ナブテスコ株式会社(東京都千代田区)は2月12日、2025年12月期通期実績および2026年12月期のセグメント別連結業績予想を発表した。2025年12月期の連結最終利益は前期比55.1%増の156億円となり、2026年12月期はさらに12.1%増の176億円を見込む。増収基調を維持する見通しで、鉄道・航空・自動ドア分野を中心に堅調な需要が続いている。
同社は、精密減速機や鉄道車両用機器などを主力とするモーションコントロール機器メーカーとして、複数セグメントを展開している。今回の予想では、自動ドアなどのアクセシビリティソリューション事業や、鉄道車両・航空・舶用関連を含むトランスポートソリューション事業が収益をけん引する見込みだ。経営陣は、需要回復や為替の追い風を背景に、利益率の改善と中期経営計画の着実な進捗を重視するとしている。
セグメント別で堅調な受注 トランスポートと自動ドアが主要収益源
今回公表された資料によると、2025年12月期通期の連結売上高は3,079億円で、前年(2,804億円)を上回った。
セグメント別では、鉄道車両用ブレーキ装置や舶用機器を含むトランスポートソリューション事業が1,005億円、アクセシビリティソリューション事業が1,107億円と、いずれも安定的に推移した。特に輸送機関連では、防衛向け航空機器やMRO(整備・修理・点検)需要が伸び、事業全体の増益に寄与している。
一方、産業用ロボット向け精密減速機や油圧機器を扱うコンポーネントソリューション事業では、設備投資抑制の影響を受けた。
在庫調整の長期化が響いたものの、ナブテスコグループではEV分野の回復など新たな成長分野への対応を進めている。包装機械や産業装置を中心とするその他事業は堅調なMRO需要に支えられたが、設備投資の伸び悩みが課題となった。
営業利益率が改善、ROE上昇で資本効率も向上
2025年12月期は営業利益が207億円(前期比60.2%増)に達し、利益率の改善が顕著だった。
直近期の第4四半期(10~12月期)における売上高は887億円で前年同期比増、営業利益は53億円と前年を上回った。売上営業利益率は6.0%と前期の5.4%から改善している。資産効率も向上しており、ROE(株主資本利益率)は2期連続で上昇した。これらの動きは、収益構造の転換が進みつつあることを示している。
同社は、配当方針でも安定配当に加えた株主還元の強化姿勢を示した。2026年12月期の年間配当は前期比2円増の1株あたり82円とする予定で、財務基盤の強化と株主還元の両立を図る方針だ。
松井証券の分析によると、営業利益・経常利益ともに増益が続くことでバリュエーションの改善が見込まれ、安定成長の継続性が確認できる内容となっている。
モーションコントロール事業の再構成が進行 油圧機器を外部譲渡
ナブテスコは、事業ポートフォリオの最適化を進めている。
2025年7月には油圧機器事業をイタリアのComer Industries S.p.A.へ譲渡する方針を決定しており、譲渡価額は142億円。汎用油圧機器の研究・製造・販売を手掛けるこの事業は、かねてより景気変動による収益の振れが大きく、長期的なパートナーリングによる安定成長に向けた再編が進んだ。譲渡後もナブテスコは30%の持株を残し、技術協力・製品供給を継続する。
譲渡対価は、精密減速機を中心としたスマートモーションコントロール事業への投資に充てられる予定だ。次世代生産設備への自動化需要の高まりを踏まえ、同分野の研究開発・設備投資を強化する。筆頭セグメントであるコンポーネントソリューション事業は引き続き競争力維持のための基盤事業と位置づけられている。
経営方針の転換と中期計画の焦点 ESG経営を軸に安定成長へ
ナブテスコは2025年5月、「Nabtesco Value Report 2024」を公表しており、そこでは新中期経営計画の重点施策を明示している。ESG課題に対する取り組みを経営の中心に据え、調達・製造・販売・サプライチェーン各段階での持続可能性強化を掲げた。
また、人的資本経営と人権デューデリジェンスの推進を通じて、企業価値の向上を図る姿勢を示している。報告書では、人事制度改革や資本効率の改善に加え、サステナビリティ経営の実装に向けた取締役会の方針も示された。
背景には、機械産業を取り巻く環境変化がある。建設機械の需要は減少する一方で、国内外の鉄道や航空、防衛分野での部品需要が拡大している。
また、バリアフリー化や自動ドアの更新需要の高まりから、アクセシビリティソリューション事業が安定成長分野として位置づけられている。特に自動ドア事業は、日本国内で約60%のシェアを持つ。都市再開発や施設老朽化更新需要を背景に、堅調な市場を形成している。
人権リスク調査を継続、国際基準に沿った経営の透明化を推進
同社は人権デューデリジェンスの実施を毎年継続しており、2024年には国内外52社のグループ企業を対象に人権リスク調査を行った。
調査結果では、重大な人権侵害や法令違反は確認されず、報告書で取締役会への報告が行われている。加えて、外国人技能実習生の適正な受け入れ状況やサプライヤーへのCSR調達調査も実施。持続可能な調達と人材多様性の推進を通じて企業統治の透明性を高めている。
一方で、エネルギー価格の変動や為替リスク、外需の不確実性は引き続き収益への影響要因となる。
精密減速機や建設機械部品の需要回復が遅れた場合、コンポーネントソリューション事業の回復ペースに注目が必要だ。業界関係者の間では、ナブテスコが自動化技術とESG経営を組み合わせることで、長期的な競争力維持に挑む構図が見られると分析している。
中期的には再成長へ 事業再編と新技術の両輪で収益多角化
ナブテスコの2026年12月期は、セグメント間のバランスをとりつつ再成長軌道を確立できるかが焦点となる。
鉄道車両・舶用・航空といった輸送関連は引き続き業績をけん引する一方、精密減速機分野での投資回収や次世代モーション制御技術の事業化が鍵を握る。国内では物流・製造現場向けの新製品「アシストユニット」販売など、人と機械の協働領域への展開も進む。
このように、ナブテスコは連結業績予想で堅調な増収基調を示すとともに、構造改革と持続可能な成長戦略の両立を図っている。
事業再編、ESG方針、人材多様化の動きが融合し、グローバル製造業の変化に即応する体制づくりが今後も注目される。
