株式会社リコーは、「リコーに学ぶ AIを活用した創造的な働き方」と題したオリジナル動画を、ビジネス映像メディア「PIVOT」で公開した。動画では、リコーデジタルサービスビジネスユニットの入佐孝宏プレジデントが、一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏と対談し、企業に蓄積された暗黙知の扱い方や労働生産性、創造性に関する論点を掘り下げている。進行役にはアナウンサー/起業家の西岡孝洋氏が加わる。
対談では、日本企業に共通する課題として「膨大な暗黙知の存在」「労働生産性の低さ」「創造性を十分に発揮できない構造」を取り上げる。リコーが挑戦を後押しする企業文化を醸成しながらAIを活用し、社員の創造的な働き方の実現につなげている点を、社内での具体的な取り組みを交えて紹介する内容だ。
売上2.5兆円、デジタルサービスが7割超
リコーグループは2025年3月期のグループ連結売上高が2兆5,278億円となり、デジタルサービス、印刷および画像ソリューションを世界約200の国と地域で提供している。事業別ではデジタルサービス事業の売上が1兆9,301億円と全体の76%を占める。オフィスや現場の情報をエッジデバイスでデジタル化し、データ利活用による価値創造を進める体制を強めており、今回の動画は、こうしたデジタルサービス軸の事業展開を暗黙知や生産性、創造性の議論と結び付けて示す位置づけとなる。
出演者は、株式会社リコー リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデントの入佐孝宏氏、一橋ビジネススクール 特任教授の楠木建氏、アナウンサー/起業家の西岡孝洋氏。入佐氏は1989年にリコーへ入社し、2017年に経営戦略部長、2023年にはコーポレート上席執行役員 リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデントに就任した。同年11月からはリコージャパン株式会社の取締役 会長執行役員も兼務する。楠木氏は一橋大学商学部助教授や同大学イノベーションセンター助教授、ボッコーニ大学経営大学院客員教授などを経て、2010年から現職。西岡氏はフジテレビでスポーツ実況や「すぽると」MCを担当し、2025年3月に退社してフリーランス/起業家として活動している。
動画の中心テーマは、企業に蓄積された暗黙知の活用法、労働生産性の引き上げ、創造性の発揮を妨げる構造の捉え直しだ。リコーにおけるAI導入と組織風土改革の経験と、経営学の観点からの整理を対談形式で交差させ、現場の実務と理論の両面から議論を展開する。
リコーのAI関連の取り組みは、研究開発から業務適用まで段階的に広がってきた。1980年代にAI開発を始め、2015年からは画像認識技術を生かした深層学習AIの開発を本格化。外観検査や振動モニタリングなど製造分野への適用を進めてきた。2021年からは自然言語処理技術を活用し、オフィス内の文書やコールセンターに寄せられた顧客の声(VOC)を分析する「仕事のAI」の提供を開始。業務の効率化や顧客対応の高度化を図っている。
背景には、同社がデジタルサービスへ事業の重心を移しつつある構造変化がある。オフィスや現場で生じる情報をエッジデバイスでデジタル化し、クラウドやネットワークを通じて利活用する一連の仕組みを整備してきた。産業ソリューション事業では、画像処理技術を生かした製品・ソリューションとして、サーマルペーパー、サーマルメディア、産業用光学部品・モジュール、精密機器部品の製造・販売も展開する。現場で日々発生するデータやノウハウをいかに捉え直し、付加価値へと転換するかが、動画で扱う暗黙知や創造性の議論の土台になっている。
外部環境では、AI普及を背景にDXの次の段階としてAX(AIトランスフォーメーション)が取り上げられ、労働人口減少や人手不足、多様な人材活躍といった社会課題への対応とデジタル技術活用が結び付けられている。リコーも市場トレンドや社内ニーズを踏まえたITインフラ戦略を掲げ、データセンター、ネットワーク、クラウド、エンドポイントの構築・運用を通じてグループ各社にサービスを提供している。こうした基盤整備と、文書・VOC分析などのAI業務適用を並行して進めることで、「暗黙知」「生産性」「創造性」といったテーマを現場レベルの実装に結び付けようとしている。
LLM研究とAI基盤継続
リコーは2022年から大規模言語モデル(LLM)の研究・開発に着手し、2023年3月には独自のLLMを発表した。その後、700億パラメータでオンプレミス環境にも導入可能な日英中3言語対応LLMを開発するなど、利用企業の要件に応じて提供できるAI基盤の整備を進めている。画像認識や自然言語処理に加え、音声認識AIの研究開発も推進し、音声対話機能を備えたAIエージェントの提供も始めた。
連携面では、リコーとライズ・コンサルティング・グループが2026年3月3日に合弁会社の設立を発表した。リコーのAIソリューションと、ライズのAI導入コンサルティング(戦略策定・実装)を組み合わせ、企業のAI導入から定着までを一体で支援する枠組みを掲げる。今回の動画の対談でも、個別の製品説明にとどまらず、暗黙知の扱い方や創造性の発揮といった経営課題を俯瞰しながら、社内におけるAI活用の実像を語る。
運用面では、AI活用を支える開発・提供体制の構築もテーマとなる。リコーはリコーデジタルサービスビジネスユニットでAIエージェントを活用し、ソフトウエア開発工程を2か月から3週間に短縮した事例を紹介。プルリクエスト数が2倍に増加したほか、設計のたたきからテストまでを半自動化したと説明しており、研究開発で整備したAI基盤を社内の開発プロセスに結び付ける取り組みを示す。
今回の動画は、リコーがAI活用と働き方改革を結び付けて提示する場であり、暗黙知や生産性、創造性を巡る論点を対談形式で提示する。企業側では、文書やVOCなど扱う情報の範囲設定、オンプレミスを含む導入形態の選択、導入後の定着支援における社内外の役割分担などが検討課題となるなか、リコーはPIVOTでの発信を通じ、自社のAI戦略と現場での実装状況を示した形だ。
