森永乳業株式会社(東京都港区)は「マウントレーニア」シリーズの茶色オーバーキャップを、従来のバージンプラスチックからリサイクルプラスチックを含有した素材に順次切り替えると発表した。使用済みプラスチックを再利用する取り組みは、同社家庭用商品のなかで初めてとなる。
同社はプラスチック資源の有効活用とCO2排出量削減を進める目的で今回の変更を決定した。リサイクル素材を導入することで、年間約190トンの新規プラスチック使用を減らし、約120トンの二酸化炭素排出削減が見込まれる。取り組みは同社のサステナビリティ中長期計画2030の一環であり、資源循環の推進を本業に組み込んだ施策と位置づけている。
190トン削減見込む環境対応型素材へ
切り替えの対象は「マウントレーニア」シリーズのうち、茶色のプラスチック製オーバーキャップを採用している製品。従来の石油由来バージンプラスチックに対し、消費者から回収された再生樹脂を原料として配合する。これにより、プラスチック削減量は年間約190トンとされ、グループ全体で掲げるKPIの達成に寄与するとみられる。CO2排出も年間120トン削減できる見通しだ。
同社は今後、ほかの容器包装材への再生材利用拡大を検討するとともに、設計・製造・回収の各段階で環境負荷の低減を図る方針を示した。今回の導入は単発ではなく継続的に展開される取り組みであり、運用体制も段階的に整備する。
長期計画と環境方針が後押し
森永乳業グループは、コーポレートスローガン「かがやく“笑顔”のために」のもと、サステナビリティ中長期計画2030を推進している。重点分野は「食とウェルビーイング」「資源と環境」「人と社会」の三つで、環境分野では3R(削減・再使用・再生利用)の推進を掲げる。これまでにも紙パック類での植物由来素材導入やリサイクル容易化の設計見直しなど、包装資材の改善に取り組んできた。
背景には、石油依存からの脱却を求める国際的潮流と、消費者の環境意識の高まりがある。使い捨てプラスチック規制の強化が進むなか、企業には素材選定や供給網でのCO2管理など、サプライチェーン全体の対応が求められている。
このような状況を踏まえ、森永乳業は自社製品だけでなく、調達・製造工程でも再生資源利用を拡充する姿勢を鮮明にした。
消費者利用後素材を初採用
今回のリサイクルプラスチックは、消費者が使用後に回収された樹脂を再生し原料化したもの。これまでは産業系リサイクル材の活用にとどまっていたが、家庭由来素材への切り替えは同社で初めてだ。
食品包装における使用には品質と安全性の確保が求められ、再生原料の供給体制の整備も課題となっていた。これをクリアしたことで、環境対応と食品品質の両立が進む。
森永乳業は今後、製品カテゴリーごとの適用可能性を検証し、順次対応範囲を広げていく予定だ。
業界関係者の間では、同社の動きが他社への波及を促すきっかけになるとの見方も出ている。
持続可能な包装設計が焦点に
森永乳業グループではCSR活動を含めた体制を再編し、コーポレートガバナンスを基盤としたサステナビリティ経営を進めている。環境ポリシーに沿って限りある資源の有効利用を掲げ、素材調達から製品出荷までの各工程で3Rを徹底する。
こうした活動は、同社がこれまでCDP水セキュリティ分野で「Aリスト」に選定されるなど、環境情報の開示評価においても成果を上げている流れに位置づけられる。
今回の容器変更を契機に、食品業界では消費者回収材の利用基準や品質認証の標準化が主要なテーマとなるだろう。持続可能な包装設計の普及に向け、サプライヤーや自治体との連携が今後の注目点となる。
森永乳業の試みは、国内食品メーカーにおける資源循環の新たな段階を示す動きといえる。