NECは30日、地域金融機関等の役員・部長層を対象に、特別講演会を開催した。生成AIの発展的技術である「Agentic AI」を活用した金融機関経営の変革をテーマに、Agentic AI共同研究会の特別企画として実施した。経営層がAI戦略構築やAIエージェント活用の検討に用いる場を用意した。
講演会は、生成AIの活用検討が進む一方で導入や活用促進に向けた課題も顕在化している状況を踏まえ、経営層自身がリードして進める重要性を示した。外部専門家とNEC社内のスペシャリストが、学術的視点とビジネス実装の両面から、AIがもたらす変革を扱う構成とした。NECにとっては、共同研究会の枠組みを使い、地域金融機関の経営層に向けて検討の論点を提示する取り組みとなる。
15社の役員層参加
当日は、地方銀行、信用金庫、系統金融機関の計15社から、経営を担う役員や実務を統括する部長クラスが参加した。講演は複数のテーマで実施された。NEC側の講演では、金融機関における業務変革の実現に向けたAI戦略の解説に加え、NECのAIエージェントの自社活用における事例を示した発表や、金融機関ニーズに対するAI関連ソリューションの紹介と今後のAIに関連する取組方針の説明を盛り込んだ。
参加者からは、感性とAIの観点が新たな視点だったこと、具体的な事例紹介やデモが参考になったこと、最新のAI情報を得られたこと、実務へのAI適用への関心が高まったことなどの声があった。講演会の実施は、生成AI、とりわけAIエージェントの活用を経営課題としてとらえる金融機関がある一方、導入課題や活用促進に向けた課題が顕在化している状況とあわせて説明されている。
Agentic AI共同研究会は2025年7月30日に発足し、地方銀行、信用金庫、系統金融機関の合計20社とNECで構成する。生成AI活用における業界横断での課題解決を、効率的、効果的かつ安全に進めることを目的に活動してきた。今回の特別講演会は、その枠組みの特別企画として位置付けられ、20社の構成に対して15社が役員・部長層を送り込む形となった。
登壇体制は外部専門家とNEC社内のスペシャリストで組成し、学術と実装の両面を扱った。外部専門家としては、国立大学法人電気通信大学副学長の坂本真樹氏(人工知能学会理事)が登壇し、「感性に着目した生成AIの開発と金融機関への応用可能性」を講演テーマの1つとして掲げた。NECは、自社実験知見に基づくAIエージェント活用事例の共有や、金融機関ニーズに対するAI関連ソリューションの紹介と取組方針の説明を組み合わせ、経営層が検討に用いる論点を並べた。
共同研究会で役員層対話
NECが講演内で示した「自社活用における事例」は、Agentic AIを社内外の領域に適用してきた経緯とも接続する。NECは、AWSブース内での技術デモンストレーションとして、6G/5Gコアネットワークのユーザプレーンファンクション(UPF)で、設計・構築・展開から運用監視までをAgentic AIが自律的に運用する技術を示す予定を明らかにしている。このデモでは、従来のネットワーク運用者による手動設定では数週間を要していたプロセスを、数時間に短縮できることを確認したとしている。
通信分野では、NTTドコモとNECが国内初となるAWS上への商用5Gコアネットワーク(5GC)構築を実現したとされ、Amazon Bedrock AgentCoreを活用したAgentic AIにより、設計から構築までの期間を従来比約80%短縮したという。研究開発領域でも、NECは音声・動画をLLM(大規模言語モデル)で統合分析する偽・誤情報分析技術にAgentic AIを組み込み、2時間の作業を5〜10分に短縮したと説明している。これらの社内外の実装・検証の情報は、金融機関に対してAIエージェント活用を議論する際の参照点の1つとなっている。
また、金融分野での情報発信では、三井住友銀行とNECが「AIネイティブ時代のデータドリブン型業務変革」をテーマに講演し、外国送金取引業務を例に、AIを活用した潜在課題の顕在化とITシステム全体の最適化による人・組織の生産性向上の取り組みを共有したとされる。NECは、こうした発信と並行しながら、共同研究会の活動を通じて地域金融機関とともに生成AIを活用した新たな金融サービスのあり方を追求する方針を示している。
