新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と国立大学法人茨城大学は、茨城大学発スタートアップの創出に向けた支援や産学連携支援を連携して取り組むことに合意し、相互協力の覚書を締結した。大学発スタートアップやオープンイノベーションに関わる人材育成、イベント開催、研究者と企業などのマッチング支援に取り組む予定だ。起業や産学連携の取り組みを後押しする狙いがある。
覚書では、研究者と企業等とのマッチング支援に向けたイベントなどでの相互連携を掲げた。NEDO事業に係るセミナーや情報提供を通じ、有望な提案の応募をより一層促進するための情報交換も行う方針だ。NEDOカタライザーを茨城大学発スタートアップや起業を目指す人の相談に応じて派遣し、大学発スタートアップなどに対する各種イベントなどの支援・連携にも取り組むとしている。
NEDO覚書は22校目
NEDOと大学による起業家支援の相互協力を含む覚書の締結は、今回で22校目となった。NEDOはこれまで21の大学と覚書を締結してきた経緯があり、大学発スタートアップや起業家への支援に積極的な大学との相互協力を強化してきた。既締結の対象校には北海道大学、九州大学、広島大学、東北大学、名古屋大学、神戸大学、東京科学大学(旧東京工業大学)、山口大学、山形大学、徳島大学、信州大学、大阪大学、金沢大学、千葉大学、東京農工大学、鹿児島大学、芝浦工業大学、沖縄科学技術大学院大学、横浜国立大学、大阪公立大学、北陸先端科学技術大学院大学が含まれる。
茨城大学は、技術シーズを生かした大学発スタートアップ創出に向け、サイエンスアイデアソンを開催している。県内の研究機関連携による枠組みで、環境・エネルギー分野をテーマに技術シーズの社会実装を議論し、スタートアップの機運醸成につなげる形をとってきた。2024年7月にはスタートアップ向けシェアオフィスであるCIC Tokyoへサテライトオフィスを設置し、学内でもスタートアップ支援やオープンイノベーションの拠点となるインキュベーション施設「SAKURA BLOOM PARK」の整備を進めている。
「SAKURA BLOOM PARK」は中小企業産業技術・環境・産業標準政策推進事業費補助金を活用する計画が示されている。日立キャンパス内の拠点整備を進め、エネルギー関連の技術シーズを集約・高度化し、大学発スタートアップの創出につなげる方針が記されている。地域中核企業とカーボンニュートラル関連事業の連動や、エネルギー安全保障との両立も射程に入れた取り組みとされる。
外部環境では、日本政府が大学の知的財産や研究開発成果の技術シーズを社会実装する観点から、大学発スタートアップの創出・育成を重要視しているとされる。NEDO側も、大学と連携した起業家支援の相互協力を継続して積み上げてきた。過去には東京農工大学との覚書締結など、大学との協力枠組みを通じて人材育成やマッチングの場づくりを重ねてきた経緯がある。
NEDOの事業面では、脱炭素社会の実現に向けた省エネルギー技術研究開発・社会実装促進プログラムの実施や、グリーンイノベーション基金事業での次世代船舶開発の推進などが公表されている。個別案件では、2022年度~2025年度の事業期間で低濃度アンモニア含有廃水からの高効率アンモニア回収技術の開発が採択されているほか、アンモニア燃料駆動船舶エンジンの開発に関する実証が2024年度に成功した事例も示されている。こうしたNEDOの事業群と接点を持つ形で、大学側の研究者や起業志向人材が提案機会にアクセスしやすくする狙いが、今回の情報交換やセミナー活用の記載ににじむ。
NEDOカタライザー派遣
覚書の枠組みには、NEDOカタライザーの派遣が含まれる。NEDOカタライザーは、NEDOが依頼したスタートアップ支援経験の豊富な有識者とされ、茨城大学発スタートアップや起業を目指す人からの相談に対し派遣する。研究者と企業等とのマッチング支援に向けたイベントなどでも相互連携し、起業や産学連携に関わる取り組みを下支えする運用を想定する。
あわせて、研究開発型スタートアップのための伴走支援人材や、オープンイノベーション推進人材の育成も盛り込んだ。NEDOが実施するスタートアップ支援人材の育成事業や関連する活動などへ、茨城大学からの人材受け入れを推進し、伴走支援やオープンイノベーションに資する人材を育成するとしている。NEDOが活動推進するオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)では、大企業とスタートアップのマッチングやピッチイベント、ワークショップ開催が掲げられており、今回の覚書で想定する「イベント」や「マッチング支援」との接続余地が記述上は残る。
NEDOと茨城大学は、覚書締結をきっかけに、起業やその支援に関わる知識・スキルの習得セミナーの活用や、産学連携などのマッチング事業についての情報提供を通じ、スタートアップや産学連携による技術シーズの社会実装を加速させる考えを示した。
