南海電気鉄道株式会社(大阪市中央区)は創業140周年を記念し、創業記念日の12月27日(土)限定で難波駅発着のデジタルきっぷを全員に進呈する企画「キップレ」第2弾を実施すると発表した。申込は「南海アプリ」や「なんばまるっとアプリ」などを通じて19日正午ごろから受け付ける。
今回は2025年末の節目に合わせた一日限定企画で、参加者全員が利用可能な形式とした。第1弾(11月実施)で得た利用データや意見を踏まえて操作性を改善し、鉄道と商業施設を横断したリアルな行動喚起を狙う。南海電鉄が沿線デジタル施策の一環として展開する「地域回遊促進型キャンペーン」の次段に位置づける。
アプリ連携で難波を起点に移動活性化
対象のデジタルきっぷは、南海各駅から難波駅、難波駅から各駅への片道乗車券を一枚ずつ取得できる。申込ルートは二通りあり、「南海アプリ」や、なんばパークス・なんばCITY・なんばスカイオなどに対応する「なんばまるっとアプリ」からエントリーする場合は往復券を取得可能。専用ウェブサイト経由だと片道分を受け取る仕組みだ。
利用日は創業記念日の12月27日限定で、一定の駅ではデジタル対応が必要となる。
第1弾では1万人超が参加し、社内調査で75%が「なんば地区でのイベント来場の後押しになった」と回答していた。今回もアプリ上に専用バナーを設け、利用環境を簡素化。対象者を全員に広げることで移動データの取得と回遊行動の可視化を進める。デジタル券を通じ、鉄道利用とショッピングモール・飲食施設訪問を結び付ける仕掛けとする。
第1弾からの改善とUI刷新
前回の企画後、南海電鉄はUI・UX面で申込導線を見直し、取得完了までの操作数を削減した。新たに設けたウェブサイトはスマートフォン標準ブラウザにも対応し、アプリ未利用層にも開かれた設計だ。
アプリを経由する場合は「南海各駅→難波」「難波→各駅」双方を取得できるが、サイト経由では難波への片道切符のみとし、選択肢を整理した。
申込は19日正午ごろ開始予定で、なんばまるっとアプリ経由では翌20日午前11時から受付を始める。問い合わせ対応も同日に専用メール窓口を開設し、27日までサポート体制を維持する。
想定対象はスマートフォンを利用する一般顧客全体で、紙媒体を併用しない完全デジタル方式とする点が特徴である。
沿線開発とデジタル施策の連動
南海電鉄は関西私鉄の中でも早くからアプリを軸としたモビリティDX施策を導入しており、難波や高野線沿線の活性化策でアプリ連携を強化している。
2024年度以降、なんばパークスやスカイオと一体でイベント連携を進め、購買・移動データの統合運用を試みてきた。その延長線上に「キップレ」を位置づけ、商業エリアと鉄道事業を越えた回遊モデルを構築する狙いがある。
背景には、南海沿線における来街者構成の変化がある。関西万博を前に観光客の回復と都心回遊の再編が進むなか、鉄道各社はデジタルチケットに注力している。
Osaka Metroなどが1日乗車券の電子化やQR共通券を展開する中、南海電鉄は独自のファン層形成を図り、地域間移動の総量拡大を目指す。利用データの分析を通じ、商業施設とのイベント同期を高精度化する動きが進んでいる。
沿線事業者と協力した取り組みの広がり
南海電鉄のデジタル施策は、鉄道利用促進だけでなく、沿線施設との共同販促基盤としての機能も強めている。
なんばパークスやなんばCITYを運営する南海グループ企業との連携で、現地イベントや物販キャンペーンと組み合わせた利用喚起を重ねてきた。第1弾で上がった「操作の分かりにくさ」「一部駅未対応」といった課題へも改修を加え、参加者体験の再設計を終えた。
南海電鉄の岡嶋信行社長は「140周年を節目に、お客様が街に出て動くきっかけを提供したい」と説明しており、交通と商業を接続する「移動起点の街づくり」方針を明確にした。
今回の行動データをもとに、次年度以降のイベント設計やアプリ機能の拡充を検証する方針だ。沿線各地での企画展開に向けた試金石とみられる。
今後の動向
きっぷ進呈企画は、申込期間・利用日を限定した単発施策であるが、スマートフォン経由の即時乗車券配布を通じてリアルな来街行動を計測できる点が特徴だ。公共交通のデジタル施策が地域商業のデータ連携まで展開する流れの中で、今回の試みは鉄道会社によるモビリティマーケティングの新段階を示す事例の一つとなる。
今後は沿線他地域や他事業者との連動拡大が焦点となる見込みだ。