衛星データとAIを活用し農業と環境の課題解決を目指すサグリ株式会社(兵庫県丹波市)は、農林水産省より「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書(取組証明書)」の発行を受けた。3月13日に山本農林水産大臣政務官から授与を受けており、自治体の農地関連業務の省力化につながる可能性がある。
取組証明書は、企業などが農山漁村の課題解決に向けて取り組み、その活動が継続すると見込まれる場合に国が証明する制度。サグリの対象サービスは、耕作放棄地の検出や作付け調査、農地のマッチングといった用途を担い、衛星データ解析やGIS技術を用いる点が特徴となっている。サグリは衛星データ解析とAIを用いた技術開発とサービス提供を進めてきており、今回の取組証明書はその一環と位置づけられる。
3サービスで業務省力化
サグリが提供する3つのサービスは、耕作放棄地の検出、作付け調査、農地のマッチングといった自治体業務をカバーする。耕作放棄地を検出する農地パトロールアプリ「アクタバ」は、パトロール人員の割り当てや進捗・判定結果の管理に対応し、自治体が目視で行っていた農地チェック業務の効率化を掲げる。作付け調査用アプリ「デタバ」は作物の種類を検出し、人員割り当てや進捗・判定結果を一元管理することで、作付けされた作物の目視確認に関わる作業の負担軽減を目指す。農地マッチングサービス「ニナタバ」は、農地所有者と作り手・担い手をつなぐサービスで、衛星データ解析とGIS技術により点在する農地を検出し、大規模な営農計画の立案を通じて、主に大規模農家と地権者のマッチングを図る。
取組証明書は、農山漁村においてインパクトの創出に貢献する取組を国が認定し、証明する仕組みとして整備が進められている。農山漁村の課題解決に向けた具体的な活動を有する企業などを対象に、農林水産省がその取組内容を確認し、証明書として発行する。
サグリは2018年に兵庫県で創業した岐阜大学発のインパクトスタートアップで、AIを用いた衛星データ解析技術を主軸に事業を展開している。2024年にはシリーズAで約10億円の資金調達を実施し、第6回宇宙開発利用大賞で内閣総理大臣賞を受賞した実績もある。2023年には農林水産省および経済産業省の令和4年度第2次補正予算「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」に採択されるなど、行政施策と連動しながら技術開発と事業化を進めてきた。
農業・食品分野では、栽培工程の管理や環境配慮を可視化する制度設計が進む。農林水産省はGAP(適正農業規範)の推進を重要な政策課題と位置づけ、2025年の大阪・関西万博や2027年の国際園芸博覧会の調達コードにGAPを採用する。環境省も、グリーン購入法に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」を見直し、国などが設置・運営する食堂の調達において、GAP認証農産物または加工食品を基準値1として明記し、「持続可能な農業生産工程管理」としてJGAP認証等を備考で説明した。サグリは日本GAP協会と、JGAP認証農場の温室効果ガス排出量の可視化に関する共同研究を開始しており、農地データの把握や作付け状況の判定といった領域が、政策面の要請や調達基準と接続する局面が広がっている。
制度枠組みと運用設計
今回の取組証明書の対象となった3サービスは、農地のチェック、作付け調査、農地のマッチングといった一連のプロセスをデジタル化し、衛星データとGIS技術を組み合わせて効率化する点で共通する。運用面では、アクタバとデタバが現地パトロールや調査に関わる人員の割り当て、進捗、判定結果をアプリ上で管理することで、自治体職員による紙ベースの記録や目視確認を置き換える役割を担う。ニナタバは、衛星データ解析とGIS技術によって農地を面的に把握し、大規模な営農プランニングを行うことで、農地の集約化や担い手への円滑な引き継ぎを支援する。
制度側は、農山漁村の課題解決に資する取組を行う事業者に対し、国がその活動を証明する枠組みを整えており、今回の授与はその運用の初期段階に位置づけられる。自治体との連携では、農地調査や作付け確認、農地マッチングといった各工程をどこまでアプリ上で扱うかが焦点となり、人員の配置方法や判定結果の管理手順を含めた運用設計が導入拡大のカギとなる。
サグリは、農林水産省「農山漁村」インパクト創出ソリューション実装プログラムの伴走支援を受け、香川県および株式会社タイミーと農業分野における連携協定を締結し、ニナタバを活用した取り組みを進めてきた。さらに、衛星データを活用した作付け状況判定でLAND INSIGHTと業務連携を開始したほか、ウクライナの大手農業企業Grain AllianceとMOU(覚書)を締結するなど、衛星データ解析を軸に国内外の外部組織との連携も強化している。こうした連携を通じて、衛星データとAIを用いた農地情報の可視化やマッチングの仕組みを、国内の農山漁村だけでなく海外の農業現場にも展開する動きが進んでいる。
