国立大学法人岡山大学(岡山市北区)は、液体ヘリウムの安定供給と資源循環を目的に進める「中四国・播磨ヘリウムリサイクル事業ネットワーク(中四国・播磨HeReNet)」の一環として、岡山理科大学(岡山市北区)で核磁気共鳴装置(NMR装置)からのヘリウムガス回収を開始した。岡山大学の研究機器共用体制・整備等強化促進タスクフォースが2月2・3日に同大学を訪問し、回収設備の設置と試運転を実施したもの。
岡山大学ではヘリウム依存度の高い研究機関間での協力体制を整え、地域単位でのリサイクル網構築を進めている。今回の取り組みは、既に稼働している鳥取大学、徳島大学、米子工業高等専門学校に続くもので、4機関目となる。ヘリウム資源は全量輸入に頼るため、研究活動の安定化や経済安全保障の観点からも対策が急務とされ、同学は事業の中心として供給機能の整備を強化している。
4機関で回収開始 3月にも新規拡大
岡山理科大学では、2月2日にヘリウムガス回収用圧縮機1台とガスバッグ10個を受け入れ、翌3日に試運転を行った。これにより、HeReNetにおいて4機関でガス回収が始まった。関係機関によると、3月中にさらに2機関での回収を予定しており、想定より早い進行状況となっている。岡山大学の技術職員や事務職員、岡山理科大学の総合機器センター職員などが設置作業に参加した。
また、岡山大学キャンパス内でのMRI装置1台が既設の回収ラインから遠いため、ガスが大気放出されている状況もあり、HeReNet事業の一環として専用装置を用いた回収準備が進められている。これに関しては春頃の開始を予定しており、既に複数回の打ち合わせや現場確認が行われた。
連携機関との運用と今後の体制
今回の事業運営は、岡山大学が中心となって中四国・播磨地域の大学、高専、研究機関と連携して進める枠組みの一部である。岡山理科大学での作業には、岡山大学総合技術部および研究協力課、岡山理科大学研究・社会連携部総合機器センターが協力した。ガス回収はNMR装置をガスバッグとホースで連結する形をとり、回収圧縮機でガスボンベへの移送を行う工程を採用している。
岡山大学では、本学や近隣機関から得られるヘリウムガスを「HeliGet」事業でも再液化し、他の大学や企業への研究用液体ヘリウム供給に生かす計画を進めている。同学によれば、2026年度末までに液化装置の更新を予定しており、再利用体制の拡充を進める方針を示している。
今回のフェーズ1開始は、これまでのフェーズ0での実証段階を経た次の段階とされ、地域内で安定的に資源を循環させる取り組みの一環となっている。フェーズ2以降では、液体ヘリウムの運搬と同時回収の実験なども段階的に実施する予定がある。
岡山大学のヘリウムリサイクル事業は、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」の支援を受けて推進されており、地域の大学間連携を通じた研究基盤の確保を目的とする。
これまでの経緯として、同学は2025年には愛媛大学での使用済NMR装置からの回収実験、電気通信大学・東京農工大学・岩手大学などとの意見交換を重ね、技術支援や装置整備を進めてきた。背景には、液体ヘリウムが世界的な需給逼迫の影響を受けていることがある。
「中四国・播磨HeReNet」での実証実験は、発生源ごとのガス回収(フェーズ1)を皮切りに、量を増やしながら再液化・供給へと繋げる段階的構成をとっている。今回の岡山理科大学での実施はその体系の一環であり、学内外での情報共有を前提とした運用が進められている。
今回の計画では、岡山大学が機器提供および技術支援を担い、岡山理科大学が現地での回収と管理を担当する役割分担が取られた。
ヘリウムガス回収の実施範囲は、参画各機関でNMR装置などの超伝導機器を対象として進められており、取り扱いは各機関の研究設備環境に合わせて調整される形となっている。
同学は、2026年度末の装置更新を見据えて段階的な体制づくりを示しており、今回の回収開始もその一連の過程に位置付けられている。発表時点で再液化されたガスの外部供給スケジュールは定められていない。
岡山大学および参画機関は、中四国・播磨地域における研究資源の循環利用を進める枠組みを維持しつつ、研究活動での安定使用を支える体制を整えている。取り組みは経済安全保障を踏まえた国内資源利活用の一環にあたり、今後も実証計画の進行に応じた動きが続く見通しだ。