株式会社NTTドコモ(東京都千代田区)は、2026年1月1日から施行される「ブロードバンドユニバーサルサービス制度」に合わせ、利用者に対して「ブロードバンドユニバーサルサービス料」を設定すると発表した。2026年分については、3月の利用分(4月請求分)を対象に1回線あたり月額2.2円を請求する。制度施行初年度の負担金導入事例となる。
NTTドコモは、携帯電話・光回線・衛星通信・仮想移動通信など同社が提供する主な通信サービスの利用者を対象に、制度に基づく費用の一部を一律に負担してもらう。離島や山間部など、採算が取れにくい地域でのブロードバンドサービス提供を全国の通信事業者が共同で支える仕組みであり、同社にとっては全国通信網維持への公益的負担を分担する施策の位置づけとなる。
全国通信基盤維持を目的とした新制度
ブロードバンドユニバーサルサービス制度は、2024年の情報通信審議会で示された方針を受け、2025年に改正された電気通信事業法に基づいて創設された。人口減少が進む離島や中山間地では光ファイバ網の維持費が膨張し、回線採算の悪化が顕在化している。
これに対応するため、制度では全国の通信事業者が交付金によって不採算地域の基盤維持費を公平に負担する仕組みとなる。
この制度の支援機関として一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)が指定されており、各通信事業者の契約回線数に応じて1回線当たりの負担額(回線単価)を算定、NTT東日本・西日本などの交付金対象事業者に交付する。
NTTドコモの導入は、こうしたTCAの制度運用の初年度対応にあたる。
初年度は3月利用分のみ請求 対象は通信各種サービス
NTTドコモは、2026年の請求を3月利用分(4月請求分)の1回のみとし、翌2027年以降の負担額や回数はTCAが毎年度見直す回線単価に基づき改定する方針だ。
対象となるサービスは、5G・Xi(LTE)などの携帯電話アクセス網に加えて、光回線の「ドコモ光」、人工衛星通信の「ワイドスターⅢ」、そして仮想移動通信サービスの「OCN モバイル ONE」や副回線関連の各種契約が含まれる。
同制度では、すべての通信事業者が利用回線に応じて同様の負担義務を持ち、TCA経由で交付金対象事業者へ資金が還流する。
NTTドコモは公式告知において「制度の趣旨に基づく利用者の理解と協力を求める」としており、2027年以降の金額変更や請求方法は確定次第公表するとした。
企業向けサービスにも適用 NTTドコモビジネスが対応
同日、NTTドコモの法人部門であるNTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ、2025年7月から社名変更)も同制度への対応を発表した。企業向けFTTH・モバイル・ローカル5Gなどの通信サービスに対し、2026年3月利用分を対象に1回線あたり月額2.2円を請求する。
対象メニューには、OCN 光やArcstar IP Voiceなどの固定アクセス、また「OCN モバイル ONE for Business」、ローカル5GサービスType Dなどのモバイル系サービスを含む。
請求は一律で3月分に限定し、2027年以降の方法や単価変更は現時点未定とされている。
法人向けの広範な通信サービス群が対象となるため、企業利用者は年度ごとの改定情報を確認する必要がある。なお、各サービスごとに契約条件や回線提供元の負担金取り扱いによっては請求を行わない場合もあることが明示された。
法改正の背景と通信行政の方向性
2025年改正の電気通信事業法は、全国的な通信提供責務を見直し、採算環境の厳しい地域でも通信が確保される枠組みを整備するものだ。
総務省が設けた「ユニバーサルサービス政策委員会」の報告書によれば、電話網とともにブロードバンドを新たにユニバーサルサービスとして法制度上明確に位置づけた。制度ではNTT東西の「最終保障提供責務」を残しながらも、複数の通信事業者が共同で全国通信インフラを維持する仕組みへの転換が図られた。
背景には、光ファイバの全国整備率を令和9年度(2027年度)末までに99.9%とする政府方針がある。
これにより、通信事業者の自助努力と交付金による支援が両輪で機能する構造が作られた。特にブロードバンドユニバーサル制度は、公平な負担原則の徹底とともに、都市部と地方とのサービス格差是正を目的としている。
通信事業者間の費用連携と負担算定方式
本制度の費用算定を担うTCAは、全国の通信事業者から提出される回線情報を基に、必要経費と契約回線数を算出して回線単価を決定する。
算定額は半年ごとに見直され、交付金支払いを通じてNTT東西や他の交付金対象事業者に分配される。通信事業者間での費用回収フローが透明化される点が特徴だ。
これにより、都市部での収益の一部が過疎地の通信維持に再配分される構造が成立する。
総務省は、本制度を通じて「全国どこでも一定水準のブロードバンド環境を確保することが、デジタル社会の基盤になる」としており、2026年度以降は制度検証と交付金調整の枠組みを継続的に見直す方針を示している。
制度運用の課題と今後の注目点
通信各社が導入を進める中で、実務面では請求方法の統一性やTCAによる回線算定の透明性が焦点となる。
電気通信事業法の規定上、負担金額は事業者間の公平な分担を前提としており、特定企業に過度な負担が集中しないよう算定ロジックが管理される。負担対象となるサービス提供数が多い事業者ほど金額総額が大きくなるため、正確な回線カウントと約款整備が求められる。
また、2027年以降の負担単価変更や請求タイミングの見直しは、光未整備地域の状況や政府の整備進捗によって変動する見通しだ。
既にソフトバンクなど他事業者も同様の発表を行っており、法制度下で通信業界全体の共同負担体制が本格的に始まる段階に入った。利用者にとっては僅少な額ながら、全国回線維持に参加する仕組みとしての理解が求められる。
今回の負担設定は、通信網の公平・持続的維持を狙う制度実装の初期段階にあたり、今後は回線単価の改定や対象サービス拡大など制度運営の実務整備が注目される。