ニチレイ、九州電力、九電みらいエナジーの3社は4月1日、ニチレイロジグループなどが九州で運営する物流倉庫と製造工場の合計16拠点に、地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAを導入した。物流倉庫・食品製造業界で地熱発電を活用するオフサイト型のコーポレートPPAは初の取り組みとなる。冷凍冷蔵倉庫や夜間稼働の工場が必要とする電力の調達手段に、地熱由来のベース電力という選択肢が加わる。
九電みらいエナジーが所有する既設の地熱発電所で発電した再生可能エネルギーを、九州電力を通じてニチレイグループの拠点へ供給し、24時間必要となるベース電力として活用する。常時一定量の電力を使用する冷凍冷蔵倉庫や、夜間に稼働する製造工場での利用を想定し、発電事業者と電力の購入者(需要家)が送配電網を介して再エネ電力を受ける契約方式を採る。ニチレイグループは九州の物流倉庫・製造工場に地熱由来の電力を組み込み、運営の脱炭素化を進める。
16拠点で年1.6万MWh
対象16拠点での年間受電量は約1万6000MWhとなる。ニチレイロジグループではニチレイ・ロジスティクス九州の12拠点に導入し、福岡東浜物流センター、箱崎埠頭物流センター、小倉物流センター、鳥栖物流センター、長崎物流センター、長崎市場事業所、熊本北物流センター、宮崎物流センター、都城物流センター、鹿児島曾於物流センター、鹿児島埠頭物流センター、鹿児島市場事業所が対象となる。
食品製造を担うキューレイの3拠点(第一工場、第二工場〈冷蔵倉庫〉、第三工場)も含まれる。受電規模は太陽光発電設備で9980kW相当とされ、CO2削減効果は年間約7600トンを見込む。供給電源は、大分県の八丁原発電所、滝上発電所、鹿児島県の山川発電所、大霧発電所の4か所の既設地熱発電所を用いる。
国内の再エネ比率は発電量全体の23.0%(2024年度)とされるなか、地熱発電は天候や時間に左右されにくく、24時間365日安定した発電・供給が可能で、設備利用率は83%と高い。電力需要が日中に偏りにくい冷凍冷蔵倉庫や、夜間も稼働する製造工場の電力調達と相性が良い電源と位置づけられる。
一方で、地熱発電が日本の発電量に占める割合は0.3%にとどまり、その約40%が九州に集中している。ニチレイグループは九州の既設地熱発電を活用することで、地元で生まれた再エネの地産地消にもつながるとみており、地域性の高い電源を物流・食品製造の現場に取り込む。
発電と供給の役割分担
4か所の既設地熱発電所で九電みらいエナジーが発電した電力を、小売り電気事業者である九州電力がニチレイグループの16拠点へ供給するスキームを構築した。冷凍冷蔵倉庫や夜間稼働の製造工場におけるベース電力として位置づけ、地熱の特性を生かした電源調達を図る。
需要側では、ニチレイロジグループの物流拠点群に加え、キューレイの工場群が対象に含まれる。低温物流と食品製造という電力負荷の特性が異なる設備をまたいで、同一の契約スキームで受電するのが特徴だ。
オフサイトコーポレートPPAは、発電事業者と需要家が事前に合意した価格・期間で再エネ電力の売買契約を結び、発電場所から離れた需要家に送配電網を介して供給する契約方式である。発電地点と需要地点が一致するオンサイト型とは異なり、送配電網を活用することで地理的に分散した拠点へ電力を届けられる。
現場運用では、地熱由来の電力をベース電力としてどこまで充てるかを、拠点ごとの電力使用形態に応じて決める必要がある。冷凍冷蔵倉庫は一定負荷が継続しやすく、製造工場は稼働時間帯が固定されるケースが多い。16拠点を一括して扱いつつも、負荷パターンに合わせた適用範囲の設計が実務上の焦点となる。
ニチレイグループの事業環境では、低温物流事業で4~12月期の売上高が8%増、営業利益が23%増となるなど、稼働が拡大している。冷凍冷蔵設備の運転が24時間に及ぶ拠点も多く、電力需要の平準性が高い設備が一定数存在する。このため、調達手段の多様化を通じて、設備運用とエネルギー調達を結び付ける取り組みが重要性を増している。
