サッポロ不動産開発株式会社(東京都渋谷区)は、東京都の「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業」を活用し、渋谷区恵比寿の自社保有ビル「アルカサル」2階202区画をサーキュラーリノベーション型セットアップオフィスへとリニューアルした。社会実装パートナーとして参画する「Global CityTech Bridge」の一環で、2025年度採択プロジェクトとして実装された取り組みだ。
同社は今回、スタートアップとの協働を通じて実装の場を設けるとともに、再利用素材や環境配慮型建材を用いた循環的な内装改修を実施した。さらに恵比寿創業の地元企業と協働し、地域の歴史や産業の要素を空間に反映させる形で、創造性を持つオフィスづくりを進めた。全体は「ひらめきが生まれるまち」を掲げる恵比寿まちづくり戦略の実践施策に位置付けられている。
恵比寿アルカサルで新オフィス始動
リニューアルした区画は家具や什器を完備し、入居後すぐに業務開始できる仕様とした。可動式デスクを導入し、業務内容に合わせてレイアウトが変更可能な設計をとっている。農業廃棄物である麦わらを利用したハーベストパネルを採用し、環境に配慮した内装を導入。男女別トイレや会議スペースも整備し、スタートアップ向けに柔軟な空間利用を実現している。
今回の改修は単発ではなく、恵比寿エリアの不動産再生と連動した事業の一環として進められており、2025年12月に策定された「恵比寿まちづくり戦略」で掲げた8つのアクションのうち「成長段階に応じた多様なオフィスの提供」に該当する施策だ。同事業を通じて、多様な働き方に対応した空間整備を推進している。
循環素材と地域協働による建築再生
リノベーションでは、サステナブル建材プラットフォームを持つNew Norm Design株式会社と連携し、資材調達と内装設計を担った。同社のSaaSプラットフォーム「matinno」を活用し、持続可能な建材の選定を実施している。設計・施工は株式会社船場が担当し、大阪・関西万博関連で発生した廃材やデニム廃材由来の塗料を再利用するなど、建築資源を再活用する取り組みを盛り込んだ。
また、1867年創業の小林防火服株式会社と協働し、消防服の端切れ素材を用いた暖簾やアート作品を制作した。手作業で加工された作品をオフィス内に展示し、「恵比寿らしさ」を表す素材として再構築している。これにより、地域の産業文化を反映した空間づくりを進めた。
施工面では、設計・素材選定・内装工事を複数の外部事業者と分担して進めた形だ。New Norm Designが素材提供、船場が設計と施工、小林防火服が地域素材の加工を担っている。それぞれが役割分担のもとで実装され、地域企業の技術を空間内に反映した構成となった。
運用面では、当社がテナントへの貸与を前提としており、スタートアップや成長企業を主要な入居対象にしている。利用者は家具・設備を備えた状態で業務を開始できる形をとる。
恵比寿地区内の他物件への同様の改修が想定される旨の言及もない。
同社による恵比寿地域での不動産開発は長年続いており、今回の取り組みもその延長にある。2025年12月に策定された「恵比寿まちづくり戦略」には、スタートアップ拠点「EBISU THE SPOTLIGHT」やオフィスブランド「Sreedシリーズ」といった事業群が含まれている。これら施策と並行して、循環素材を活用した建物改修が開始された形だ。
リノベーションを通じて得られるノウハウをもとに、今後のオフィス改修やまちづくりと連携した事業展開を進める方針を示している。