全国で高齢者介護事業を展開するユニマットリタイアメント・コミュニティ(東京都港区)は2021年4月1日、パナソニックエイジフリー(大阪府門真市)が運営していた介護サービス施設6カ所を譲受し、自社の「そよ風」ブランドとして運営を始めたと明らかにした。対象施設は関東から近畿まで広く、デイサービスやショートステイを中心に構成される。譲受によって「そよ風の地域包括ケア」網を一段と広げる狙いがある。
同社は、利用者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる仕組みを整える方針だ。介護人材の確保や高齢者の在宅支援が課題となるなか、地域単位で多様な介護ニーズに対応できる体制づくりを急ぐ。今回の譲受により、複合型施設運営のノウハウを活かしつつ、デイサービスから短期宿泊までを一体的に提供するモデルを強化するという。
6拠点で事業譲受が完了
事業譲受の対象は栃木、埼玉、神奈川、静岡(2施設)、滋賀の計6拠点で、いずれも在宅介護を支えるデイサービスやショートステイなどを備える。5施設は2サービス以上を併設した複合型で、同社が「そよ風」ブランドで全320拠点以上を展開するなかでも主力形態にあたる。譲受後は「宇都宮ケアセンターそよ風」(宇都宮市)や「大宮三橋ケアセンターそよ風」(さいたま市)などとして営業を再開した。一部施設では一時休止していたサービスを順次再開する予定で、地域ケア体制の一翼を担う形となる。
複合型ケアモデル全国展開へ
ユニマットリタイアメント・コミュニティは1975年に設立され、全国で介護事業を手掛けるほか、飲食やホテルなど多角的に展開している。介護サービスでは「そよ風」ブランドの下、デイサービス、ショートステイ、介護付き有料老人ホーム、居宅介護支援など複数のサービスを統合して提供している。導入済みの利用者情報を一括管理するシステムを活用することで、利用者の身体状況や嗜好などのデータを施設間で共有でき、状態変化があっても同一ブランド内で連続的な支援を受けられる。こうしたネットワーク型の一体運用は介護業界でも特徴的で、利用者・家族の負担を軽減している。
自立支援重視の新しい介護方針
同社は介護方針として「できるを増やす介護」を掲げ、利用者が再び自ら生活動作を取り戻すことを支援している。例えば、寝たきりから歩行を再習得させたり、排泄動作の自立を促したりと、身体機能の回復を目指す活動を進めてきた。現場では理学療法士と介護職員が協力して個別の目標を設定し、生活リハビリテーションの体制を構築した。「自分らしさの回復」という軸の下、プログラムとして利用者の満足度向上を図る。施設の厨房直営率は約90%に達し、管理栄養士や調理スタッフが常駐。温かい食事提供を通じて栄養管理と生活の質の両立を特徴としている。
安全確保と人材定着への取り組み強化
厚生労働省は2025年12月の検討会で、高齢労働者の安全確保を事業者の努力義務化する改正労働安全衛生法案の施行を前提に、介護施設において腰痛や転倒といった労働災害の防止が重要課題となっている。特に50歳以上の介護職員の身体機能低下により災害発生リスクが高まる可能性が指摘されており、リフト機器やパワーアシストスーツの導入など作業負担を軽減する取り組みが拡大している。社会福祉施設の導入事例では、離職防止と安全意識の向上にも寄与しているという報告がある。公益財団法人「介護労働安定センター」では、介護事業所を対象にリーダー育成研修を実施し、現場マネジメントや雇用管理の知識習得を支援している。こうした人材育成策が人材定着の鍵とされている。
包括的ケア体制拡大への次なる動き
ユニマットリタイアメント・コミュニティは今後も事業承継や新規開設を継続し、地域密着型サービスの拡大を推進する。サービスとしての高齢者住宅、訪問介護、看護の強化とともに、医療・介護・生活支援を統合した提供体制の整備を目指す。業界内では在宅介護需要の増加に対応するため、多機能・多職種連携型の施設運営が主流化しており、同社の動きはその流れを先導する形だと分析されている。 一方、高齢化の進行と労働安全の課題は残っており、利用者支援と従業員の負担軽減を両立させる施策が今後の現実的な課題となり、持続可能な運営モデルの構築が鍵となる見通しだ。