国内の再エネ比率23.0%(2024年度)のなかで、地熱が0.3%にとどまり、その約40%が九州に所在するという偏在性は、同地域の需要家にとって地熱由来電力を調達しやすい条件となる。天候・時間に左右されにくい特性や設備利用率83%という指標が示すように、地熱は太陽光や風力といった変動性電源とは異なる供給カーブを持ち、夜間稼働を含む需要に対して適合しやすい。
地熱PPAが示す論点
物流倉庫・食品製造業界で地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAが初めて導入されたことは、再エネ調達が太陽光や風力中心に偏りがちななかで、電源ポートフォリオをどう最適化するかという論点を浮かび上がらせる。特に低温物流は、冷凍機や保冷設備の稼働が継続しやすく、電力負荷が日中に集中しにくい設備構成を取りうる。こうした負荷特性に対し、天候変動の影響を受けにくい地熱電源をベース電力に充てる設計は、需要側の運用パターンと電源側の供給特性を結び付ける発想といえる。
地熱の希少性は、調達スキームの標準化の議論とも関わる。日本の発電量に占める地熱比率が0.3%にとどまるなか、既設設備を電源とするスキームは、追加の設備建設を前提とせずに導入を進める形態となる。九州に資源が偏在し、約40%が集中するという条件は、同一スキームが全国一律に広がるというより、電源立地と需要地が近接するエリアで先行しやすい構図を示す。
オフサイトコーポレートPPAは送配電網を介するため、需要家側の拠点分散と親和性が高い。ニチレイグループのように物流センターが広域に点在し、工場も含めた複数拠点で電力を使用する事業者にとって、単一拠点へのオンサイト導入だけではカバーしにくい負荷を、拠点群として束ねて調達する設計が有効になる。今回、ニチレイ・ロジスティクス九州の12拠点に加え、キューレイの第一工場、第二工場(冷蔵倉庫)、第三工場が同じ枠組みに入ったことは、低温物流と食品製造をまたぐ電力調達の統合事例と位置づけられる。
電源面では、八丁原、滝上、山川、大霧の4発電所を九電みらいエナジーが活用し、九州電力が小売り電気事業者として需給管理と供給を担う役割分担が明確になっている。発電事業者と需要家の間に小売り電気事業者が入ることで、契約や需給管理、供給の実務を分担しつつ、需要家側は拠点ごとの負荷の違いを踏まえ、ベース電力としての適用範囲を運用で調整できる。
全体の再エネ比率が23.0%(2024年度)に達する中で、設備利用率83%とされる地熱の供給特性は、変動性電源中心の再エネ構成を補完する電源としての役割を強める。ただ、0.3%という供給制約があるため、電源の拡大余地は立地や開発条件に左右されやすい。既設設備を活用し、送配電網を介して複数拠点へベース電力を供給する今回の枠組みは、希少電源を需要家のベース負荷に割り当てる設計例として、九州内の同種施設が電力調達を検討する際の参照点となる。
九州に地熱資源が集積していることは、再エネの地産地消の議論とも結び付きやすい。ニチレイグループが九州で既設の地熱発電を導入し、地域の再エネを活用する狙いを示したことは、需要家が調達手段を選ぶ際に、電源の所在と需要地の関係を説明軸として取り込む動きを象徴する。物流や食品製造はサプライチェーン上の結節点であり、複数拠点の運営が常態化していることから、電力調達の設計が拠点運営の一部として組み込まれる局面は今後も増える可能性がある。
今回の取り組みは、冷凍冷蔵倉庫や夜間稼働の工場が必要とする電力を、地熱由来の再エネでベース電力化するユースケースを提示した。地熱の供給特性をオフサイトコーポレートPPAに接続した事例として、九州の需要家にとって再エネ調達の選択肢拡大と、電力ポートフォリオの高度化に向けた一つのモデルを示したかたちだ。
