株式会社リコーは25日、「中期経営戦略'26」を発表した。2030年度にROIC7%以上、ROE10%以上、ストック利益15%増以上、人的資本ROI25%を目指すほか、成長投資として3500億円を計画し、うちM&Aに2500億円を充てる方針を示した。計画期間は5年先を見据えつつ、毎年見直すローリング方式に改めた。
戦略の中心に据えたのは「ワークプレイスのインテグレーター」で、オフィスに限定しないデジタルでつながるあらゆる環境を「ワークプレイス」と定義した。リコーは、デジタルワークプレイスのインフラ整備の「ITサービス」、複合機などを対象にした「マネージドサービス」、空間やサービスを提供する「WE(Workplace Experience)」、業務プロセス自動化の「PA(Process Automation)」を組み合わせて提供する方針を示した。成長投資のうちM&Aは、WEとPAを対象に、顧客接点でのケイパビリティ強化、技術獲得、自社IP獲得を目的に掲げ、規模を買うM&Aは行わない考えも示した。
2030年度にROIC7%
リコーは2030年度の定量目標として、ROIC7%以上、ROE10%以上、ストック利益15%増以上、人的資本ROI25%を設定した。売上高や営業利益の具体的な目標は掲げていない一方、営業利益は2030年度に1400億円以上という「目線」を示した。成長投資は3500億円を計画し、内訳はM&A2500億円、新規設備投資1000億円とした。
収益構造では、ストック利益の構成を2025年度見通しのオフィスプリンティング59%から2030年度に42%へ縮小し、ワークプレイスサービス(オフィスサービス)を24%から37%へ引き上げる方針を示した。商用・産業印刷は13%から14%に増やすとしている。販売サービス会社については、ROICが現状6.9%で、2030年度に13%以上への改善を目指し、事業規模は1.15倍に拡大する計画を示した。
コスト面では、「構造改革は止めない」とし、バックオフィス業務の改革、グローバルSCMの改革、事業や個社のポートフォリオ最適化、利益を生まない資産の整理や拠点の統廃合を進め、400億円以上の経費効果を見込むと述べた。あわせて、21次中期経営戦略(2023〜2025年度)の振り返りでは、財務指標が未達になるとし、営業利益は900億円、米国の関税影響など一過性影響を調整しても1100億円で未達と説明した。米国関税の影響は全体で約150億円のマイナス影響があったとしている。
リコーは計画運用を3カ年から、5年先を見据えた計画と年次見直しのローリング方式へ変更した。大山晃社長 CEOは、激動の時代に市場変化へ年次で迅速・柔軟に対応しつつ、5年先の視点の戦略に基づくバックキャスティングで改革や投資を行う必要性を挙げ、単年度計画の必達と実行精度の向上を目指すと述べた。
運用は年次ローリング
「ワークプレイスのインテグレーター」の事例として、グローバル顧客向けでは、グローバルのあらゆる拠点を対象に、会議室運用に必要な安定した品質、可視化したコスト、ESG要件などを充足したサプライヤー選定が課題だったとし、リコーが提供範囲を広げた内容を示した。具体的には、7000室の会議室に関わる提供に加え、6000台を対象にしたMPS(Managed Print Service)、3000台のバーコードラベルプリンター、オンサイトとオフサイトの商用印刷サービスを組み合わせ、8500万ドル(約128億円)以上の取引を実現したという。GMA(Global Major Account)向けでは、共通オファリング強化を進め、クロスセル、顧客との共創、グローバル展開の3方向で展開しているとした。
