埼玉県川口市の株式会社大泉工場は、群馬県前橋市の農業法人である株式会社プレマを完全子会社化し、資本業務提携を締結した。赤城山麓南面に広がる約12ヘクタールの有機農地を抱えるプレマ・オーガニック・ファームを通じ、一次産業から食サプライチェーン全体を支える体制を構築する狙いだ。これにより、自社ブランド「_SHIP KOMBUCHA」などの原料供給の安定化を図る。
今回の提携で、大泉工場は生産から加工・販売までを自社グループ内で一貫運営する仕組みを整備する。都市部でのプラントベース食品事業に加え、有機農業を取り込むことで、持続可能な食の循環モデルを構築する第一歩と位置づける。プレマ側は有機JAS認証およびグローバルG.A.P.認証を取得しており、両社の協働により「食のサステナビリティ推進」に向けた実践モデルを目指す。
約12ヘクタールの農地を取得し供給網を強化
プレマ・オーガニック・ファームが所有する約12ヘクタールの農地は、群馬県前橋市の赤城山南面に位置する。有機JAS認証とグローバルG.A.P.認証に基づく生産管理体制を整えており、化学肥料や農薬に依存せずに栽培する。有機小松菜など、作物が自らの力で成長する生産手法を採用し、健康志向や環境意識の高まりに対応している。
大泉工場はこの農地を通じ、自社製品の一部原料を自前で確保することで、品質・コスト・供給の安定化を図るとしている。
同社は東京都港区や埼玉県川口市でプラントベースカフェを運営するなど、「都市部での持続可能な食文化の提案」を進めてきた。
今回の動きは、そうした事業を一次産業領域に拡張するもので、農業と食の融合を視野に入れた長期的取り組みといえる。
プレマの農地から供給される有機原料を活かし、発酵飲料や加工品の原料供給を内製化する方針だ。
有機農業0.7%の壁を越える挑戦
日本の有機JAS認証農地は総農地面積約430万ヘクタールのうち、わずか約3万ヘクタールにとどまり全体の0.7%程度とされる。
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までにこれを25%(約100万ヘクタール)に引き上げる目標を掲げるが、普及には生産技術の継承や販路開拓など多くの課題がある。
大泉工場は、この「0.7%の壁」を超える実践モデルづくりを掲げ、再生型有機農法の導入や地域教育連携にも力を入れる構えだ。
取得した農地面積は全国的に見れば大規模ではないものの、同社はプレマ・オーガニック・ファームを拠点に、人と自然の循環を重視した再生型農業の実装を目指している。
将来的には、全国の有機栽培農家や自治体との連携を広げ、日本における持続可能な農業モデルの共有・拡散につなげる構想を示した。
都市発の食企業が一次産業に進出
大泉工場は1938年設立で、発酵スパークリングティー「_SHIP KOMBUCHA」の製造や、カフェ「1110 CAFE/BAKERY」などを展開してきた。創業当初からものづくりを軸に事業を広げ、ウェルネス分野への展開を加速している。
今回のプレマ子会社化は、加工中心の食関連企業が農業生産へ逆流的に踏み出す動きとして注目される。生産現場の透明性を高めることで、消費者に対してトレーサビリティを裏付ける狙いもある。
一方、外部環境では、天候不順や作柄不良が続き、SNS上で「令和の米騒動」とも呼ばれた供給不安への反応が見られた。国民の間でも持続可能な農業や食料自給に対する関心が高まり、企業が一次産業の基盤強化に関与する動きが広がっている。大泉工場の取り組みも、こうした社会的背景の中で位置づけられる。
再生型有機農法と地域連携を推進
大泉工場とプレマ・オーガニック・ファームは、今後、再生型有機農法の導入を進める予定だ。
不耕起・混植・堆肥循環など自然との調和を重視する農法を実践し、赤城山麓の農地をモデル地域として展開する構想を掲げる。
地域教育との連携にも踏み込み、子どもや消費者に体験を通じて土づくりや有機農業の理解を広げる取り組みを計画している。
また、農業指導にはオーガニックパパ株式会社の八尋健次氏が参画し、現場の技術サポートを担う。
大泉寛太郎代表とプレマ代表の飯野晃子氏は共同で「リジェネラティブな食」を通じた未来像を掲げており、持続可能な農業と食文化の両立を目指す体制を整える。
関係者は、企業が一次産業に直接関与するモデルとして、官民連携の広がりへの関心を示している。
大泉工場が今後進める有機農業展開は、都市発のライフスタイル企業が食料生産の現場に回帰する動きの一つとして、国内の食産業再編の流れに位置づけられるだろう。