島根県立大学・島根県立大学短期大学部サテライトキャンパス「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」は、ユネスコが主催する「2025年 ユネスコ・アジア太平洋文化遺産保全賞(2025 UNESCO Asia-Pacific Awards for Cultural Heritage Conservation)」で最優秀賞(Award of Distinction)を受賞した。世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」内の歴史的建造物を、地域に開かれた学びと交流の拠点として再生した点が評価対象となった。地域住民や観光客の利用を想定した運営の枠組みは、文化遺産の保存と利活用の両立に関わる実務の論点を提示する。
審査委員講評では、19世紀築の旧商家をアダプティブ・リユースし、プライベートな空間を地域密着型の施設へと変貌させた点を挙げた。「保全は教育」という理念を体現し、大学と地元企業の連携を通じて人口減少と来訪者の減少に対応するため、伝統的な家屋を再生する取り組みに貢献したという。内装デザインは石見銀山特有の鉱山景観から着想を得つつ、地元産の材料を使用することで環境への影響を軽減した点も記された。島根県立大学は、今回の受賞を契機に地域に根ざした教育・研究活動をさらに推進し、文化遺産の持続可能な活用と地域活性化に貢献していく考えを示した。
16カ国90件から選定
同賞はアジア太平洋地域の文化遺産の保存・修復・再活用の取り組みを表彰する国際的な枠組みで、2025年は16カ国から90件の応募があった。25年の歴史の中で最多のエントリー数を記録し、その中から10件のプロジェクトが表彰対象となった。「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」は、その最高栄誉に当たる「Award of Distinction」に選ばれた。
プロジェクトの関係者は、建築主が中村ブレイス株式会社、プロジェクト責任者が中村ブレイス株式会社 専務取締役の中村哲郎氏、デザイナー・コンサルタントが島根県立大学 准教授の平井俊旭氏、施工者が山下建築工房株式会社 代表取締役の山下克樹氏とされる。
施設面では、書架(絵本約200冊、一般書約200冊)に加え、カフェ、コワーキングスペース、ミーティングラウンジ、ギャラリー、プール、ゼミスペースなどを備える。
中村ブレイスと連携運営
「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」は、中村ブレイス株式会社と島根県立大学が連携協定のもとで整備した施設とされる。旧松原邸というお屋敷を、中村ブレイス株式会社の古民家再生事業の一環として改装し、施設運営は島根県立大学が行っている。中村ブレイス株式会社の中村俊郎会長の「地域に学びの場を作り、町に学生の活動で活力を与えたい」という思いと、島根県立大学の「地域とともにあゆむ」という考え方が共感し合った経緯を掲げる。
大学だけが使用する単なるサテライトキャンパスではなく、地域住民や観光客が利用できるライブラリーカフェ兼コワーキングスペースとして運営する。企画と運営を学生が行うこと自体を学びの機会と捉え、木曜日から日曜日に無料で開放する枠組みを置く一方、コワーキングスペースは有料としている。学生の企画した展覧会を行うギャラリーの運営も行っている。
運営面の焦点は、木曜日~日曜日の無料開放と、有料のコワーキングスペース運用を併存させる設計の下で、学生が企画・運営を担う体制をどこまで継続していくかにある。旧松原邸の改装を中村ブレイス株式会社の古民家再生事業の一環とし、運営を島根県立大学が担う分担を軸にしている。