日本では中堅中小企業への展開強化を掲げ、土木工事業の事例で、複合機導入からネットワーク機器やセキュリティ機器の構築・運用、クラウドオフィスアプリや業種業務アプリの導入へと提供範囲を広げた流れを示した。地域別方針では「日本では優良顧客の拡大」「北米では2000社を対象にしたBPS(Business Process Services)によるデジタル化」「欧州では販売会社間のクロスオファリング拡充」を挙げ、2026年4月からの本社の新体制では、GMAの売上拡大、自社商材の展開、共通プラットフォームとモジュール化、ガバナンス強化を進め、サービス・製品・システムの共通化を担う役割になるとした。
プリンティング事業では、成熟市場としつつも、ETRIAを通じて環境性能に優れた技術により競争相手にもエンジンを使ってもらうビジネスを推進し、エンジンシェア拡大を進める方針を示した。商用・産業印刷では、安定収益の確保に加え、インクジェット技術で顧客のコスト低減や環境対応を支える新たな成長事業を立ち上げるとし、例としてペロブスカイト太陽電池の低コスト生産などでの貢献を想定した。
ETRIAは2024年7月に事業を開始し、リコー、東芝テック、OKIが参画して複合機の開発・生産に関する事業を統合し、共通エンジンの開発・生産を手掛けている。新たな中期経営計画期間中には、各社技術を結集し、ゼロベースでの新規エンジン開発を進めるとしている。大山社長 CEOは、ETRIA連携によってエンジンシェアを30%にまで拡大する意向を述べ、自社ブランド領域では競争力と販売力の強化によりA3カラーMFPでトップシェア獲得を目指すとした。
ガバナンス面では、執行役員の役割再定義と若手役員登用に加え、CEOの戦略立案を支援する諮問機関「Strategic Advisory Board(SAB)」を設置する方針を示した。実行力とスピードを2倍に高める目標を掲げ、執行役員の役割を本社と事業に分離し、CEOに対して行っていた2段階評価をすべての執行役員にも適用するとした。人的資本では、人的資本ROI25%以上(2025年度は17%)や、エンゲージメントスコア4.00以上(同3.89)を目指す数値を示し、デジタル人材やAI人材育成、ジョブ型人事制度の進化、トータルリワード戦略などに触れた。
供給・連携の範囲
成長投資の実行は、3500億円の枠内でM&A2500億円と新規設備投資1000億円を組み合わせる設計となっている。M&AはWEおよびPAを対象とし、顧客接点のケイパビリティ強化、インテグレーションを差別化する技術の獲得、収益性の高い自社IPの獲得を目的に掲げた。必要に応じて2000億円規模の有利子負債も活用しながら、M&Aによる成長投資を行うとしている。
提供体制の示し方では、各地域の販売サービス会社がインテグレーターとして事業成長することを、ROICおよびROEの改善ドライバーに挙げた。販売サービス会社のROICを現状6.9%から2030年度に13%以上へ改善させたいとし、事業規模を1.15倍に拡大する計画を示した。一方で、売上高や営業利益の具体目標は掲げておらず、営業利益は2030年度に1400億円以上という「目線」の提示にとどめた。
プリンティング領域では、ETRIAを通じた共通エンジンの開発・生産を軸に、既存資産の有効活用から、各社の強いモジュールを組み合わせた製品化フェーズへ移行しているとした。新たな中期経営計画期間中に、ゼロベースでの新規エンジン開発を進める方向性も示している。インクジェット技術の活用では、商用・産業印刷での新たな成長事業の立ち上げや、「機能性材料技術」「インクジェット技術」「プリンティングシステム技術」を活用した新規事業の事業化に乗り出す考えを示し、対象としてデジタル塗装、ペロブスカイト太陽電池、リチウムイオン電池、電子素子の製造などを挙げた。
継続性の面では、中期計画をローリング方式で毎年見直す運用へ変更した。21次中期経営戦略の振り返りでは、成長投資枠の活用が想定を下回ったことや、欧州での買収会社とのシナジー創出の遅延などを反省点に挙げた一方、ETRIA設立で共通エンジン開発をスタートしたこと、オフィスサービスの伸長、企業価値向上プロジェクトが利益を押し上げたことなど、取り組みの進捗にも触れた。
