品の限定出荷品目は109品目で、供給安定へ随時見直しを進めている。
売上増は選定療養制度導入による新規採用の拡大や、2024年度・2025年度上市品の寄与が主因。営業利益は薬価改定や和解費用負担が響いたものの、コア段階では増収効果が寄与し、安定的な利益水準を維持した。同社はジェネリック医薬品を中核に、製造・販売・研究の各部門で品質と供給力の両立を図っている。
売上収益8%増、生産数量計画下回る
第3四半期累計の売上収益は1,548億6,400万円で、通期計画(2,025億円)に対し進捗率は約76%。薬価改定による単価下落を製品ミックス改善で補い、2025年12月収載品の立ち上がりが寄与した。
生産数量は委託分を含め125億錠(進捗率68.3%)にとどまり、当初計画183億錠を下回る見通しだ。販売数量は130億錠で進捗率77.4%と、供給遅延の影響を一定補っている。
品目別では循環器官用薬や中枢神経系用薬が伸長し、前年同期比でそれぞれ売上約10%前後増加。アレルギー用薬や代謝性医薬品群も数量を伸ばし、選定療養制度の導入対象となった既存品の再採用が需要を押し上げた。薬価引き下げの影響を受けた呼吸器系、抗生物質製剤では減収傾向が残る。
特許和解費や薬価引下げが利益を圧迫
営業利益は159億4,300万円で前年同期を約54億円下回った。特許権侵害訴訟の和解費用40億円を第2四半期に計上したほか、労務費や委託加工費の上昇も響いた。
一方、コア営業利益は増収効果で前期比1.1%増の231億1,800万円と堅調。研究開発費は前年同期比13.3%増の88億円台へ拡大した。
キャッシュ・フローは営業活動による収入が28億円、投資活動による支出が191億円。
医薬品供給不足への対応として、生産能力増強のための設備投資を継続している。期末の現金及び現金同等物は461億円と前期末比で10億円増えた。
供給制約緩和と信頼回復へ投資を継続
限定出荷・停止品目数は12月末時点で109品目、通常出荷643品目。
前年末から出荷制限の解除を進めており、他社動向や在庫水準を踏まえて随時見直している。業績面では、2024年以降導入された選定療養制度を追い風に販売数量を拡大させ、供給の制約改善と品質管理の強化を両立させる方針だ。
サワイグループは中期経営計画「Beyod 2027」に基づき、信頼される企業基盤の確立を重点テーマとしている。これに沿って、製造本部・品質保証本部を中心にGMP遵守徹底を進め、全工場での品質監査頻度を年1回から2回へ引き上げた。
従業員数は前年比290人増の3,601人に達し、生産・品質分野の人材確保を拡大している。
デジタル医療・海外展開も段階的に進行
ジェネリック医薬品事業に加え、デジタル医療分野では株式会社CureAppとの共同開発による治療用アプリ「SWD002(NASH適応)」の第3相試験を継続中で、2027年度の上市を予定している。減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」はCureAppの承認取得を経て、2025年9月に沢井製薬が販売を開始する計画だ。イスラエルNeurolief社と連携した片頭痛治療機器「レリビオン」は2025年度中の保険収載を目指して準備が進む。
また、中国・ASEAN諸国でのジェネリック医薬品輸出事業も2026年度以降に向けて現地パートナーとの調整を継続。希少疾患向け新薬事業の領域拡大を並行して探るなど、ジェネリック中心の収益基盤に次期成長軸を加えていく方針を示した。
過去からの施策と市場環境の整理
サワイグループは1929年創業の沢井製薬を中核とし、2021年に持株会社制へ移行。ジェネリック医薬品の国内シェア約17%を維持しつつ、2024年度には総生産数量167億錠を達成した。
撤退した米国事業の影響を整理し、国内生産能力は205億錠規模へ拡張。第二九州工場の新棟も2024年末に稼働した。
外部環境では、厚生労働省による薬価制度改革や安定確保医薬品の企業評価制度導入が進行。
2026年度からは後発品の薬価下支え制度が適用され、最低薬価が約3.5%引き上げられる。業界再編や供給評価の透明化を背景に、各社に設備投資や人材刷新への対応が求められている。こうした行政動向は、サワイの品質管理投資や雇用維持と軌を一にする。
経営トップの姿勢と実行体制
経営陣は知財訴訟への上告申立てを継続しつつ、営業キャッシュフローを原資に生産設備投資を進める方針を掲げた。
短期借入による資金確保で負債は増えたが、親会社所有者持分比率は47%台と、自己資本水準を維持している。中長期的にはROE10%超を目標に、安定供給を基盤とする成長を目指す。
沢井製薬を主体とした国内工場群では、製造・品質保証人員を合わせて約600人規模まで拡張。
データインテグリティ確保のためLIMS・MESシステムを導入し、2026年7月までに各拠点で運用を完了させる計画だ。こうした施策は行政の供給体制強化方針にも沿う対応と位置づけられている。
専門家の見方
業界関係者は、薬価改定の継続と供給安定への行政要求を踏まえた「数量確保と品質保証の両立」を注目点に挙げる。需要が回復傾向にある一方で、少量多品目生産の非効率構造が残る中、同社が拡張投資と生産計画調整を両立できるかが焦点になるとみている。
供給安定と次期中計への橋渡し
同社は2027年度を目標とする中期計画「Beyond 2027」で、国内ジェネリック市場シェア25%を目指す。これを支える生産能力は2030年度までに250億錠体制への拡充を掲げ、人員育成とデジタル化を軸に生産効率を高める方針を示している。
2026年4月以降の制度改正に伴うAG薬価算定や長期収載品の適正化対応も想定され、引き続き制度動向に即した事業運営が求められる。
今回の決算は、薬価改定と訴訟費用負担という逆風を受けつつも、国内ジェネリック市場での供給責任を果たしながら次期中計に向けた体制強化を進めていることを示すものとなった。
