ナイス株式会社(神奈川県横浜市)は2月13日、従業員の福利厚生向上と企業価値向上を目的に「株式給付信託(従業員持株会処分型)」を導入すると発表した。これに伴い、保有する自己株式の一部を株式会社日本カストディ銀行に設けられる信託E口へ第三者割当で処分する。信託期間は2026年3月16日から2030年4月10日までを予定している。
本信託は、みずほ信託銀行株式会社を受託者とし、同銀行が再信託先として日本カストディ銀行を指定する構成となる。日本カストディ銀行の信託E口がナイス株式を一括取得し、今後4年間にわたり従業員持株会に定期的に売却する仕組みだ。信託終了時に売却益が生じた場合は、持株会加入者に分配される。ナイスはこのスキームを通じ、従業員の自社株保有を安定化させることで、働きがいと資本効率の両立を狙う。
自己株式62万9800株を信託E口へ
処分対象となるのは普通株式62万9800株で、発行済株式総数の約5.1%に相当する。
処分価額は1株あたり2,018円で、総額は約12億7千万円。価額は取締役会決議日の直前営業日の終値を基準とし、過去6か月の平均株価に対して107%程度の水準となる。監査役5名(うち4名は社外監査役)が特に有利な価格ではないとする意見を示しており、社内手続き上の適正性が確認されている。
今回の割当先である日本カストディ銀行信託E口は、持株会が購入すると見込まれる株式総数をあらかじめ保有し、定期的に放出する。
信託期間中、受託者が借入を行う際の債務保証はナイスが引き受ける。株価が下落して借入残債が発生した場合、保証契約に基づき同社が弁済する仕組みを採用した。信託終了時に利益が生じた場合、その剰余金は従業員に還元される。
制度設計を米国ESOPなど参考に構築
ナイスは本制度を、従業員の株価意識の醸成と持続的なインセンティブ付与を目的に設計した。同社の持株会に加入する全従業員を対象とする仕組みであり、株式購入を通じた資産形成と職場定着につなげる。
制度構築には、米国で普及する従業員持株制度「ESOP(Employee Stock Ownership Plan)」や、経済産業省が2008年に公表した報告書「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」などを参考にした。
信託の設定日は2026年3月16日で、信託期間は約4年間とされた。
みずほ信託銀行が信託運営を担い、日本カストディ銀行が再信託先として株式を管理する。持株会への売却代金で借入金を返済し、受け取る配当金を利息返済に充てる運用形態を想定している。信託管理人の議決権指図により、株主議決権を適切に行使する体制も設ける。
制度導入で自社株安定供給と従業員還元を両立
本信託の目的は、持株会への自社株式の安定した供給と、信託財産による収益を従業員に還元することにある。
従業員の拠出金と会社からの奨励金を合わせて株式購入を促すことで、持株会の運営を長期的に支える仕組みだ。信託終了時には残余株式を売却して借入金を返済し、剰余金が発生すれば受益者適格要件を満たす従業員に分配される計画である。
この形式の株式給付信託は、他益信託として位置づけられ、従業員への利益還元と資本政策の調整を両立しやすい点が特徴だ。
ナイスは、信託設定と自己株式処分を同時に行うことで、資本効率を保ちながら従業員持株支援を実現する構造を採っている。
既存株主への影響と見通し
今回の自己株式処分による希釈化率は約5%にとどまり、支配株主の異動が生じないため、東京証券取引所の有価証券上場規程に基づく独立第三者意見取得や株主意思確認手続きは不要とされた。
処分価額の設定方法と内部監査のプロセスにより、手続きの透明性を確保している。信託期間中の議決権行使は信託管理人の指図に基づき、ガバナンス面でも一定の管理が保たれる。
業界関係者の間では、同様の信託制度を導入する企業が増加しつつあり、人的資本経営を重視する流れの一環とみられている。
今後もナイスを含む各社の持株会支援策が資本政策の一要素として定着する可能性がある。