MS&ADインシュアランスグループのMS&ADインターリスク総研株式会社は、気象ビッグデータ解析と保険金支払実績を含む過去の雹災害データをもとに、翌日の降雹の有無を市町村単位で予測する降雹予測モデルを構築した。あわせて気象庁から気象予報業務の許可を取得し、予報業務許可事業者として顧客へ降雹予測の提供が可能になった。同社にとっては、事故発生後の補償に加え、雹災害の未然防止を支援する取り組みの一つとなる。
許可第245号を取得
MS&ADインターリスク総研は、降雹予測モデルの予測結果を顧客へ提供することを見据え、令和7年10月23日に気象庁から気象業務法第17条に基づく気象予報業務の許可(許可第245号)を取得した。損害保険関連企業による気象予報業務の許可取得は同社が初とされる。許可を受けた予報業務は、契約に基づく個人、法人および不特定多数の者への提供を対象とし、対象地域は全国とした。
予報の種類は「気象」で、予報する項目は台風を除く大気の諸現象、予報期間は1日先としている。提供する予測は、翌日における降雹の有無を市町村単位で示す形をとり、用途は雹災害への事前対策とする。運用面では、気象庁の許可を受けた予報業務許可事業者として、同社が保有する雹災害による保険金支払実績データと気象ビッグデータ解析、独自のAI技術を組み合わせた予測結果を提供していく。
同社は、雹災害による損失の顕在化を反映しやすい保険金支払実績データと気象ビッグデータを接続し、翌日という短い時間軸で市町村単位の情報に落とし込むモデル構築に至った。近年、局地的な強雨や突風に伴う雹災害の発生が相次ぐなか、事前の備えによって被害を抑制したいという企業や個人のニーズが高まっている一方、降雹は局地性の強い現象で予測が難しいとされる。同社は、降雹の発生しやすい気象条件と過去の被害発生状況の関係を解析することで、1日先の降雹有無を判断するモデルを整えた。
全国向け1日先予報
今回の許可により、同社は全国を対象に1日先の気象予報を提供する事業者となる。提供先は契約に基づく個人・法人に加え不特定多数の者を含み、企業向けの事業継続計画(BCP)や施設管理、農業の営農判断など、雹の影響を受けやすい幅広い領域での活用を見込む。
損害保険関連企業による気象予報業務の許可取得が初めてとなることは、予測情報の供給主体が従来の気象事業者から多様化する動きとしても注目される。保険金支払実績データは、災害による損失の発生状況を直接的に反映しやすい特性を持つ。これを気象ビッグデータ解析と組み合わせることで、被害実態と気象現象の関係を精緻に検討することが可能になり、保険におけるリスク評価や商品設計、顧客向け情報提供において、補償と予測提供を一体で考える余地が広がる。
同社は、事故発生後の補償にとどまらず、予測情報の提供を通じて顧客企業や個人が事前対策を講じられる環境づくりを進める構えだ。提供される情報は「翌日における降雹の有無」に絞り込まれており、粒径や降雹時間帯といった細部を列挙する形式ではない。利用者側は、自社や自宅の所在市町村を前提に、前日時点での見通しをどの工程に組み込むかといった実務上の運用を設計することになる。
降雹は、発生範囲や継続時間が限られる局地的な現象として扱われることが多く、どの空間スケールと時間軸、どの程度の確度で情報を提示するかが予測提供側の設計課題になりやすい。今回のモデルが「翌日」「市町村単位」「有無」という形式をとるのは、現実的な事前対策の単位と、技術的に実現可能な予測粒度との折り合いを図った結果とみられる。
MS&ADインターリスク総研は、降雹予測モデルの予測精度向上を図るとともに、今回開発した気象ビッグデータ解析と保険データの連携技術を、他の自然災害リスクにも適用することを検討していく。自然災害リスクが高まるなか、損害保険会社による予測情報提供の動きは、保険ビジネスの役割を補償から予防まで広げる試金石となりそうだ。
