奥村組の株価が中東情勢を受けて調整局面に入った。2月末にイラン紛争が起きた後、株価は急落し、2月末からの騰落率はマイナス13.3%となった。一方で、業績見通しの上方修正を背景にした上昇局面からの反動で、投資判断や資金配分にも影響しうる動きとなっている。
奥村組の株価は、それまで26年3月期の業績見通しを相次いで上方修正したことを受けて上昇していた。投資家の期待が集まったとみられるなか、中東リスクの顕在化で相場が反転した格好だ。企業側の施策面では、26年3月期の増益計画と、28年3月期までの投資計画、株主還元方針の維持が同時並行で進んでいる点が今回の位置づけとなる。
奥村組株価が反落局面
奥村組の株価は、2025年11月に5000円台を29年ぶりに回復した後も底堅く推移し、26年2月には一時7,490円まで上昇した。26年3月期の業績見通しを相次いで上方修正したことが、買いを後押ししたと考えられる。
ところが2月末にイラン紛争が起きると株価は急落し、26年3月30日終値は6,340円となった。
下落率をみると、2月末からの騰落率はマイナス13.3%で、日経平均株価の同マイナス11.8%をやや上回る下げとなった。株価の調整が進む一方、26年3月期の予想配当利回りは4.16%とされ、参考値の東証プライム平均利回り1.83%(26年2月)を大きく上回る水準にある。
配当利回り4.16%に
配当面では、26年3月期の予想配当金は264円で、予想配当利回りは4.16%となる。
株価が下落した局面で利回りが相対的に高まっている構図で、東証プライム平均を大幅に超える水準だ。株価の変動が続くなかでも、配当水準の見通しが投資家の比較材料になりやすい。
ただし株主還元は、収益力やキャッシュフローの裏付けと合わせて読む必要がある。奥村組は投資と株主還元の総額で860億円を見込む一方、期間中の営業キャッシュフローは410億円の想定とし、不足分は資産の売却および資金調達でまかなう計画を示している。政策保有株式の売却や有利子負債の活用を進める方針で、資本効率の改善と一体で運用する構えだ。
26年3月期は増益計画
業績は25年3月期に大きめの減益となった。土木事業で特定の大型工事において施工方法の変更や工期の延長が発生したほか、投資開発事業でも発電施設の事故による一時的な損失が影響した。
採算の高い大型工事が竣工した建築事業は大幅な増益を達成したものの、全体のカバーには至らず、連結営業利益は前期比29.0%減で着地した。
26年3月期は増益を計画する。一時的損失がはく落することに加え、追加工事の獲得やコスト低減が進んでいることが主因とされる。通期の営業利益は前期比56.2%増の152億円を予定し、期首予想から44億円の上振れを見込む。
もっとも、再生可能エネルギー発電が事故の影響で稼働を停止している状況もあり、26年3月期の予想営業利益率は5.02%と同業と比べると低水準にとどまる。
28年3月期まで560億円投資
奥村組は採算改善と事業拡大をにらみ、28年3月期までの3年間で560億円を投じる計画を掲げる。うち130億円を省人化など工事採算性の改善に振り向ける計画で、25年には覆工コンクリートの自動打設を導入し、下水道のAI調査といった技術も開発した。
ゼネコンの建設原価は外注費の比率が高いとされ、工事技術の開発やDXを進めることで労務費を抑制し、収益力を高める方針を示す。
投資のもう一つの柱が不動産事業および新規事業で、3年間の投資額は410億円、回収と差し引いたネットでも380億円を投じる。不動産は事業規模の拡大を目指しつつ、リノベーションも実施して収益の増加を図る考えだ。新規事業は下水道の運営受託を念頭に官民連携の事業を展開し、M&Aを通じた新規領域への進出も模索する。
財務目標としては、売上高3300億円(25年3月期実績2982億円)、営業利益200億円(同97億円)、営業利益率6.0%(同3.3%)、ROE8%以上(同1.5%)を掲げ、28年3月期に営業利益率6%まで回復する計画だ。
配当性向70%以上を維持
株主還元では、前回の中期経営計画(23年3月期〜25年3月期)で還元方針を引き上げ、配当性向70%以上に加え、下限配当としてDOE2%を設定した。現在の中期経営計画(26年3月期〜28年3月期)にもこの方針を引き継いでおり、当面は株主還元を厚めに実施する見通しだ。
3年間では290億円を投じ、自己資本を抑制することでROEの向上に貢献すると位置づける。配当性向は一過性の特殊要因(為替予約評価損益)による影響を除く純利益ベースに修正するという。
背景には、建設業界全体で採算改善の局面にある一方、人件費や建設資材の高騰が利益を圧迫している状況がある。受注の入れ替わりが進むことで採算が改善している構図とされるなか、奥村組は大型工事の施工方法変更や工期延長、投資開発事業での発電施設事故といった一時的要因が重なり、反発が弱い局面が続いた。
再生可能エネルギーの発電施設は事故の影響で稼働停止が続き、石狩バイオエナジーは26年4月に商業稼働を再開予定とされ、運用の立ち上げが供給とコストの両面での注目点となる。
今後の見通しとしては、26年3月期の増益計画の進捗と、28年3月期までの投資計画が同時に走るなかで、資産売却や資金調達を含む財務運営がどのように進むかが焦点となる。
取引管理や法人営業の観点では、政策保有株式の売却や有利子負債の活用を前提とした資金手当てが示されているため、資産の入れ替えや調達手段がどの範囲で実行されるかを、発注・協業の継続性を判断する材料として押さえておく必要がある。
株価の調整局面は中東リスクの高まりと重なったが、奥村組は業績回復と投資・株主還元を並行させる中期計画の枠組みを維持している。
